Rotstufen!!─何もしなくても異世界魔王になれて、勇者に討伐されかけたので日本に帰ってきました─

甘都生てうる@なにまお!!

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第1章 (元)魔王と勇者は日本にて(説明欄でも告げたとおり小説版キャラ紹介的な章です)

✨4話1Part 同居人のショタっ子から高校に行きたいと言われました。さて、その高校生活はいかに...

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「ねー望桜」

「んお?どした?」

「僕、高校に行ってみたい」

「おお、いいぞ......って、ええ!?」


 望桜の家の末っ子(見た目でいえば)な鐘音が言うには、この間の俺と或斗との件で、太鳳と鐘音に友達関係が出来たらしい、或斗と的李にも。そして望桜と瑠凪もあの件があり見違えるほど仲良く(?)なった。


 その関係で太鳳に高校のことを色々聞いたらしい。人間がどうして群れるのか分かる事や、単純に異世界の人間とて人間なんだなーって思うエピソードが欲しいとの事(魔界に帰った時の土産話にするためらしい)。


 ......そこから、上記のことがあって鐘音が高校に通い始めたのが1か月前。望桜にとっては今でも思い出しただけで胃がキリキリする記憶だ。

 高校に通うのに必要なものを揃える時にかかる費用の総計や月々の授業料なんかの書類を見た時望桜自身もたいそう驚いたが、それ以上に的李が鬼の形相で書類を眺めていた事が1番望桜の胃に優しくない。

 あの形相で追いかけられでもしたら、悪魔にとって最悪の事態であろう、聖剣を喉元に突きつけられている時より怖いかもしれないとまで思った。


 こちらはこちらで必死の形相で鐘音が的李を説得した結果、早乙女鐘音は私立聖ヶ丘學園2年B組の生徒として華々しく高校生デビューを果たしたのだった。


 そして真夏の熱気も冷めてきた頃、ある女の子が訪ねてきた。その子は鐘音の學園の紋様が入った制服を身にまとい、走ってきたのか髪も息も乱れている。


 ピンポーン

「はーい」

「あの、えっと......鐘音くんのお兄さんですか?」

「えっ......と......まあ、うん。そうかな」

「プリント持ってきました!今日、鐘音くん休みだったので......」


 いかにも大事そうに抱えていた鐘音宛のプリントを望桜に差し出す女の子。受け取ると、抱えたまま走ってきたのか、望桜のプリントを持つ手がほかほかする。


「......おお!ありがとな!」

「鐘音くん大丈夫ですか?体調不良......?」

「あー!ずる休みずる休みww」

「あー......ww」

「みんなには内緒でwwあ、あとプリントありがとな!今度鐘音から何か持って行かせるよ」

「ああ、いいんです!私がやりたいって言って来たので......」

「......おお!」


 何かに感づいたような態度の望桜を見て女の子は咄嗟に顔を伏せた。望桜にその顔を伺う由は無い。


「え......と、それじゃ失礼しますありがとうございました!!」


 頭を勢いよく下げた女の子は勢いよく頭を下げたあと、そのままの勢いで駆けていった。


「......どしたんだろな、ひょっとして俺の顔になんかついてたとかか?とりあえずバイト行くか」


 明らかに思わせぶりな望桜の素振りのせいだ。女の子の言い方からして鐘音に好意を寄せている人物であることは分かるのだが、生憎鈍い望桜には伝わらなかったようで。


                                                    
                                             ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


『......ここが神戸市ね』

『みたいだな。まずは標的を探すとしよう』

『そうね』


 神戸市新神戸にて。ドイツ語を話す2人の青年は、その若い見た目に反して威厳があった。そしてその青年達はある方向を一心に見つめて呟いた。


『こっちよ』

『早急に終わらせて早く帰ろう、テトラも待っている』

『にしても......この街は随分と平和ね。こんなところに社会の厄が服着て歩いてるような生命体がうじゃうじゃいたらパワーバランスやら色々崩れる......』

『もしそうなったら......この街は一体どれだけの被害が出るんだろうな』

 人間界首都ラグナロクとは比べ物にならないほどの高さを誇るビルが群れをなして、夏の残り香が未だに香る日差しを浴びて輝いている。

『行きましょ』

『ああ』


 2人が一心に見つめる方向は......



