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第2章 Alea iacta est!(本編本格始動の章です)
5話3Part やっぱり外に出るのはいいですよね!都会のアオンに行けたり、爆発事件に本格的に巻き込まれたり...
しおりを挟む「スケブも入れたし、つけペンも入れた。あとはこの辺りに......F6BABC、F6BABC......あ、あった」
太鳳のリクエストにより訪れている、アオンモール内の画材屋にてペンを探す瑠凪。この画材屋には元々、仕事等で使うペンの中でインクの少ないもの、既にきれたもの補充に来たのだ。
「ふっ、うーっ......むーっ!!」
一生懸命背伸びをして、必死にペンを取ろうと頑張るが、ほんの1cm弱程で取れない。ペンを指先が掠め、少しずつ前にズレ出てきた。もう少し、もう少し......
「と、届かなっ......ふっ、と、取れっ......た!うわっ」
指先で何とか掴んで引っ張りだしたペンが落ち、瑠凪の顔に当たってそのまま地面へ。鼻先に被弾した瑠凪は、鼻を抑えたまま下を向く。......その時、後ろから誰かに拘束された......幼児を抱いているような体勢だ。そしてそのまま店後方のスタッフルームに連れ込まれる。
ペンの近くにいつの間にか落ちていた自分のスマホが、
「っつ、いたい!!......え?ちょ、」
「静かにしろ」
「~っ、~っ!!」
そのままの体勢で口を塞がれる。相手の方が身長も力も上で、抵抗しようにもできない。というより、しても意味がないようだ。......そして瑠凪には、その相手の声に聞き覚えがあった。
「~っ、ぷはっ......ちょっと、お前なんで急に......聖槍勇者ルイーズ!」
「ちょ、しーっ!!静かにしろと言っただろう!!」
「お前の方が煩いじゃん!」
......相手は下界聖槍勇者、ルイーズ。8代目聖槍勇者にして、歴代最高の実力を誇る天才だ。勇者軍としても大量の悪魔を葬り、五天皇や幹部、その補佐官も数名屠っている、かなりの猛者。
「......ここで僕の首でも撥ねる気?」
「いや、本当ならそうしたいところだ。魔王軍の大黒柱であり奔放当千なお前の首をここで撥ねられれば、魔王軍の瓦解も待ったなしだが、今ここで斬首しても事件になって捕まるだけだ。面倒ごとはできれば避けたい」
「僕弱くはないけど当千程じゃないよ」
「いやいや、大天使筆頭であり熾天使だった天使の力が、堕天した位で暴落するわけないだろう」
「神聖さはだだ下がりだけどね......てか離して」
「それは無理だ」
「はあ!?なんでだよ離せって!!」
「だーかーら!!それは無理だと......む?」
建物がほんの少し、微かに揺れた。それと同時に小さく轟音も聞こえてきた。どちらも瞬間的なものだったので周りの客は気づいていなかったが、2人ははっきり感知した。
「......今、揺れた?」
「ああ......微かなものだったから周りは気づいてないが、確かに揺れた」
「この間までの爆発事件と関連があるかもしれない」
「......あ!あれか!あれはラグナロクの人が起こした可能性があるとジャンヌも言っていた、ならば早めに現場に向かった方が良いだろう」
「なら離して!!」
「......どさくさに紛れて何か問題を起こされても面倒だ、こうしていこう」
「なっ、ちょ、お前どーいうつもりだよ!!」
瑠凪をいわゆる姫抱きというやつで抱え、そのまま店を出た。ルイーズ達から見て現場はおおよそ7時の方向。距離があるようだが、それでも舞い上がる炎と黒煙とがはっきり目視できる。それくらい規模は大きいらしい。
「下ろせ!ほんと、馬鹿なの!?」
「暴れるな!......主よ、我が聖槍に宿りし朱雀よ。汝の偉大なる威の一端、今1度この世に現し給え《認識阻害》」
認識阻害......周りの人間からは目視ができなくなり、立てた音すら認識できなくなる。下界の簡単な術のひとつだ。それをかけたルイーズは瑠凪もろとも現場へ急行した。
そして現場に到着すると、遠くからでも並に大きく見えた炎、黒煙が、より大きく見える。ただ不思議なことに、規模がかなり大きいにもかかわらず、死亡した人や、爆発自体で負傷した人が居なかった。負傷した人も、爆発による建物の損壊での負傷のようだ。それに気づいたルイーズは、腕の中で尚も小声で文句を言ってくる瑠凪に声をかける。
「......ルシファー、なにか気づいたことはないか?」
「普通に見てりゃわかるよ」
「まず間違いなく下界関連だろうな、となると、事情を知ってる私達が対処せねばならない」
「......だね」
「私は遠方を確認しよう、ルシファーはすぐ近くを千里眼で確認してくれ」
「はあ......めんどくさい」
そう言って渋々周りを見渡す瑠凪。微かな魔力·神気も完治する千里眼で確認してみても、皆普通の人間だ。先程の爆発を起こせるような魔力を持っている者は居ない。かといって爆発中心部の反応を見てみると、確かに残留魔力反応が出るのだ。
「......普通に居ないけど」
「こちらも反応が......あ、居た。悪いが、このまま追わせてもらう!!《奏一瀉千里》」
「はあ!?......あ、でもあの速度は僕は追いつけないから......めちゃくちゃ嫌なんだけどね」
