沈黙(アルファポリス版)

玄道

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「パ、パパ……きゃっ!やめて、痛っ!痣できちゃう!明日体育あるんです!お願いだからもう止めて下さい!こんな、ママご主人様!?助け……ひっ」

 ──今夜は七発か。
 痣と傷は……インナーで隠しても何とかなるとも思えない。

 明日の体育も見学して保健室に行くことにする。



 私は三村未来みむら みく、中学二年生。
 可愛い、と級友には言われる。
 少なくとも両親は美形だ。顔だけは。

 その皮を剥いたら鬼だ。
 そして、私の人生最大の負債である。

 今夜も鬼どもに、サンドバッグにされた。
 もっと殴られても、抵抗すらしない偉大なサン=ド=バッグ伯爵に、大変申し訳ない。

 ──こんな下らない洒落でも考えなければ、この人生を笑顔で過ごしていく事など、できはしない。



 年齢を考えない派手な装飾を施された銀の指輪を、全ての指に嵌めた女の拳で切れた所に、自分でワセリンを塗り、明日の用意をして、寝た。

 ──休めば良い、無理をすることはない。

 もう一人の私が囁く。

 しかし、「今日学校休む」などと言い出したら、きっとその日が、私の命日だ。

 葬式には、クラス全員出席させてもらえまい。

 きっと、家出か何かで片付けられる。

 明日も、朝から学校に逃げなければ。

 夜八時。
「おやすみ、ベス」
 祖父の秘書から渡された、スマホに隠した画像に、話しかける。

 早々に、煎餅布団に潜り込んだ。
 ──寒い。
 本当に今六月か?
 ──ああ、私が細すぎるのか。
 ──空腹で寝付けない。水を飲むことにした。

 忍び足で、台所に向かう。

 台所のポスターが、目に入る。
 明日は不燃ごみの日か。
 早起きして出しに行かなければ。

 もうベスはいないのだ。
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