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第2章
ぼくがぼくになった日1*
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瞬間、ぼくの頭の中でフラッシュバックする。
真っ暗な部屋の中でヘビーメタルの音楽を爆音量で掛けている。机の上には「死ね」、「消えろ」、「ブス」、「ゴミ」――なんて罵り言葉が黒い油性マーカーで書かれたノートや教科書。壊れた学生カバンとボールペンにに折られたシャーペン。カッターで適当に分割された消しゴム。ハサミでずたずたにされた体操着。
暗闇の中でノートPCを操作し、中学校の裏掲示板を見る。「社会のゴミ」とスレッドのタイトルが書かれているところにパスワードを入力して中を確認する。
――お局様、今日も元気なくせして学校サボり中で~す! マジでいいご身分だよな、おれもサボりてえ!
――くっせぇ粗大ゴミがないので教室も異臭が発生しませんw 快適すぎて爆笑www
ぼくをサンドバッグとして殴ってきたやつと、「お局」なんだからと教室の掃除を押しつけてきたやつの書き込みがある。顔も名前も割れている。
教師や教室にいるほかの子どもたち、いや……ほかのクラスやべつの学年、一部の保護者たちだって、ぼくをいじめている連中が誰だかわかっている。
それでも見て見ぬ振りをして何もしれくれない。
あいつら、正義を振りかざして人をいじめてるんだ。
堂々と名前を名乗ればいいのに「無名」として匿名で掲示板に書き込んでるのがムカつく。
腹の奥から怒りや悲しみといった負の感情がマグマのようにボコボコ音を立ててわき起こる。
「おまえらが死ねよ。マジウザい。幼稚園のガキみたいなことしやがって……」と小さな液晶画面に言葉を掛けても意味がない。
小刻みに震える手でつぶやいた言葉をひとつひとつ文字にする。キーボードを打つのは苦手だ。ピアノの鍵盤と同じで場所が一向に覚えられないから。速く文字を打って送信ボタンを押したいけど、金縛りにでもあってるみたいに手が動かしにくい。
待てよと手を止める。いっそ、この画面をスクショして学校のグループLIMEに流したらいい。そうすれば、ぼくがいじめられていることも立証できるし、うまくいけば名誉毀損で弁護士に相談できるかも。
生唾を飲んでスクリーンショットをする。
だけど、いざ画像をグループLINEに添付するボタンを押そうとするところで心臓がバクバク音を立て、頭を金づちでガンガン叩かれているみたいに痛くなって、何もできなくなってしまったのだ。
ピコンと音がする。スマホの通知を開くとLIMEの画面へ遷移する。おそるおそる見れば、クラス委員長からだった。
いつもクラス委員長だけは、ぼくがいじめられても声を掛けてくれる。
吐いて下して具合が悪くなり、学校を休んだ後も「大丈夫?」って話しかけてくれる。遅れの出た勉強を教えてくれるんだ。ペアを作ったり、多人数で授業を受けなきゃいけないときも「春日くん、わたしと組もう!」と笑顔で接してくれた。
美術や技術、家庭科の授業で何か作っていると「すっごく、うまいね。さっすが、春日くん!」と褒めてくれる、たったひとりの友だちだ。
チョコをバレンタインデーにもらったからホワイトデーはキャンディーを渡したい。きっと振られる。キャンディーも気持ち悪がられるかもしれない。
それでも、この気持ちを委員長に伝えたいんだ。
「お見舞にお花を置いておきました」とメッセージが書かれていて、ぼくは、安堵の表情を浮かべた。が――「えっ?」
机の上に置かれているのは、いつものような季節の花ではなく、仏前や墓前に飾るお供え用の花だった。
「お局様が気にいると思って飾ったよ☆ 本当は、そこら辺に生えている草がお似合いなんだけど、お花屋さんで売れ残っていたお花がかわいそうだったのでママが買いました。お仏壇に飾るには、しおれたお花は似合わないからね。いつも猫背のお局様にそっくりな姿をした菊の花をあげる!」
ぼくは自分の目を疑った。
まさか、そんなはずはない……きっと誰かが委員長のスマホを奪ったり、PCを借りパクしてメッセージを書いてるんだ。それかウイルスか何かにたかられて遠隔操作をされてる。そうだ、きっとそうに違いない!
すかさず掲示板に戻る。
掲示板の書き込みが次々に増えていく。
――やっべ、マジでやっべえよ! クラス委員長、誤爆、誤爆!
――すっげぇ、ウケるwwwww 神展開過ぎ! 最高じゃん!? 爆笑不可避♪
ぼくをいじめている連中の言葉が次々に上がり、次いで「クラス委員長」と名乗る人間の言葉が掲示板に書かれた。
――誤爆じゃありません。お局様のおもりには、いい加減ウンザリです。早く首をくくって自殺するか、電車に引かれて死んでほしいです! さっさと葬式をあげてほしかったので贈りました(怒) あんなのが彼氏とかマジでキモいんで勝手なことを言わないでください! 私には、ちゃんとDKの彼ピがいるので、はっきり言って迷惑です。こっちが死にたくなるから本当にやめてください。警察に訴えますよ。
その後は掲示板に「w」の文字が連打されたり、「大草原不可避」という言葉や、「アヒャヒャヒャ」と笑う顔文字のオンパレードだ。
「ははっ……」
乾いた笑いが漏れる。
真っ暗な部屋の中でヘビーメタルの音楽を爆音量で掛けている。机の上には「死ね」、「消えろ」、「ブス」、「ゴミ」――なんて罵り言葉が黒い油性マーカーで書かれたノートや教科書。壊れた学生カバンとボールペンにに折られたシャーペン。カッターで適当に分割された消しゴム。ハサミでずたずたにされた体操着。
暗闇の中でノートPCを操作し、中学校の裏掲示板を見る。「社会のゴミ」とスレッドのタイトルが書かれているところにパスワードを入力して中を確認する。
――お局様、今日も元気なくせして学校サボり中で~す! マジでいいご身分だよな、おれもサボりてえ!
