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白湯の味が少し違って感じた朝
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朝、目が覚めたとき、部屋の中はまだ静かで、少し冷んやりしていた。
ベッドの中で丸まったまま天井を見上げる。
「あと5分…」とつぶやきながらも、今日はすっと体が起き上がった。
小さな電気ケトルに水を入れて、スイッチを押す。
ゴトゴトと湯が沸く音が、私の中の眠りをやさしく溶かしていく。
湯のみを手に、白湯をゆっくりとすする。
その瞬間、ふと、違和感を覚えた。
なんだか、今日の白湯はいつもよりまろやかだった。
柔らかくて、少し遠くの景色を思い出すような味。
変わったのは水?気温?それとも……気持ち?
昨日の夜を思い出す。
寝る前、YouTubeで見た一本のVlog。
「韓国・延南洞のカフェ散歩」──
画面の中、女の子が古いカフェのドアを開ける。
カラン、とやさしい音。
木の床を歩く足音がコツコツと響いて、私はすでにその世界に引き込まれていた。
小さな窓際の席。
白いレースのカーテンごしに、やわらかな光が差し込んでいる。
女の子は手帳を開いて、何かを丁寧に書き込んでいた。
静かなBGMとコーヒーの香りが画面越しに漂ってくるようで、
私は気づかないうちにその街を歩いていた。
通りには、つやつやした焼き栗の屋台。
通り過ぎるたびに、香ばしい匂いが鼻先をくすぐる。
路地裏には、小さな古本屋とキャンドルショップ。
見知らぬはずのその街が、どこか懐かしくて、
ずっと前から知っていたような気がした。
たぶんそれは、私がずっと心の中で憧れていた場所だったのかもしれない。
旅って、出かけなくてもできるんだな──
手帳を開いて、「延南洞」と書く。
空想の旅のページ。
予定もないし、地図もない。
でも、私の中ではもう行ってきたことになっている。
ページのすみに、お気に入りのレースのしおりをそっと挟んだ。
外では、自転車の音が通り過ぎる。
窓を開けると、やさしい風がレースのカーテンをふわりと揺らした。
旅はいつも、この部屋から始まって、
そして静かに、この部屋に帰ってくる。
今日も私は、おうちで幸せに生きている。
ベッドの中で丸まったまま天井を見上げる。
「あと5分…」とつぶやきながらも、今日はすっと体が起き上がった。
小さな電気ケトルに水を入れて、スイッチを押す。
ゴトゴトと湯が沸く音が、私の中の眠りをやさしく溶かしていく。
湯のみを手に、白湯をゆっくりとすする。
その瞬間、ふと、違和感を覚えた。
なんだか、今日の白湯はいつもよりまろやかだった。
柔らかくて、少し遠くの景色を思い出すような味。
変わったのは水?気温?それとも……気持ち?
昨日の夜を思い出す。
寝る前、YouTubeで見た一本のVlog。
「韓国・延南洞のカフェ散歩」──
画面の中、女の子が古いカフェのドアを開ける。
カラン、とやさしい音。
木の床を歩く足音がコツコツと響いて、私はすでにその世界に引き込まれていた。
小さな窓際の席。
白いレースのカーテンごしに、やわらかな光が差し込んでいる。
女の子は手帳を開いて、何かを丁寧に書き込んでいた。
静かなBGMとコーヒーの香りが画面越しに漂ってくるようで、
私は気づかないうちにその街を歩いていた。
通りには、つやつやした焼き栗の屋台。
通り過ぎるたびに、香ばしい匂いが鼻先をくすぐる。
路地裏には、小さな古本屋とキャンドルショップ。
見知らぬはずのその街が、どこか懐かしくて、
ずっと前から知っていたような気がした。
たぶんそれは、私がずっと心の中で憧れていた場所だったのかもしれない。
旅って、出かけなくてもできるんだな──
手帳を開いて、「延南洞」と書く。
空想の旅のページ。
予定もないし、地図もない。
でも、私の中ではもう行ってきたことになっている。
ページのすみに、お気に入りのレースのしおりをそっと挟んだ。
外では、自転車の音が通り過ぎる。
窓を開けると、やさしい風がレースのカーテンをふわりと揺らした。
旅はいつも、この部屋から始まって、
そして静かに、この部屋に帰ってくる。
今日も私は、おうちで幸せに生きている。
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