今日もわたしは、おうちで幸せに生きている

乃愛

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みかんの皮をむいていたら、風が変わった

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今日は、ひとりでおうちにいる午後。
冷たい風が窓を揺らしていたけれど、部屋の中はあたたかくて、
なんだかぽかぽかした陽の光が、心までとろけそうだった。

おやつに食べようと手に取ったのは、ころんとした小さなみかん。
特別なみかんじゃないけれど、少しだけ甘い香りがして、
それだけでちょっと幸せな気分になる。

指先で皮をむいた瞬間——
ふわっと、柑橘の香りといっしょに、潮の匂いがした。
部屋の中のはずなのに、どこかから、海の風が吹いたような気がして、
私はそっと目を閉じた。

次に目を開けたとき、私は知らない場所にいた。

やわらかいオレンジ色の果樹園。
足元には黒っぽい石垣、風に揺れる葉っぱの音、
そして遠くから聞こえる、ゆるやかな波の音。

ここは——済州島?

名前も知らないけれど、
どうしてか「知ってる気がする」景色が目の前に広がっていた。

道ばたにある小さなカフェの前で、
にこにこしたおばあちゃんが私を見つけて言う。

「これ、おすそ分けね。島のみかん、甘いのよ」
差し出されたのは、さっき食べようとしていたのと同じ形のみかん。

ありがとう、と受け取って、また皮をむく。
果汁がはじけて、指に絡みついて、
また風が変わった。

今度は、ほんのり暖房のにおい。
まばたきしたら、私はまた自分の部屋にいた。

目の前には、むきかけのみかん。
時計の針も、たった2分しか進んでいなかった。

でも、指にはまだ、潮風とオレンジの香りが残っている気がする。

「次はどんな香りで旅に出ようか」
そう思いながら、私はまたひと房、口に運んだ。
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