異物が侵食する日常：不条理が描く忌まわしき物語集

二人の卒業

1

「少年老い易やすく学成り難がたし、皆さんはこの日……」

　私達は今日、三年間過ごした学舎まなびやを巣立つ。

　この三年、いろいろな事があった。

　──陸上部のマネージャーになって皆のお世話をした。
　皆のタイムが縮まっていくのは自分のことのように嬉しかったし、それを記録し、お世話をする、マネージャーの仕事は、やり甲斐に満ちていた。
　──怪我けがで退部するつもりだった部員をマネージャーとしてやっていけば良いと引き止めた。
　彼は真面目に役目を果たした。
　──彼と過ごす時間が楽しかった。青春だった。
　卒業自体はそれほど悲しくはなかった。
　ただ次の段階に進むための儀式だと思って退屈な式典を過ごし、担任の話をぼんやりと聞いていた。
　──終わったら彼と食事に行こう。
　互いに金欠だけどお祝いだから少し贅沢ぜいたくしても怒られはしないだろう。
　両親にはあらかじめメッセージを送信しておいた。
『部活の友達と食事に行くから遅くなります。3年間ありがとうございました。　かすみ』
「──と、言うわけで三年間お疲れ様でした。これで先生ともお別れだな」
　寺の住職じゅうしょくじみた話がようやく終わる。
　これで最後と思うともう少し長くてもいい気がした。