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 病院が変わってから、食堂に運んでもらったり、薬を確認後飲んだり、ハミガキを自分でしたり、リハビリの人が、午前2回、午後3回のリハビリのお迎えに来るのを待つくらいしかやることがなかった。


 前の病院のリハビリで何食べたい?
そう聞かれわけもわからず「ビーフシチュー」と答えた事があった。
 スプーンにお手玉を乗せてスプーンの練習。お手玉をビーフシチューとは思えないなぁ、そんな事を言いながら、笑いながら練習した日があったのを思い出した。

 新しい病院に行ってすぐ、タイムリーにもご飯にビーフシチューが出てきて、前の病院を思いだして笑ったのは、いい思い出かもしれない。

そんな中、入院している私を気遣ってくれる人がたくさんいた。

「もしかしたら買えてないかもしれないから」と、作家Lさんが送ってくれたYさんの新刊や、文鳥グッズ。
なんとも「きさまの手に乗ってやろうか」的な、かなり上から目線なステッカーに笑みがこぼれた。またKさんからはお手紙を貰った。
皆さんの優しさに、すごく励まされたし、頑張ろうと思えた。


 そうしながらも、いつもしてもらわないと何も出来ない自分が、歯がゆくて仕方なかった。移動すらままならない。

 食事の消化の時間を合わせても歯磨きが終わるまで、さっくり40分はかかる。

 正直、前回の病院の患者さんが問題児の多い事。その影響か入院している患者さんとは会釈するくらいで、会話はしていなかった。

 個人的に理由もなしに、ぼんやりと食堂で過ごす事自体がストレスだったけど、相変わらず自身で立てない、バルーンが取れてない、オムツもまだ使用中だったのでストレスは続いたし、相変わらず何も出来ない自分に腹がたった。

 周りにあたっても仕方ない事くらいはわかる。最初は立つことさえできなくて、リハビリの先生に立たせてもらい、そのままを維持するのもやっと。
力加減したり、体を動かす為のコントロールをする器官が正常に動かないから、治るのに時間がかかると言われた。

 手に力を入れようとすると何故か肩もあがる。力がはいった状態から自力で力を抜く事ができない。。
そういった部分の改善の為マッサージなども頻繁にされていた気がする。

 そう言いながら、アニメ好き、文鳥好き、ゲーム好き、異世界モノ好きというのを隠さない、マイペースな状態で、自然体が一番をモットーに出来るだけ自分らしく、どうせ我慢しなきゃいけない事はたくさんあるのだしと、趣味などに関してはオープンで過ごしていた。

 待ち時間などはストレスしか感じないけど、空き時間は本を読む練習をするための時間や、ポータブルゲーム機に入れていた音楽やアニメを見る時間として使おうとした。

 なれてきた頃には、本を読んでいようが、周りから普通に話しかけられたので諦めて会話に参加していた気がする。お願い空気読んで?とこっそり願ったのは、今としてはいい思い出かもしれない。
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