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本編

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 気がつくと泣き疲れて眠っていたらしい。あれ? 庭園の中で、横になって寝てるなんて…。はしたない…。そう思って地面の方を見ると、黒くて温かい枕の様な物がある。

 早く起きなければと身動ぎすると、上から優しい声が降ってきた。

「起きたのか? リル…」

「へあっ??」

「へあ??」

 つい変な声を上げてしまい、恥ずかしい。アレク様に繰り返されてしまったけれど、聞かなかった事にする。

「どうしてここに?」

 私はとても焦ってしまい、誤魔化す様に聞いてみる。

「いや、変なとこ見られたし、あいつ見た目若いかもだけど、叔母だからな!」

「アレク様の……婚約者の方では……」

「そんなのはいない。それに……、俺はリルに惹かれてると思う……」

 ムクリと起き上がり、アレク様のお顔を見ると赤く染まっている。

「ならば……、ならば……、私はまだ貴方をお慕いしていても、許されるのでしょうか」

 無意識に涙が溢れた。確認するように呟いてしまう。

「まだ諦めなくてもいい…?」

 涙が止まらなくて、酷い顔をしてるに違いない。

「これだけ言っても、伝わらないんだな……。リル…」

 そういうとアレク様は、私の顎を支えるように顔を上に上げて、啄むみたいなキスを落としてきた。

 最初は、啄むみたいな軽いキスを何度もされていたのに、だんだんと角度を変えながら、呼吸もままならないくらいの深いキスに翻弄されていった。

「俺の事を諦めようとしないでくれ、俺は君を愛してる……」

 そう言うと、アレク様はまた一つ、キスを落とした。

「う…、嘘……」

「信じられる様に、もっと深いキスをたくさんしようか?」

「うぅ……」

 泣き顔が恥ずかしくて、下を向くと、胸の辺りに頭を寄せるようにして、抱きしめられた。

『アレク様が私を好き……? そんな都合の良いことがあるのかしら…、でも諦めたくない……。私も怖いけれど…、勇気を出さなきゃ……』

「私も気づいたばかりなのですが……、アレク様をお慕いしております…。大好きです。離れたくありません……」

「両思いだな。なら、アレクって呼べる様に、これから頑張って、な」

 そういうと、アレク様は私の額にキスをした。

「今まで我慢してたんだから、許してくれな」

 なんだろう。すごくぐいぐいとくるアレク様が格好いいんだけど……、恥ずかしい。恥ずかしくて死にそう…。


 だけど意識のない間、アレク様の膝枕で寝ていたと言う事実に気がついた私は、いうべき言葉をなくすのだった。

 こういう時、気絶出来るのならしたかった。私はぼんやりと、そんな事を思った。

 
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