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本編

4(レイス視点)

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 未来へつながる架け橋アルク…。意識が戻らない者の元に稀に訪れる異世界の魂…。

 そんなことはあるはず無いと思うのに、使用人に事ある毎に「ありがとうございます」と頭を下げるレイシア。マナーやダンスといった知識、過去レイシアが身に着けただろう事は難なくこなしている。

 けれど、様々な事に驚き困惑し、笑い、感情の表現がよりストレートになった事や、僕や父上母上を見て、何やら他人行儀に接する事。自身の名前をナルウミ レイだと何度となく言っている事を見ると、僕の妄想ではなく、違う魂が入ったと思う方が合っているような気がした。

 けれど、屈託なく甘えてくるレイシアがいなくなったのかもしれないとは思いたくなかった。

 レイという別人が入り込んでしまった事は、なんとなく感じる違和感やふとした瞬間の言動で痛いほど僕達は理解し始めた。喪ってみてはじめて、アレをしてあげたかったこうしてあげたかったと、公開ばかりが浮かんでは消えていく。

 してあげたかった事は、いつでもできる事ばかりだ。その日その日を一期一会と思い、大切に過ごせていたならば、こんな後悔も心残りも少なかっただろうに。

 いつかしてあげようと、何時でも出来ると高をくくって、先送りしてきたんだろう。

 
 レイシアの代わりにというのは違う気がするけれど、レイシアに宿ったレイという存在を彼女の代わりのように僕達は大切にする様になった。

 レイシアやお嬢様と呼ぶと悲しそうな顔をするので、屋敷の中でだけ、僕達家族はレイ、使用人達はサツキ様と呼ぶようになった。

 レイは、最初こそ夢だと思っていたらしいし、取り出していたけど、元々はあまり不満を口にする子じゃないみたいだ。食事の時に少し困った様な顔をするのに、理由を言ってくれない。

「あまり好きなメニューじゃなかった?」

 僕がそう聞くと、曖昧に笑う。けれどある時、「ここに余ったパンや、卵や牛乳、砂糖やバターやチーズはありますか?」

 そう聞いてきた。言葉は何故か理解できたし、食材も前にいた世界と殆ど同じだという。ただ味付けなどが違うのだと。

 再現をしてあげたいとは思うものの、シェフ達以外に料理をできるものがいない。どうしたものかと頭を悩ませていると…。

「私…、多分火加減とか見てもらえたら作れると思うので、明日の朝食を作ってみていいですか?」

 そういうと厨房へ案内して欲しいと使用人に頼んでいたので、なんとはなしに僕もついていく。

 厨房で材料を物色しつつ、パンを卵と牛乳と砂糖を少し混ぜた液体へと漬け込んでいく。

「この食材は朝に使っても良いでしょうか?」

 そう料理長に聞くと、食材を保存する機器に入れて、続きは明日しょう。そう言ってレイ、厨房を立ち去ろうとしていた所、興味をそそられた料理人に作り方を聞かれ、「皆さんの分もパンだけなら作れますよ?」と言って卵と牛乳を混ぜた液を大量に作り、パンを入れる。

「半日ほど寝かせたほうがいいので、続きはまた明日……。お騒がせしました」

「明日の朝食楽しみにしているね」

 僕がそう言うと、「お口に合うかわかりませんが、頑張ります」と、そう顔を真っ赤にしてレイは言った。
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