Rotstufen!!─何もしなくても異世界魔王になれて、勇者に討伐されかけたので日本に帰ってきました─

甘都生てうる@なにまお!!

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第2章 Alea iacta est!(本編本格始動の章です)

8話5Part 元魔王の元に誰かがやってきたようですね!元魔王達は知らないですが、その男は重要人物なのですよ!!

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 現在望桜は、爽風を浴びながら夏の日差しの照りつける道を歩いている。

 元々は同居している部下2人を引き連れて街を歩いていたのだが、あの2人は如何せん毒舌、会話をしているとどうもその毒舌の被害にあってしまう。

 だから2人が書店に立ち寄っている間に、先に店から出てきたのだ。気の赴くままに東京の街を練り歩いて、30分経ったか否かという所で、休憩がてら近くにあった公園のベンチへと腰掛けた。


 それにしても、神戸の街も確かに都会で人もそれなりに多いのだが、国の首都となれば同じ都会でもやはり違う。さすが東京、恐るべしだ。

 そんな都会の賑やかさや騒がしさを、公園に茂る穏やかな緑が忘れさせてくれる。

 思えば、東京旅行の前までも、バイトの休日はあったがどれもトラブルに巻き込まれてばかりで、先程の賑やかさや騒がしさといったものを忘れて、心からただぼーっとするだけの、心身から疲れをすっきり取ってしまうような機会が無かった。

 だから、突発的に決定したけど、東京旅行に来て良かったと思う。バイト先にはしっかり連絡を入れてあるし、心からリラックスできる。

 家の大穴も資金の負担は必要なし(錬金術という便利なもののおかげ)で、負担もない。......このまま眠ってしまいたい。都会は物騒だけど、少しだけ......


「......すー、すー」


 数分後。そのまま、ベンチに全体重を預けて望桜は眠ってしまった。それは先程まで語っていた、心からのリラックスと、それにより都会の物騒さを忘れたことから来る油断の訪れであった。


「......あれ?この顔は......13代目ですな!!なんでこんな所で寝てるのですかな?わー!!!起きるのですぞ!!そんなところで寝てたら、財布を持っていかれますぞ!!」

「すー......すー......」


 そのさらに数分後。すやすやと眠る望桜の元に、1人の男が近づいてきた。大きな声で話しかけ、起こそうとして、結局やめた。

 思いのほか深い睡眠だったらしく、一向に起きる気配のない望桜に早くもしびれを切らして、踵を返した。


「起きない、のですぞ。なら放置でいいか。それでは失礼するのですぞ~」


 そしてそのまま去っていった。が、公園から出る際に、意外な人物とすれ違った。


「......あ」

「げっ......逃げるのですぞ!!」

「は、待っ......て......」


 その人物は、少し前まで望桜に引き連れられて街を歩き、書店から直接、GPS機能を上手く活用して公園に来た鐘音だ。


「あいつ......なんで日本に......?」


 ただ、男と顔見知りだった鐘音は、急いで走って逃げようとする男を引き留めようとするも、無理だった。

 鐘音より遥かに長身の男は足が速く、追いかけても追いつきそうになかったため、その場で引き止められなかった時点で鐘音は追うのをやめ、望桜の元へ向かった。


 その後望桜を起こしてすぐ、的李とも合流し聖火崎宅に帰宅した。真昼時から出かけていたはずが、もうすっかり日は落ちかけていた。そこで、案の定また問題が起こったのだ。

 その時は、家主である聖火崎と翠川、そして或斗と太鳳、そして葵までもが揃いも揃って外出しており、家に居るのは瑠凪、帝亜羅、梓だけ......のはずだった。それなのに、家の中から聞き慣れない男の声がするのだ。...これは、おかしい。


「ただい......「離れろよ暑苦しい!!」

「師匠、何かあったの?」「瑠凪!!大丈夫か!?」


 帰宅を告げると同時に瑠凪の叫び声と拒絶の声が聞こえてきて、急いで靴を脱ぎ部屋に入ると、部屋の中では謎の男と瑠凪が絶賛追いかけっこ中であった。

 その男は紛れもなく、公園で鐘音が顔を見た、そして望桜を起こそうとしていた男と同一人物だ。


「あっ、鐘音!!助けて!!きょ、巨漢が襲ってくるんだよ!!」

「なんで逃げるのですかな!?天界からわざわざ貴方様に会いに来たというのに!!」

「瑠凪、その男は長身ではあるが横には大きくないから、巨漢とは少し違うと思うのだよ」

「そんな訂正今いらないからっ!!ちょ、まじで助けて!!」


 男は瑠凪よりはるかに長身で、比較的体格も良い。けして太ってるとか筋肉質とかなのではなくて、単純に瑠凪が横に並んだことによって、それがより際立って見えるのだ。

 そんな体格なのに、情けない声を上げながら広い室内で瑠凪を追いかけ回す男と、荒れた息を必死に整えながら逃げ回る瑠凪。ドタバタ、ドタバタと大きな音がたっているが、聖火崎の家はかなり大きな一軒家で敷地も広いため、近所迷惑は気にしなくても良さそうだ。

 というより、そもそも近所迷惑とかそういった問題自体考える暇がないほどに、必死に逃げ回る瑠凪は、まさしく肉食獣から逃げる小さな兎のようだった。


「ああ~!!本当になんで逃げるのですかな!?まさか、1代目の時と同じように、魔王の番にでもなられたのですかな!?」

「ちが、違うから!!ただ鬱陶しいから離れろって言ってんだよ!!ってか1代目の時もそんな関係じゃなかったし!!あれは本当に仲良かっただけだから!!」

「天界でも有名な、怠惰性な天邪鬼の大天使筆頭熾天使として有名だった貴方様が、あそこまで素直になるなんて、つ、番ぐらいにならないとありえないですぞ!!」

「ば、馬鹿じゃないの!?違うって言ってんだろ!!もうお前喋るな!!!」


 番、という言葉にいちいち反応する望桜は置いといて、頬を赤らめて反論しつつ、時折たじろぐ瑠凪を、必死に丸め込もうとする男。しかし尽く地雷を踏み抜いてしまい、上手くいく気配がない。


「だから、なんで逃げ......む?げ、聖弓勇者が帰ってきたのですぞ!!では、さらば!! 《空間転移》!!」

「......やっと居なくなった......疲れたー......」

「瑠凪、今の奴は?」

「......8大天使、ウリエル」

「......天使!?」

「さっきあいつも言ってただろ......"天界"から会いに来たって......」


 そう、男の正体は......8大天使ウリエル。その男の来訪が、後に大きな事件を引き起こすことになるなど、望桜達はまだ知らなかった。



 ──────────────To Be Continued


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