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「きもちわる......」

「大丈夫か?」

「近づかないで......」

「体調悪い時ですら素を見せてくれないんだな?」

「なんで赤の他人に......素で話さないといけないわけ......?」


 体調が優れないらしく、化粧室からふらふらしながら休憩室の方に歩いていく瑠凪。体が一気に傾いたのを見逃さなかった望桜は駆け寄って支えてやる。既にいつもの呼吸ではなくなっており、息を整えようとする仕草自体が望桜の目に酷く痛々しく映る。


「......ほんとに大丈夫か?」

「帰る......」

「その状態で1人で帰れるかよ......或斗呼ぼう」

「今......多分買い物......行ってる......」

「じゃあ太鳳......は部活か、この時間だと......あ、鐘音がいるな」

「鐘音......?」


 今日は望桜にしては珍しく徒歩で出勤(出勤がてらの運動)したため、原付はない。その後望桜は同居人の的李を思い浮かべたが、やめておくことにした。的李は平日の日中はずっとバイトに行ってるため、確実に家にいないからだ。だが鐘音は今週はテスト期間~とか言ってたし消去法的にも鐘音を選ぶ他ない。


「俺の同居人。呼ぶから送ってもらえよ」

「今、オーナーも......丞も......いな、いから......車ない、しね......仕方、ないかな......」

「もう喋んな、呼んでくるわ」

「ん......」

「座っとけよ~、っとと、スマホスマホ~…「望桜」


 声を出すのも辛いらしく、話し方は途切れ途切れ。先程かわらず口許を抑えたまま、はあ、はあ、と荒い息を繰り返している。様子を見兼ねた望桜が鐘音にMINEで声をかけようとした時、裏口の方から名を呼ばれた。振り返ると制服をまとった黒髪の男子高校生が立っていた。


「おわ!?って、鐘音?なんでここに......?」

「バイト先ここだって言ってたから帰りに寄っただけ......何かあったの?」

「ああ......同僚がちょっと体調不良みたいでな。今店に車持ってるやついないし、一人で歩いて帰らせるのも無理があるから、そいつの同居人に声をかけようとしたがダメ......ってことでお前に白羽の矢が立ったんだ、鐘音」

「帝亜羅達と一緒なんだけど......それで良ければ、いいよ」

「さすが鐘音だな!」

「......なにそれ」


 いつもの事ながら若干引きつつも頼み事は割と聞いてくれる。鐘音の世間話(主に高校でのこと)を聴きつつ、横目で休憩室を見やる。相当きついのだろう、口許をハンドタオルで抑えながら従業員用のロッカーと棚の間で、体育座りをして天を仰いでいる。本とかの表現で使われる"青白い顔"というのはまさしくああいった表情のことを指すんだろう。

 ......誰の付き添いで歩いて帰るとかの次元じゃなくなってきたぞ


「......あれもう多分歩けないんじゃないかな」


 様子を伺う俺の横から覗きこんだ鐘音もまた同じ結論に至ったのだろう、見るだけで苦しさが伝わってくるといったふうに顔を顰めている。思ったことを率直に言うため知らずのうちに人の心を折っていくタイプの鐘音だが、正論を言ってくれるところはそーいうタイプの奴のメリットともいえる。


「だな......確か今日は2時から丞がきて4時くらいには帰るらしいから、その時に送ってもらえばいいと思うが......」

「2時間!?短っ......まあでも家の中まで支えていくとかしないとでしょ?用事があるから早めに帰るんじゃ」

「丞は瑠凪とも仲良いし大丈夫だろ。それに早く帰るのはオーナー命令だよ、働きすぎだから2時間であがれとな」

「へえー......」


 心配ではあるが興味はないらしい鐘音にとっては、困ってるなら助けないと程度の事案なのだが、望桜的には推しが苦しんでる顔はなにかそそるものが((見ていたいものではないので、どうにかしたい。


「救急車......」

「それは本人にやめろと言われた。同居人が余計な金は使うなって言うんだと」

「救急車は金欠事情より優先だと思うけど」

「まあ、本人がやめろって言ってんだし......な?」

「......ならいいか」
  
「とりあえず寝かすか」

「そうだね」


 今もなお荒い息を繰り返している瑠凪を、抱え上げて休憩室横のベンチに寝かせてやる。鐘音が後ろから俺のスマホと瑠凪のリュックを抱えて着いてきているのを確認してからそっと下ろすと、仰向けだと楽になったのか、少しだけ顔色が良くなったような気がする。......それでもまだキツそうだから、正直救急車呼んでやりたいが......


 今店はバイトの冬萌(ともえ)が1人で切り盛りしている状態。昼時が過ぎたくらいなので人はまあ減った方だが、それでもお客はちらほらと残っている、ここで今救急車を呼べば、ちょっとした騒ぎにはなるだろう。


「......僕そろそろ帰ってもいいかな?帝亜羅達も待ってるし」

「友達できるのはえーなー......」

「望桜が高校の時が遅かっただけでしょ」

「失礼だな!?」

「ほんとのこと」

「今の会話で心折れたんだが......」

「どんまーい......それじゃ帰るね」

「へいへい」


 ようやく落ち着いたらしい瑠凪は、無意識に頭を軽く押えて、その体制のままで眠っている。苦しそうなのに変わりはないが、起きてる時よりはマシなはず。ってか冬萌ちゃんが視線でなんか伝えてきてる、マジで戻らないとあとが怖ぇ......


「待たせたな冬萌ちゃん!キッチン入りまーす!」

「遅いでーす!!」
   
   

 ───────────────To Be Continued──────────────



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