【完結】初めて好きになった貴方…

皇ひびき

文字の大きさ
2 / 19
本編

プロローグ

しおりを挟む
 私は里を離れ、人の多い街で、仮初の仲間を見つけた。


 私が入ることになったパーティは、少し前までアリシアという人間のファイター職の娘がいたらしい。ダンジョンで亡くなってしまい、神殿で生き返りの魔法をかけたらしい。

 けれど皮肉な事に高確率と言っても、完全なる死を意味するまれな事態が存在する。

 たった一握りだと言っても、その確率に選ばれた者の魂は呼び出せないし、完全にこの世界から喪われてしまう。ロストした者には二度目の生はないのだ。

 アイリスという少女も、不運な事に…、その極稀な偶然に選ばれたらしい。


 そこで人数は多めとはいえ、高位のダンジョンに潜る彼らには、人数がいた方が安全だということだろうか。

 アリシアという少女の代わりに、私が選ばれた。ギルドに登録して間もない私には幸運だったのかもしれない。

 酒場で顔合わせをしようとなり、酒場で自己紹介をすることになった。


 リーダーらしい、紺色の髪とアメジストの様な紫の瞳を持つ、オイジュスと名乗った人が「ファイター職だ」と言い、ネーレウスと名乗る茶色の髪にサファイアの様な瞳を持つ人間が「クレリックです」と言った。

 スペロスと名乗った深緑を写したような深い緑とペリドットの様な瞳をキラキラさせながら、明るいホビットは「僕はファイターなんだ。よろしくね~!」と言った。

 ゴンと名乗った黒髪黒目のドワーフはジョッキを煽り一息つくと「ワシはファイターじゃ」と言った。

 マジェスティと名乗る金髪碧眼の人間は、「わたくしはマジックキャスターですの。よろしくお願いしますわ」澄ました様子で言うと並べられた食事に夢中になっている。

 ヘルメスと名乗ったエルフは、黒髪に金色の瞳で「俺はシーフとマジックキャスターのマルチだ…」それだけいうと、自身に配られた酒をチビリチビリと飲んでいる。

 アテナと名乗った、赤い髪に意思の強そうなオレンジの瞳を持つ人間が「あたしはファイターよ」と言い自己紹介の後に口を開く。

「あんたさぁ何様なの? フード被ったまま挨拶とかないんじゃない? あたしあんたみたいなヤツ嫌いだわ」

「ミリアムと申します。ファイターとクレリックのマルチです。見た目にコンプレックスがあり、フードを取らずにいましたが、不快にさせたなら失礼しました」

 確かに礼儀に反するなと思い、重い腰を上げてフードを外す。

 
 赤くなった顔で、呼吸が止まったかのように私を見つめるオイジュスとネーレウス。私の魅了にかかってしまった人達と同じ目をしていた。

 目を瞠る様な顔をしていたけど、ヘルメスというエルフは、以前と変わらず無愛想だ。

 酒場の面々も私の魅了にかかってか、「酒代出してあげよう!」とか「欲しいものは買ってあげるよ」なんて言ってくる。

 アテナさんはぷるぷると震えたまま何も言わないけど、こんな事ならフードを取らせたくなかったのだろうとなんとなく思った。

「うわぁ、おねえさんキレイだねぇ!」

 スペロスもあまり変わらぬ様子で懐いてくる。

『可愛い……』そう思いながらフードを被り直した私だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

男装の騎士に心を奪われる予定の婚約者がいる私の憂鬱

恋愛
私は10歳の時にファンタジー小説のライバル令嬢だと気付いた。 婚約者の王太子殿下は男装の騎士に心を奪われ私との婚約を解消する予定だ。 前世も辛い失恋経験のある私は自信が無いから王太子から逃げたい。 だって、二人のラブラブなんて想像するのも辛いもの。 私は今世も勉強を頑張ります。だって知識は裏切らないから。 傷付くのが怖くて臆病なヒロインが、傷付く前にヒーローを避けようと頑張る物語です。 王道ありがちストーリー。ご都合主義満載。 ハッピーエンドは確実です。 ※ヒーローはヒロインを振り向かせようと一生懸命なのですが、悲しいことに避けられてしまいます。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

婚約者が番を見つけました

梨花
恋愛
 婚約者とのピクニックに出かけた主人公。でも、そこで婚約者が番を見つけて…………  2019年07月24日恋愛で38位になりました(*´▽`*)

王妃そっちのけの王様は二人目の側室を娶る

家紋武範
恋愛
王妃は自分の人生を憂いていた。国王が王子の時代、彼が六歳、自分は五歳で婚約したものの、顔合わせする度に喧嘩。 しかし王妃はひそかに彼を愛していたのだ。 仲が最悪のまま二人は結婚し、結婚生活が始まるが当然国王は王妃の部屋に来ることはない。 そればかりか国王は側室を持ち、さらに二人目の側室を王宮に迎え入れたのだった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

処理中です...