――くっせぇ粗大ゴミがないので教室も異臭が発生しませんw 快適すぎて爆笑www
ぼくをサンドバッグとして殴ってきたやつと、「お局」なんだからと教室の掃除を押しつけてきたやつの書き込みがある。顔も名前も割れている。
教師や教室にいるほかの子どもたち、いや……ほかのクラスやべつの学年、一部の保護者たちだって、ぼくをいじめている連中が誰だかわかっている。
それでも見て見ぬ振りをして何もしれくれない。
あいつら、正義を振りかざして人をいじめてるんだ。
堂々と名前を名乗ればいいのに「無名」として匿名で掲示板に書き込んでるのがムカつく。
腹の奥から怒りや悲しみといった負の感情がマグマのようにボコボコ音を立ててわき起こる。
「おまえらが死ねよ。マジウザい。幼稚園のガキみたいなことしやがって……」と小さな液晶画面に言葉を掛けても意味がない。
小刻みに震える手でつぶやいた言葉をひとつひとつ文字にする。キーボードを打つのは苦手だ。ピアノの鍵盤と同じで場所が一向に覚えられないから。速く文字を打って送信ボタンを押したいけど、金縛りにでもあってるみたいに手が動かしにくい。
待てよと手を止める。いっそ、この画面をスクショして学校のグループLIMEに流したらいい。そうすれば、ぼくがいじめられていることも立証できるし、うまくいけば名誉毀損で弁護士に相談できるかも。
生唾を飲んでスクリーンショットをする。
だけど、いざ画像をグループLINEに添付するボタンを押そうとするところで心臓がバクバク音を立て、頭を金づちでガンガン叩かれているみたいに痛くなって、何もできなくなってしまったのだ。
ピコンと音がする。スマホの通知を開くとLIMEの画面へ遷移する。おそるおそる見れば、クラス委員長からだった。
いつもクラス委員長だけは、ぼくがいじめられても声を掛けてくれる。
吐いて下して具合が悪くなり、学校を休んだ後も「大丈夫?」って話しかけてくれる。遅れの出た勉強を教えてくれるんだ。ペアを作ったり、多人数で授業を受けなきゃいけないときも「春日くん、わたしと組もう!」と笑顔で接してくれた。
美術や技術、家庭科の授業で何か作っていると「すっごく、うまいね。さっすが、春日くん!」と褒めてくれる、たったひとりの友だちだ。
チョコをバレンタインデーにもらったからホワイトデーはキャンディーを渡したい。きっと振られる。キャンディーも気持ち悪がられるかもしれない。
それでも、この気持ちを委員長に伝えたいんだ。
「お見舞にお花を置いておきました」とメッセージが書かれていて、ぼくは、安堵の表情を浮かべた。が――「えっ?」
机の上に置かれているのは、いつものような季節の花ではなく、仏前や墓前に飾るお供え用の花だった。
「お局様が気にいると思って飾ったよ☆ 本当は、そこら辺に生えている草がお似合いなんだけど、お花屋さんで売れ残っていたお花がかわいそうだったのでママが買いました。お仏壇に飾るには、しおれたお花は似合わないからね。いつも猫背のお局様にそっくりな姿をした菊の花をあげる!」
ぼくは自分の目を疑った。
まさか、そんなはずはない……きっと誰かが委員長のスマホを奪ったり、PCを借りパクしてメッセージを書いてるんだ。それかウイルスか何かにたかられて遠隔操作をされてる。そうだ、きっとそうに違いない!
すかさず掲示板に戻る。
掲示板の書き込みが次々に増えていく。
――やっべ、マジでやっべえよ! クラス委員長、誤爆、誤爆!
――すっげぇ、ウケるwwwww 神展開過ぎ! 最高じゃん!? 爆笑不可避♪
ぼくをいじめている連中の言葉が次々に上がり、次いで「クラス委員長」と名乗る人間の言葉が掲示板に書かれた。
――誤爆じゃありません。お局様のおもりには、いい加減ウンザリです。早く首をくくって自殺するか、電車に引かれて死んでほしいです! さっさと葬式をあげてほしかったので贈りました(怒) あんなのが彼氏とかマジでキモいんで勝手なことを言わないでください! 私には、ちゃんとDKの彼ピがいるので、はっきり言って迷惑です。こっちが死にたくなるから本当にやめてください。警察に訴えますよ。
その後は掲示板に「w」の文字が連打されたり、「大草原不可避」という言葉や、「アヒャヒャヒャ」と笑う顔文字のオンパレードだ。
「ははっ……」
乾いた笑いが漏れる。
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