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本編

29(クリストフィン視点)

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 やっと…、あの言うことを聞かない女を、追い出した。

 見た目だけはいいから、せっかく僕のものにしてやろうとしたのに、生意気にも断りやがった。

 領地に帰してしまえば、また婚約者として祭り上げられてしまうから、あの森に捨てさせたのは仕方のないことだ。

 僕の言う事を素直に聞けば良かったんだ。僕の言いなりの人形さえ、そばにいればいいのだから。

 日にちが過ぎていくと、各地域の特産の収穫率が落ちたといい、税金の払えない領地が増えてきた。あの女の実家であるマクレーン領地を除いてだ。

 父上があの女と仲良くやっているのかと、探りをいれてきた。魔族領の森に捨ててきてやったといったらどんな顔をするのだろうか。

 そう思って父上の顔を見たら、目が笑っていない。なんであんな取り柄もない女に父上は執着するのだろうか。

 気に入らないけど、勝手に婚約破棄をしたといったら、不味い気がして言えなかった。

 しばらくしてあの女が居たから、「農作物の収穫量が増えていたはずだと、この国にいるはずなのになぜ収穫量が減っている」と父上に言われた。

「これでは税金も満足に徴収出来ないではないか!」

『まずい…、取り繕わなければ……。勝手にあの女が逃げ出したことにすれば……。そして、収穫量が変わらないという、彼の地を娘の脱走を理由に搾取すればいい』

「今すぐにはそんな税率を払うことはできません。我がマクレーンの領民を犠牲にするおつもりですか!」

 怒りの滲んだ表情で、僕を見下すロイ・マクレーン、気にいらない。さすがあの女の父親というべきか。

「仕方ない半年やろう」

 そう言って、生意気なロイ・マクレーンが、惨めに縋り付いて来るのを待った。

なのに…、縋り付いてこないどころか、連絡すらない。領地からは、出ていないはずなのに。

仕方なく、領地に足を運ぶと、建物は半壊、畑は焼き払われ、人っ子一人領地にいない。

 生きているかわからないが、あの女を探すしかない。ロイ・マクレーンも見つけたら、ただではおかない。

 生きているなら、僕の為の道具にしてやる。お望みの王妃の座につけるんだから文句は言わせない。

 もしもう死んでいるのなら、父上も仕方なく諦めてくれるに違いない。

 なのに植物の殆ど育たない魔族領がここ最近で食物は育ち豊かになり始めているという噂を聞いた。


 まさか、死んだと思っていたあの女のせいなのか!?

そんな力があるのだとしたら、お前は僕の所有物だ。

 お前を見つけだしたら、逃げ出したお前を救いだした英雄は僕しかいない…。
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