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第4章 (元)魔王と勇者の憩場に
26話4Part Fake World Uncover④
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「うおっ」
「わっ」
「きゃっ」
「え、何これ、」
ガルダによる強制送還を受けて、先程まで戦っていたり結界の中で会議的なものをしていたり、はたまた一部だが意識を失って地面で伸びていた一同は、ポーンととある場所に放り出された。
......その場所は東京スカイツリー上空、地上から約700mの寒風吹き荒れる真冬の夜空である。
「待て、俺飛べねぇんだけどやばいやばいやばい!!」
「えと、これ、どうなって......」
「え、たか、こわ、うえぇ......」
望桜、瑠凪、帝亜羅の3人はいきなり結界を解かれただけでなく、気づいたら異空間から脱出できている事に嬉しさよりも戸惑いを隠せないままで、
「ここ、上空じゃない......割と高いし......寒っ、ちょ、これ......」
先程まで鐘音と鎬を削り合っていた聖火崎は、一周回って冷静だった。
「どうなってるのよおおおおおおおおおおおおお!!」
......強制送還魔法直後の落下が始まり加速し出す前の、一瞬だけ。
「五月蝿い!!てめぇの甲高い猿みてぇな声が耳に響いてキーンとなって不愉快だ!!」
聖火崎の悲鳴(?)に対してオセが不満を顕に文句を言い、その後ろで、
「っは、え?」
「なっ、目が覚めたらいきなりこれってどういう状況なんだい!?」
「ちょ、なにこれなにこれぇ!?」
今の今まで意識を失っていた或斗、的李、梓の3人が目を覚まし、各々何かしらを口にしながら重力に従って落下していく。
「高い高い高い怖い怖い怖いたかこわたかこふっ......」
「よく分かんないけどとりまてぃあ落ち着いて!!......って、は......?」
そんな中、パニックになって失神しかけている帝亜羅を落ち着かせるべく、数メートル離れているところから梓が声をかけようとした。が、その視界の大部分を占める帝亜羅の後ろに見えたとある現象と、同時に自身を襲った感覚に思わず声を上げた。
「た、聖火崎さんと、誰かわかんないけど......ひ、人が浮いてる......?それに或斗さん、翼が、黒い翼が背中から生えてる!!一体どういうことよ!?ってか私も浮いてる!?わ、何この浮遊感めちゃくちゃ気持ち悪いんだけど!!」
聖火崎とオセが各々法術や能力を使って宙に浮き、或斗の背中からは黒い翼が生えており、それを用いて空を飛んでいる。
さらに、自身も空に浮いている。恐ろしくふわふわして気持ち悪い浮遊感だが、不思議と不快ではない。そんな感覚に身を任せたまま、梓はその場で騒ぎ立てる事しかできなかった。
「梓ちゃん......ごめんね、驚かせちゃって。でも、とりあえず今は、その場でじっとしてて」
「は、はあ......」
瑠凪が或斗に抱えられながらそう申し訳なさそうに謝ると、梓は今の現状やらなぜ宙に浮けているのか等の色々を理解せぬまま、小さく頷いた。
「主様、苦しかったりしないですか?大丈夫ですか?」
「ああ、うん。大丈夫......おわっ、」
「っ、すみません、風が......」
或斗からの問いかけに、風にあおられながらも瑠凪はさらりと答える。
「でも、ふふ......良かったです、とりあえず全員無事みたいで......」
そんな主人の様子を見ながら、或斗は含羞みながら満足そうに呟いた。
「それはこっちが言いたいよ、或斗。痛かったでしょ?大丈夫?それと......今は戻ってるし、みんなは触れないけど......髪の色とかも......」
まだ先程受けたダメージが響いているのか、若干眉間に皺を寄せながら笑う或斗に対して、それを気遣いつつ或斗の頭に自身の手を軽く乗せて撫でつけ、そう訊ねかける瑠凪。
瑠凪のそんな気遣いに対する或斗の返答は、しっかりとした、芯のある真っ直ぐなものだった。
「大丈夫です。あれは俺自身の問題ですし、過ぎたことですから。......一緒に居た望桜さんや聖火崎......皆が、いい意味で周囲に興味がない人達で良かったです」
「ほんとだね。......でも、後で聞いてくるとは思うよ」
