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本編
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家庭料理しか作れないのに、期待されるのも辛い。パンも好きだけど、お米も食べたい。
「お米…、稲でもいいからないのかなぁ…」
私がそう言うと、「家畜の飼料の?」レイス様が言う。
「家畜の餌…。でも…、あるんですか? 籾殻取って糠取って炊いたら美味しいのに…」
乾かした稲に深い器を当てて、米の部分をこそぎ取る。そこから籾殻を本当はすり鉢と軟式野球ボールでゴリゴリと取り除く。
容器に入れて、すりこぎみたいな棒でひたすら糠を取る。簡単そうに見えて時間がかかる。
「少し乾いた稲貰ったら怒られますか? 無理に皆さんに食べさせたりしないので…」
少し考える様にして、レイス様は言った。
「レイが作るものは美味しいんだから、食べるに決まってるよ! あと稲だけど……、うちの領内で近年取れすぎて、消費が追いつかないから廃棄処分も検討されているんだよ。そこで人も食べられるとわかったら、領内の人達がパンよりも手軽に食べれる様になるかもしれないよ? 仕事も増えるだろうし…」
元々公爵家の領地と言う事で基本的には裕福らしい。けれど、麦の不作な時期や、特に特産もない地域はある。そこで稲の下処理を任せれば、その土地が活性化するかもしれない。
私の知識で役に立てる事もあるかもしれない。
馬の餌や牛の飼料として用意されていた稲を、一部もらった。裏庭に布を何枚か敷いて固定をする。
爽やかな柔らかい風に撫でられる中、したい作業を
レイス様に伝える。
「この覆いかぶさっている籾殻を取ったら、茶色いお米が出てきます。健康にはいいのですが、美味しくはないので研磨して白くしたいのです…」
「ふぅ~ん。風魔法で出来そうだよね…」
そう言ったかと思うと、一瞬強い風が目の前に収束していく。
「すごい風が…」
強風に煽られて、たたらをらを踏むと、風はさっきまでと変わらない柔らかさに戻っている。
「はぁ、急に風が起こるから驚きました!」
そう言い閉じかけていた目を開くと、精米されたお米と糠と籾殻が分かれて置かれていた。
「すごい! なんで?」
「レイなら使い道知ってるかもしれないから分けておいたよ!」
「ありがとうございます! これでぬか漬けも出来ちゃいます! 嬉しい!」
「お礼のキスはしてくれないの?」
拗ねたような表情でいうから何かたまらない気持ちになる。勇気を振り絞って、頬にキスをするとレイス様は満足げに微笑んだ。
名前の呼び捨てすら慣れないのに、お礼のキスとか…、いつか慣れる日は来るのかと少し遠い目をしてしまった。
「お米…、稲でもいいからないのかなぁ…」
私がそう言うと、「家畜の飼料の?」レイス様が言う。
「家畜の餌…。でも…、あるんですか? 籾殻取って糠取って炊いたら美味しいのに…」
乾かした稲に深い器を当てて、米の部分をこそぎ取る。そこから籾殻を本当はすり鉢と軟式野球ボールでゴリゴリと取り除く。
容器に入れて、すりこぎみたいな棒でひたすら糠を取る。簡単そうに見えて時間がかかる。
「少し乾いた稲貰ったら怒られますか? 無理に皆さんに食べさせたりしないので…」
少し考える様にして、レイス様は言った。
「レイが作るものは美味しいんだから、食べるに決まってるよ! あと稲だけど……、うちの領内で近年取れすぎて、消費が追いつかないから廃棄処分も検討されているんだよ。そこで人も食べられるとわかったら、領内の人達がパンよりも手軽に食べれる様になるかもしれないよ? 仕事も増えるだろうし…」
元々公爵家の領地と言う事で基本的には裕福らしい。けれど、麦の不作な時期や、特に特産もない地域はある。そこで稲の下処理を任せれば、その土地が活性化するかもしれない。
私の知識で役に立てる事もあるかもしれない。
馬の餌や牛の飼料として用意されていた稲を、一部もらった。裏庭に布を何枚か敷いて固定をする。
爽やかな柔らかい風に撫でられる中、したい作業を
レイス様に伝える。
「この覆いかぶさっている籾殻を取ったら、茶色いお米が出てきます。健康にはいいのですが、美味しくはないので研磨して白くしたいのです…」
「ふぅ~ん。風魔法で出来そうだよね…」
そう言ったかと思うと、一瞬強い風が目の前に収束していく。
「すごい風が…」
強風に煽られて、たたらをらを踏むと、風はさっきまでと変わらない柔らかさに戻っている。
「はぁ、急に風が起こるから驚きました!」
そう言い閉じかけていた目を開くと、精米されたお米と糠と籾殻が分かれて置かれていた。
「すごい! なんで?」
「レイなら使い道知ってるかもしれないから分けておいたよ!」
「ありがとうございます! これでぬか漬けも出来ちゃいます! 嬉しい!」
「お礼のキスはしてくれないの?」
拗ねたような表情でいうから何かたまらない気持ちになる。勇気を振り絞って、頬にキスをするとレイス様は満足げに微笑んだ。
名前の呼び捨てすら慣れないのに、お礼のキスとか…、いつか慣れる日は来るのかと少し遠い目をしてしまった。
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