「な、こちらとしても不服だ!!」
綺麗な赤毛を揺らしながら颯爽と走るルイーズ。現場、そこに群がる野次馬の向こうで、まさに疾風の如くといった速度で移動する悪魔の姿が見えた。かすみがかっては居るが、千里眼も感知スキルも、はっきりと指し示している。それを追って道を、広場を、通路を抜けて階段フロアへと差し掛かった。
......相手はどうやら、屋上へ向かっているようだ。
「速いね......追いつけそう?」
「ああ......大丈夫だ!!」
「にしても......あの速度での移動、中級悪魔以上なのは確実だよ」
「だろうな......戦闘になることも予測しておかねば。黒幕は前方の悪魔で間違いないだろう......む?」
......ルイーズの千里眼の視界内から、ふと魔力反応が消えた。ターゲットが進行方向から忽然と姿を消したらしい。しかし、いわゆる"車は急には止まれない"現象中のルイーズは、ちょっと不思議には思ったが、なんとはなしに少しずつの制止を謀る。
「急にどうしたんだよ。ねえ、何かあった?「ねえねえっ!!」
「「!?」」
「せいそーゆーしゃ!!ルシファー!!いっしょにあそぼーぜ!!」
「な、うわああああ!!!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「遅え......もうパソコン選んじまったぞ......」
機械屋前のベンチで待っている望桜は、瑠凪が今聖槍勇者ルイーズと接触し、爆発事件解決のために事構えているとは露知らず、ツニッターをいじったりパズルゲームをしたりして時間を潰していたが、とうとう待ちくたびれて画材屋の方へと出向いた。
「ここが画材屋か......周りには......あ」
「あ」
そして画材屋前をうろうろしていた望桜の前に現れたのは、タイミング的にやはり勇者である。聖弓勇者ジャンヌだ。
「こんな所にいたのね!!ここから見えるあの黒煙、あなたの指示で何かやったわけじゃないでしょうね??」
至近距離まで顔を近づけられて、やってもいない事について問いただされる。いや、さっきから伝わってくる神気の念で、ピリピリ感がして顔が痒いんですけど......
「何もやってねえよ!第一、もう普通の人間として生活してるんだから、悪事なんて働かねえよ」
「そうなの?でもあそこ、魔力反応があるわ。現在魔界に活動中の魔王がいない今、指揮者不在でこちらの世界に悪魔がなだれ込んできてる、とかいう訳じゃないわよね?」
「そうだったとしても既に俺の管轄内の出来事ではない!」
「あ、そう。でもあなたは今の魔界で1番権力があるわ。現場に行くわよ、転移魔法《ポータルスピア》」
「うわっ......あー、やっぱ慣れねえな~......」
やはり異世界転移魔法(ポータルスピア)は便利だ。爆発現場にひとっ飛びで到着した2人は、そのまま周りの様子を伺った。規模が大きく、怪我人も多数出ているようだ。
......ん?今、野次馬の中に見覚えのある茶髪の子が......?
「にしても酷いな~これ......」
「そうね......あ!帝亜羅ちゃん!!お久しぶり~」
「わ、た、聖火崎さん!お久しぶりです~!!」
「てぃ、帝亜羅ちゃん!?」
「わ!望桜さんも、お久しぶり~」
「お久しぶり!帝亜羅ちゃんも、ここまで来るんだな~!!」
「はい!」
「へ~、この人達が帝亜羅の話してた聖火崎さん?」
「あ、うん、そうだよ~」
手前に見た事のある顔がいるな~......と思ってたら帝亜羅ちゃんか、で......
「帝亜羅ちゃん、その後ろの子は?」
「あ、この子は私の友達の......「雅 梓っていいまーす!よろしくおなしゃっす!」
今流行りの代名詞!!みたいな服を着て、脱色だろうか、かなり淡い月色のショートヘア。彼女は雅 梓というらしい。......元気な子だな。
ふわっとしている印象を受ける帝亜羅とは反対に、シャキッとした印象だ。
「俺は緑丘望桜、よろしくな!えーっと......」
「梓でいいですよ!!」
「おけ!よろしくな梓ちゃん!俺の事も、望桜でいいよ」
「わっかりましたー!!にしても、酷いですよね~、この爆発~」
「ああ、俺も知り合い探しついでに来てみたとこだが、これほんと大丈夫か?」
大きな爆発の割に、負傷者が少ないような気もする。まあ、巻き込まれた人が少ないことに越したことはないが。元々建物を構成する1部だったであろう瓦礫が、幾人の人を巻き込んで散乱している。現場から30mほどの所まで欠片が飛んできている所を見ると、規模はかなり大きい。......やっぱり、なにか引っかかる。
「ちょっと望桜、奴の居場所が特定できたわ、行くわよ」
「聖火崎さん、どこか行かれるんですか~?」
「あ、うん、ちょっとね~......屋上に......ほら、行くわよ望桜」
そしてそのまま屋上まで向かった。ひとつ、すぐ後ろで物音がしたような気がしたが、ジャンヌに手を掴まれており、それがまたさすが勇者と言わざるを得ないほどの馬鹿力で、なかなか振り解けなかった。それもふまえて俺はその場を離れた。
──────────────To Be Continued───────────────
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