主人の3割型ぐらいは杞憂な不安感に、或斗は少しだけ虚ろな表情を浮かべてこう答える。
「その時は............主様、」
「大丈夫、その時は僕がお前を護ってあげる」
先に待っているかもしれない事に対する従者の不安に、今度は主人である瑠凪がはっきりと返事をしてやった。
「あ、ありがとうございます!!っへへ、一生ついていきます、大好きです愛してます主様~♪」
「普通なら引き剥がす所だけど......ここで引き剥がしたら僕落ちちゃうし、元気出たんならよかった!」
「んふふ~♪」
「......仲、いいんだな。あの2人......」
「......」
「あ?なんだ?」
そんな3人の様子を近くで眺めていたオセの肩を的李が軽くとんとんとん、と叩き、
「..今、この状況について軽くでいいから説明してくれないかい?」
唐突にそう問いかけた。
「見りゃわかんだろ。脱出できたけど出入口がこんな高ぇ所にあったから、地面にひゅーっと落ちるところだったんだよ」
「いやそこじゃなくて、どうやって脱出できたのかを聞いているのだよ。あれから、どうやってここまで......」
オセの雑な説明に、先程鐘音に撃たれた所を押さえながら、的李は少し不満げに眉を顰めながら言い返す。
「あ、それ私も気になってたのよ!鐘音......ベルゼブブと戦ってたら、いきなり外に出たからびっくりしたわ!!」
聖火崎も的李の言い草に便乗しながら、2人の横から首を突っ込んでくる。
「あー、それはだな......えーっと......」
オセはその2人からの問に対して、すぐにすっと答える事ができなかった。
何故なら、あの状況......変な異空間に閉じ込められた状態から、どうやって出てきたのか自分でもよく分かっていないからだ。
敵であるはずのガルダが、強制的に外に出す魔法を使って出した。というのは理解できているのだが、肝心の"ガルダが異空間から出してくれた理由"が分からないのだ。
よく分からないタイミングで、さっと"貴方達を出してあげる"と言ってきたのだ。だが、人が変わったように......ではなく、ガルダ本人には一応、あの行為を躊躇するような素振りはあった。
ただ、やはり明らかにおかしなタイミング......自分達が絶対的優位に立っていて、なおかつ上層部に手綱を握られていて目標を達成しないと自分達の命が危ういという状況で、あの言動。
とにかく、オセにとってガルダの"あの行動"は、あまりに唐突で訳が分からない物だったために、すぐに答えられなかったのだ。
無論、あれもガルダがオセ達を騙すために打った芝居であるかもしれないから、というのも理由の1つである。
「あー............んっとなぁー......あ、」
そんなオセの答えは、
「あんたらに言ってなかったっけ?俺、異才持ちなんだわ......あれ、言ってなかったかーぁ、悪ぃ悪ぃ......」
こんな風に、苦笑交じりの、いかにも胡散臭いものになってしまった。
「......?」
「......!」
そしてその返答に対する反応は、三者三様であった。
聖火崎は「何それ?異才?」と不思議そうに首を傾げているが、的李は何が思い当たる節があるのか、目を少し見開いて驚いたような表情を浮かべている。
「ベルフェゴール......お前、何か知ってんな?」
オセも的李の反応を見逃さなかったようで、そちらに視線を向けて少し怪訝そうに訊ねた。
「ああ、と......前に、少し聞いたことがあった程度なのだよ。だから気にしないで、続けてくれ給え」
「そっか、ならいいんだ」
しかし、的李がすぐにいつも通りの表情に戻ったため、オセはあまり気に留めずに話を続ける。
「で、私はその異才ってのをよく知らないんだけど、言葉の響き的に常人は持ってない、特殊な力か何かなんでしょ?」
「ああ。その中で、俺は重力操作の異才持ちだ。現に今、俺は魔力使ってねえのに浮いてんだろ」
「本当だ、魔力反応こそあれど使ってる感じはない......で、その中でってことは、その異才?ってのはいくつかあるのね」
「まあな。異才ってのは基本的に、何かしらの条件をクリアしてる奴が本人の意思に関係なく持ってるもんなんだ。んで、その条件ってのが、ユグドラシルの種子......あの黄色い宝石みたいなやつな、あれが体ん中にあること」
