Rotstufen!!─何もしなくても異世界魔王になれて、勇者に討伐されかけたので日本に帰ってきました─

甘都生てうる@なにまお!!

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第3章 (元)魔王と勇者は宇宙樹の種子と

15話5Part (元)魔王、いつぞやの出来事について仲間と自室で考察します

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「......と、いうわけです。それが約10分前......だから3時24分くらいのことですね!」

「ほえー......カエレスイェスとカマエルが......でもなんでこんな所にいたんだろ?」

「俺は面識がないから知らねえぞ......てか帝亜羅ちゃんのさっきの憔悴しきってた感じは無くなったな」

「私も......聖教所属の勇者ではあるけれど、カエレスイェスはともかく守護天使でもないカマエルのことなんて知らないわ......」

「......少なくとも私達がここで議論したとて分かることではないのだよ。......私はひょっとしたら、イヴ達と関係があるのかもしれないと思うのだけれど......」

「ああ~」

「さすが1000年後の事まで考えて計画が立てられる作戦参謀!!」

「や、このくらいは考えれば普通に分かるんじゃないのかい?」

「そのさらっていう感じが馬鹿にしてる感半端ないわ......でも確かに......」


 ......1週間か2週間か、日付感覚が長すぎる魔界生活140年のせいで若干狂ってきている望桜や、そもそも、元々今が夜なのか昼なのか気にしない性分の(気にしたところで昼も夜も大差がないから)魔界住民である悪魔達にはもう既に曖昧なのだが、それくらい前に勇者軍元帥 イヴ·カノープスとその従者である同位の元帥 一会燐廻ひとえりんねによって一行は襲われた。

 あの時に位置の話にはならなかったのだが後で瑠凪が調べたところ、東京だとばかり思われていた仮聖堂のある謎の建物は、福岡県天神今泉公園通りからきらめき通り中央を真っ直ぐの通り左側の建物のどこかにある、ということが分かった。

 そこまで詳しく分かる現代日本の技術や瑠凪のコンピュータ操作技術にも驚いたのだが、何より一行を一番驚愕させたのは......


「でも......騎士団やらなんやらがどやどやって来れるくらいの転移魔法を使ってるはずなのに、どうしてゲートやポータルスピアがしっかり働くんでしょうか?」

「確かに......帝亜羅さんの言い分にも一理あります」


 そして帝亜羅は複数回のゲート、ポータルスピア、空間転移によって磁場の狂いが生じ、別の場所に行こうとしていてもそこに飛んでしまうという現象が起きるはずなのに、起きていない事について指摘した。


「あの基地には結構な数の騎士が来てたからな、普通に考えれば磁場の異変なりなんなり起きてもいいはずだよな」

「少なくとも100人規模は来てたし、下手したらもっと来てたのかもしれない」

「怖ぇ~......」

「ねーねー、あの仮聖堂が天神にあるのは確実なんでしょ?だったらなんで建物から出たら、目黒駅前に出たの?」

「「......へ?」」


 話にあまり着いてきていなかった葵雲の一言は、場の全員は揃いも揃って間抜けな声を上げさせるくらいには衝撃的だった。

 ......そう、仮聖堂のある建物の外が、目黒に直結していたこと。ゲートを潜った感じも、ポータルスピアを使用した感じもない。その事実は葵雲とテレビでアニメを見ているフレアリカ以外の全員の心を一時機能停止させた。その中で一番早く戻ってきて自身の見解を述べ始めた聖火崎でも、5分はどこか遠くを見つめたまま固まっていた。


「......目黒駅前、確かにそうだったわよね......私は法術訓練校とかに通ってりしてないから、移動術式とかに関しても詳しいことは分からないんだけど......あの時、ゲート術とかは使われてなかったもの。あ、あとみんなに今のうちに言っておきたい事があるの。......1番話の分かりそうな性悪堕天使が居ないのは残念だけど......」


 みながまだ唖然としているのも無視して聖弓顕現に必要なミストルティンの木金具と聖剣の木金具を取りだし、手に神気を込めて片方の木金具を聖弓の姿に変貌させた。......ミストルティンは淡い翠色の光を発しながら静かに莫大な量の神気を循環させている。


「......兄が昔言っていた......望桜は知ってると思うんだけど、"2界等立"......下界と天界が等しくこの世に存在するために、下界を1つにまとめなくてはならない。......天使は大きな力を持っているわよね、だから"唯一神"とその使いである"天使"が存在する世界、"天界"と"下界"のってのはわかるのよ」


 聖弓を手でさすり、内包されている神気と聖火崎の体内を循環する神気が共鳴し合うのを肌で感じる。これも天界にある宇宙樹"ユグドラシル"の"枝"の力だ。そしてその"ユグドラシル"は天界の力の源でもある。仮に"ユグドラシル"が、8000年前から今までずっと万全な状態であったなら......

