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Act1.帝光学園
学園の守護者たち
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「――とうとう見られませんでしたね。桐生彩都の能力」
女の言葉を受けて、男は残念そうに「そうだね。せっかく、桐生をもっとも憎んでいる副会長の親衛隊をけしかけたのに、価値あるデータを収集できなかった」と男は愚痴をこぼす。
彼らは立入禁止区域となっている屋上にいた。
すでに昼食を食べ終え、男のほうはVRのオペラグラス機能を使い、聖獣であるトカゲの目を使って彩都の動向を監視している。
「こんなことをしていたら大人たちから怒られるとわかっているよ。だけど、おかしいと思わないかい? 最近の学園の様子について」
男の問いかけに、女は仕事用のタブレット端末を取り出し、データを見ながら返事をする。
「桐生が、この学校へ転校すると決まってから、監視カメラにハッキングされた痕跡が見つかり、何者かがデータフェイクを使用して誰かになりすましています。情報室に設置されている非常用パソコン、生徒に配られたタブレット、腕時計型携帯、教師やスクールポリス、司書、守衛室のデジタル機器からウイルスが見つかりました」
「電子マネーや銀行口座の情報、学生の個人情報を盗んだんじゃない。誰かの情報を最初から存在したものとして作り上げたんだ。その日以来、寮生の行方不明事件が発生し、すでに五人も行方がわからなくなっている」
「素行不良でブラックリスト入りしている人間や、いじめを受けていないものの周りとなじめず浮いている者がいなくなっているのでスクールポリスも事件性について考慮しなかったのでしょう。おそらく、退学届を出すのを忘れたか、学園を無断外泊している程度だと思っているようです。
しかしながら、蜘蛛之網家の発言が嘘偽りのない真実であれば、このうちの何人かは、すでにソロモンの七十二の悪魔のどれかの毒牙にかかっているはず。すでにアンデッド化され、残りの者は化け物の餌食となり、すでに事切れていると推測します」
「まったく弱った話だ」
重いため息をつきながら男はVRをつけたまま寝転んだ。使い魔である聖獣に指示を与え、場所を移動させる。
「『毒は毒をもって制する』、『目には目を、歯には歯を』などという言葉はあるが、国家の安全を保証する公安からもマークされ、人外をおよぼす際は射殺許可や兵器による爆撃も可能とされている怪物を押しつけられては、たまったものじゃない。ましてや相手は――」
そう言って男は口をつぐんだ。
聖獣の目を通し、VRに送られてきた映像を、食い入るように見つめる。
彼の目には生徒会室のソファに腰掛け、ルークと話している頼人が映っていた。
男はVRグラスを外し、青空を眺めた。白い雲を目で追いかけながら心の中でひとり、つぶやく。――初恋は実らない、と。
「この学園は、俺たちが幼少期から過ごした学び舎だ。第二の家と言っても過言でない。それを化け物たちの戦場にされては困る」
「仰る通りです。大人たちや途中入学した生徒、転入・転校してきた一般生徒には、理解しがたい感情でしょうが」
「だね。それに……きみにとっては、ここは彼との出会いの場でもある。そうだろ」
やわらかな風が吹き、女のセミロングがなびき、膝下丈のスカートがふわりと広がる。彼女は切なげに瞳を揺らし、目を伏せた。
「――そうですね。彼にとっても、私にとっても、ここは我が家も同然の場所であり、大切な思い出の詰まった場所です。ぽっと出の部外者に荒らされ、破壊されるなど言語道断。そんなことは許せません」
手に持っていたタブレットを胸の前で抱きしめ、男の言葉に賛同した。
「親衛隊や過激派、ブラックリスト入りしている不良たちをひとりで相手できないなら、いっそ消えてもらったほうが、ありがたい。守る価値すらないからな。桐生彩都、その力が本物なのか、それとも、ただのハッタリなのか――お手並み拝見といこう」
女の言葉を受けて、男は残念そうに「そうだね。せっかく、桐生をもっとも憎んでいる副会長の親衛隊をけしかけたのに、価値あるデータを収集できなかった」と男は愚痴をこぼす。
彼らは立入禁止区域となっている屋上にいた。
すでに昼食を食べ終え、男のほうはVRのオペラグラス機能を使い、聖獣であるトカゲの目を使って彩都の動向を監視している。
「こんなことをしていたら大人たちから怒られるとわかっているよ。だけど、おかしいと思わないかい? 最近の学園の様子について」
男の問いかけに、女は仕事用のタブレット端末を取り出し、データを見ながら返事をする。
「桐生が、この学校へ転校すると決まってから、監視カメラにハッキングされた痕跡が見つかり、何者かがデータフェイクを使用して誰かになりすましています。情報室に設置されている非常用パソコン、生徒に配られたタブレット、腕時計型携帯、教師やスクールポリス、司書、守衛室のデジタル機器からウイルスが見つかりました」
「電子マネーや銀行口座の情報、学生の個人情報を盗んだんじゃない。誰かの情報を最初から存在したものとして作り上げたんだ。その日以来、寮生の行方不明事件が発生し、すでに五人も行方がわからなくなっている」
「素行不良でブラックリスト入りしている人間や、いじめを受けていないものの周りとなじめず浮いている者がいなくなっているのでスクールポリスも事件性について考慮しなかったのでしょう。おそらく、退学届を出すのを忘れたか、学園を無断外泊している程度だと思っているようです。
しかしながら、蜘蛛之網家の発言が嘘偽りのない真実であれば、このうちの何人かは、すでにソロモンの七十二の悪魔のどれかの毒牙にかかっているはず。すでにアンデッド化され、残りの者は化け物の餌食となり、すでに事切れていると推測します」
「まったく弱った話だ」
重いため息をつきながら男はVRをつけたまま寝転んだ。使い魔である聖獣に指示を与え、場所を移動させる。
「『毒は毒をもって制する』、『目には目を、歯には歯を』などという言葉はあるが、国家の安全を保証する公安からもマークされ、人外をおよぼす際は射殺許可や兵器による爆撃も可能とされている怪物を押しつけられては、たまったものじゃない。ましてや相手は――」
そう言って男は口をつぐんだ。
聖獣の目を通し、VRに送られてきた映像を、食い入るように見つめる。
彼の目には生徒会室のソファに腰掛け、ルークと話している頼人が映っていた。
男はVRグラスを外し、青空を眺めた。白い雲を目で追いかけながら心の中でひとり、つぶやく。――初恋は実らない、と。
「この学園は、俺たちが幼少期から過ごした学び舎だ。第二の家と言っても過言でない。それを化け物たちの戦場にされては困る」
「仰る通りです。大人たちや途中入学した生徒、転入・転校してきた一般生徒には、理解しがたい感情でしょうが」
「だね。それに……きみにとっては、ここは彼との出会いの場でもある。そうだろ」
やわらかな風が吹き、女のセミロングがなびき、膝下丈のスカートがふわりと広がる。彼女は切なげに瞳を揺らし、目を伏せた。
「――そうですね。彼にとっても、私にとっても、ここは我が家も同然の場所であり、大切な思い出の詰まった場所です。ぽっと出の部外者に荒らされ、破壊されるなど言語道断。そんなことは許せません」
手に持っていたタブレットを胸の前で抱きしめ、男の言葉に賛同した。
「親衛隊や過激派、ブラックリスト入りしている不良たちをひとりで相手できないなら、いっそ消えてもらったほうが、ありがたい。守る価値すらないからな。桐生彩都、その力が本物なのか、それとも、ただのハッタリなのか――お手並み拝見といこう」
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