「え、そんな感じなのね!?なんかもっとあるのかと思ってたわ......」
......宇宙樹·ユグドラシルの種子......天界にある宇宙樹に成る木の実で、そこそこ濃い神気を秘めた謎の多い物体。その"果実"の中にある宝石のようにきらきらした黄色の石が、オセの言う"種子"である。
「フレアリカの嬢ちゃんの体ん中にもあるんだろ?今んとこフレアリカに特殊能力とか使えてる感じはないが、いつかはっきり"使える"時が来るかもな......っつーか、来るんだろうな」
「フレアリカに......」
フレアリカの体内に埋まっている......正確には、フレアリカの体内で"種子"が心臓と同じ役割を果たしているらしい。が、フレアリカ本人はなんの違和感もなさそうに過ごしている。
"種子"はそれ自体には害はなく、むしろ人体の欠けた部分や抜け落ちてしまった能力を補ったり回復させたりする、更には、常軌を逸した性能の特殊能力......異才を付与する事ができる、人類や悪魔、天使などにとって+の力を与えてくれる凄い物、という事になる。
そんな事実を目の当たりにし、改めて聖火崎と的李は"種子"、そしてその大本である"宇宙樹"の凄さを実感した。
「宇宙樹の種子......なんかよくわかんないけど、とにかくあれには凄い作用があるってことよね」
「フレアリカの様子を見ていて薄々そうとは思っていたから、今更大した驚きもないのだよ」
聖火崎は何処か感心したようにうんうんと頷きながらそう言い、的李は表情1つ変えずにいた。
「......にしても、俺らがあんな変なとこに閉じ込められてたってくらいで、こっちじゃ特に何も起こってなさそうだな」
「そうね......」
表立った動きは、現実世界の日本では特にない。
そう思った一同は、とりあえず人目を避けて近くのビルの屋上に降り立った。
「てゆーか、私達があの変なとこに閉じ込められてから1日経ってたのね......」
「俺が入った時はもーちっと明るかったんだが......」
そんな事を言いながら聖火崎とオセが屋上に着地した頃、
「......ん?何だこの匂い、」
「あ、あれじゃないかな?」
或斗による飛行魔法が解かれ地面に足を着いた望桜がふとそれに気づき、瑠凪はその匂いの発生源と思しき謎の煙が立ち上っている方を指さしてそう言った。
「あー、だな。火事かなんかか......って、ん?なんか光ってんのがめっちゃ高速でピュンピュン飛んでんな......」
瑠凪が指さす先に視線を移した望桜はそう呟いて、
「ん?発光体が高速で飛んでる?」
もう一度今見たものを口に出して再確認する。
「望桜......それってもしかして......」
それに対して望桜の中で何かが引っかかったのを察して、瑠凪は望桜の横に並んで件の空の方を眺めながらそう呟く。
「「葵雲!?」」
「あー、あの光ってんのはアスモデウスの野郎か......」
「戦ってる、っぽいわね。見た感じ」
瑠凪と望桜の声に反応したオセと聖火崎もまた、それぞれ思った事を言いながらそちらに視線を向ける。
「私、援護に行ってくるわ」
「んじゃ、俺はこっちにいる奴らの護衛しとくわ。ルシファーと望桜は戦力として期待できるほど強くねえし、奈津生ともう1人の嬢ちゃんはそもそも戦えねえんだろ。ベルフェゴールとアスタロトは治ってきてはいるがまだ手負いと病み上がりの状態だし、いざという時の戦力として俺がいりゃまあ大抵の奴は大丈夫だろ」
「OK。任せたわよ」
互いに目配せした後、聖火崎は葵雲らしき人物が戦っている方へと飛び立ち、オセはそれを見送った後に、
「おーい、お医者様よぉ」
『んん......なんじゃオセ......こんな朝っぱらから......』
「今そっち昼だろ」
ウィズオート皇国東方にあるヴァルハラ独立国家内の母屋......ヴァルハラ·グラン·ギニョルに居る下界1(と謳われる)医者·マモンに、スマホとテレパシーを用いて電話をかけた。
昼寝でもしていたのか、若干掠れた声で応答したマモンに軽く突っ込みながら返事をして、
「こっちで色々あって確実に怪我してんのが3人......あと、一応検査して欲しいのが5人ほどいるんだが......」
と、後ろで寝転がったり話したりしている望桜達の方をちらと見た後に、マモンにそう返した。