 ......そう考えて、聖火崎は心の中でなぜかふつふつと湧き上がる恐怖をひしひしと感じた。

 天使の絶大な力。それは聖火崎の生まれ故郷であり幼少期を過ごした地でもある西方の川沿いの小さな町·ヒューグリアから16、7kmほど東に真っ直ぐ進んだところにあるアドウェルサス·アルカナムで見た事があった。

 聖教教徒の守護天使ミカエルとその直属の部下であるガブリエル、この2人が反聖教の豪族が攻め立ててきた時に力を奮った。それを幼い聖火崎......ベルは見たのだ。

 勉強の際に読む聖書に書いてある通り、天使は豪族を容赦なく焼いた。しかしなぜか身は焼けず、彼らの体からは穢れのみが消え去った。その数分後に目を覚ました彼らは"唯一神"を崇め奉る熱心な聖教教徒に変わっていた。

 そしてその炎にすら抗った意思の強い豪族には、ガブリエルの刀·アスカロンが容赦なく牙を向いた。飛び散る紅と重力のまま地に落ちていく肉片が幼い少女の瞳にはグロテスクにも、しかし天使の威光の所為か限りなく綺麗で聖なる物のようにも映った。

 ベルはその光景を見てただただ偉大なる天使の力を目に焼きつけることと、記憶の中にある聖書で語られている"天使"と目の前にいる"天使"を比較することしか出来なかった。

 後に幼い少女は少しの相違点を頭の中で幼稚な考えで掘り下げていって、聖書の中の天使は"蒼色の焔で悪を焼き、人々に救いと正義の光をもたらす天使"だったのに対し、目の前で法術を展開していた天使は"白色の焔で穢れを焼き、人々に正義の心をもたらす天使"であった。

 ベルは知らない、聖書の中の"天使"を。再現法術ホログラムの閉じ込められた最新型の聖書で1度だけ見た、あの蒼い爆炎を扱う熾天使、全ての天使の長を。そして聖弓勇者·ジャンヌとして人間界を救った後も、目的を果たすために日本にやってきて"聖火崎千代"の名を手に入れてから今に至るまで、ずっとその"天使"に会ってみたいと密かに願い続けている。

 ......あの爆炎を間近で見てみたいなー、なんて......一時的にだけど、もう聖教教徒の枷聖弓勇者の位から解放されてるんだから、"天使に会いたい"なんて願い、少なくとも今は願う必要も無いのに......北方の奴らが言ってた"ルシフェル"様に......もちろん純粋無垢で光をもたらす者の名にふさわしい天使の、よ。弄れた天邪鬼堕天使じゃなくて......

 ......だめね、集中しないと。私たちの世界のためにも、今はこいつらに言っておきたいことがあるんだから。


「でも、聖なる天使と邪悪な悪魔のハーフである"人間"のってのが分からないの。下界を1つにするのが2界等立に必要なのなら、"悪魔"と"人間"の和解も必要なはずよね、さらにもっといえばそれを以てして世界を1つにまとめる必要がある。それなのに......」

"悪魔"の世界魔界については、何も触れられていない......確かに下界は人間界と魔界をまとめた世界の総称だけどよ、それでも"悪魔"について触れられてねえのはやっぱりおかしいよな。......てかそれ、お前の兄貴が言ってたことなんだろ?それにしちゃ意味が深すぎねえか?」


 そして聖火崎の1人語りが皆に意見を求める形式に変わる頃、遠くを見つめたまま固まっていたほぼ全員が帰ってきた。聖火崎の問いかけに望桜は思ったことを率直に言った。


「......元々は反聖教の考え方を持つ両親の元に生まれた、フルルって子が持ってた本に書いてあったことらしいの」

「フルル......ああ、お前の兄貴の友達か!!あいつ反聖教なのによくお前んとこの兄貴と仲良くできたな!!......あ、まず聖教の教えがどんなものか知らねえんだけど」

「急に変わったわね......聖教の教えについては私も詳しくは知らないわ」

「重要地位の聖職者の娘がそれで良いのかよ......」

「馬鹿にしてるのかしら?言っとくけど最後に聖書を読んだのって4歳の時よ?覚えてるわけないでしょ」

「あー、それはまあ......てかお前何歳なんだ?」

「女性に年齢を聞くなって、どこの世界でも常識だと思うんだけど......」


 望桜のデリカシーの無さに呆れてため息をひとつついた聖火崎は、時計を見あげるや否や葵雲を立たせ或斗の背を押して、鐘音と的李を外に出るよう促した後、最後に鼓舞するように望桜の背中をバンッと大きな音を立てながら叩いた。


「いってえ!!!ちょ、お前なにしやがる!!」

「あなた昨日、変なメール貰ったでしょ。待ち合わせのやつ。とりあえずそっちが先よ。なんでああいう風になってたのか知らないけど、件名の隅の方に小さく"明日の午後5時"って書いてあったんだから」

「わあったよ......」


 渋々、といったふうに貴重品だけをまとめて聖ヶ丘學園の屋上に行くための準備をし始める望桜の背に向かって、最後の補足だと聖火崎はある事を言った。


「」


 望桜はその言葉に一瞬驚いた表情を浮かべたあと、肯定の意を表す満面の笑みを聖火崎に見せてリュックを抱えて家を飛び出した。



                                                     ◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「んっんん~♪たらりらったら~♪」


 私立聖ヶ丘學園、屋上。いくつか建ち並ぶ小型倉庫のうちの1つの中で、ハイネックの黒い軍服に猩々緋の装飾布を腰に巻き付け、スティック型プレッツェルにスイートチョコレートのかけられたお菓子を頬張りながら寝転がる少年が居た。

 上質な生地のコートを毛布代わりに使用し、鼻歌交じりにスマホを弄りながら木枯らしの吹き荒れる氷点下間近を耐えている。......そしてその頭の上には小さな1対の角がちょこんと乗っかっていて、時折少年が身じろぐのだがそれでも動かない、本物だ。


「らったらっりら~♪らんらら~......魔王まおー様遅い......まさか時間帯までは伝わってなかった、なんて事ないよね。......不慣れなスマホ型ミーティアでメール送るの、結構けっこー大変だったんだけどな~......」


 時刻も黄昏時を過ぎ、部活動等で休日なのに学校に来ていた生徒が少しづつ帰り始めた頃、聖ヶ丘學園上空にも既に深い闇の色が差していた。スマホのデジタル時計も6時を過ぎ、"こんばんは"が相応しくなる時間帯だ。

 ......聖ヶ丘學園は神戸市北区に在る鈴蘭台駅から神戸電鉄粟生線に乗って揺られることたったの3分、1丁目、2丁目、3丁目を過ぎてすぐの西鈴蘭台駅から車で5分の位置にある大規模な私立學園である。3つの学習棟と総合事務棟、第1·第2体育館、カフェテリア、オープンガーデンetc......様々な建物と施設が完備されている。

 初等部、中等部、高等部があり、一貫して通うことも各部の途中から編入することも出来る(それが望桜が鐘音を通わせる高校に聖ヶ丘學園を選んだ理由の1つである)。"楽しい事を、精一杯"という教育理念を掲げており、比較的自由な校風と校則、売店も各棟に存在し休み時間であれば間食、スマホOKという、ぱっと見だとそれでいいのか!?ってなる學園だ。

 しかし総計約4700人の生徒達のうち3分の2が偏差値60超え、高い人に至っては75すら超えているという超エリート學園。そうなっている理由は、休み時間は比較的自由に、しかし50分の授業の間はとことん集中して取り組むことに徹底しているからだ。

 他にも"課題が無い"からこそ自主的で個人に合った学習を促すために、"○○が出来た!"という経験と自信を積ませるためのレベル別プリントを完備していて、もちろん自由に取っていい。

 ......上記で述べた聖ヶ丘學園の特徴、現実的に見れば70%くらいありえないのだが実現できている所以は、"UDACHI GROUP "という国内最大手IT企業の社長の娘の1人が學園長だからだろう。

 そんな學園の屋上倉庫の中で待つ少年は、待ち人に"5時に来るように"とメールをしたはずなのだが、よもや件名の隅に書いたその文字が小さ過ぎてそれに気づかなかったのか。

 そう思い2通目のメールの準備をし始めた頃だった。少年は動きを止めスマホの画面を落とした。屋上の扉が開閉する音がしたのだ。


「......やっと来た......!」


 嬉しそうな反面、倉庫から動こうとしない少年はスマホとお菓子を置いて息をふっと吐き出した後、


「......ぼくの呪いも彼と同じように解いてよね、魔王まおー様......♪」


 屋上にやってきた人物が1つだけ魔力反応を示す倉庫の扉を開けるまでの数分間を、自身の左足を中心に体全体へと広がった時雨色の薔薇の紋様をひと撫でし、最後の1本と心に決めて甘い匂いを漂わせるプレッツェルをかじった。



 ───────────────To Be Continued──────────────


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