『わかった......ぁふ、1分ほどかかるがよいかの?場所は逆探知で調べたから、言わなくても大丈夫じゃぞ』
「へえへえ、仕事が早ぇこった」
『迅速な行動が鍵の仕事じゃからな。ではまた』
「おう」
会話の合間に聞こえてくる音からマモンが既に準備を開始しているのを理解して、オセは静かに電話を切った。
─────────────To Be Continued──────────────
「わっ」
「きゃっ」
「え、何これ、」
ガルダによる強制送還を受けて、先程まで戦っていたり結界の中で会議的なものをしていたり、はたまた一部だが意識を失って地面で伸びていた一同は、ポーンととある場所に放り出された。
......その場所は東京スカイツリー上空、地上から約700mの寒風吹き荒れる真冬の夜空である。
「待て、俺飛べねぇんだけどやばいやばいやばい!!」
「えと、これ、どうなって......」
「え、たか、こわ、うえぇ......」
望桜、瑠凪、帝亜羅の3人はいきなり結界を解かれただけでなく、気づいたら異空間から脱出できている事に嬉しさよりも戸惑いを隠せないままで、
「ここ、上空じゃない......割と高いし......寒っ、ちょ、これ......」
先程まで鐘音と鎬を削り合っていた聖火崎は、一周回って冷静だった。
「どうなってるのよおおおおおおおおおおおおお!!」
......強制送還魔法直後の落下が始まり加速し出す前の、一瞬だけ。
「五月蝿い!!てめぇの甲高い猿みてぇな声が耳に響いてキーンとなって不愉快だ!!」
聖火崎の悲鳴(?)に対してオセが不満を顕に文句を言い、その後ろで、
「っは、え?」
「なっ、目が覚めたらいきなりこれってどういう状況なんだい!?」
「ちょ、なにこれなにこれぇ!?」
今の今まで意識を失っていた或斗、的李、梓の3人が目を覚まし、各々何かしらを口にしながら重力に従って落下していく。
「高い高い高い怖い怖い怖いたかこわたかこふっ......」
「よく分かんないけどとりまてぃあ落ち着いて!!......って、は......?」
そんな中、パニックになって失神しかけている帝亜羅を落ち着かせるべく、数メートル離れているところから梓が声をかけようとした。が、その視界の大部分を占める帝亜羅の後ろに見えたとある現象と、同時に自身を襲った感覚に思わず声を上げた。
「た、聖火崎さんと、誰かわかんないけど......ひ、人が浮いてる......?それに或斗さん、翼が、黒い翼が背中から生えてる!!一体どういうことよ!?ってか私も浮いてる!?わ、何この浮遊感めちゃくちゃ気持ち悪いんだけど!!」
聖火崎とオセが各々法術や能力を使って宙に浮き、或斗の背中からは黒い翼が生えており、それを用いて空を飛んでいる。
さらに、自身も空に浮いている。恐ろしくふわふわして気持ち悪い浮遊感だが、不思議と不快ではない。そんな感覚に身を任せたまま、梓はその場で騒ぎ立てる事しかできなかった。
「梓ちゃん......ごめんね、驚かせちゃって。でも、とりあえず今は、その場でじっとしてて」
「は、はあ......」
瑠凪が或斗に抱えられながらそう申し訳なさそうに謝ると、梓は今の現状やらなぜ宙に浮けているのか等の色々を理解せぬまま、小さく頷いた。
「主様、苦しかったりしないですか?大丈夫ですか?」
「ああ、うん。大丈夫......おわっ、」
「っ、すみません、風が......」
或斗からの問いかけに、風にあおられながらも瑠凪はさらりと答える。
「でも、ふふ......良かったです、とりあえず全員無事みたいで......」
そんな主人の様子を見ながら、或斗は含羞みながら満足そうに呟いた。
「それはこっちが言いたいよ、或斗。痛かったでしょ?大丈夫?それと......今は戻ってるし、みんなは触れないけど......髪の色とかも......」
まだ先程受けたダメージが響いているのか、若干眉間に皺を寄せながら笑う或斗に対して、それを気遣いつつ或斗の頭に自身の手を軽く乗せて撫でつけ、そう訊ねかける瑠凪。
瑠凪のそんな気遣いに対する或斗の返答は、しっかりとした、芯のある真っ直ぐなものだった。
「大丈夫です。あれは俺自身の問題ですし、過ぎたことですから。......一緒に居た望桜さんや聖火崎......皆が、いい意味で周囲に興味がない人達で良かったです」
「ほんとだね。......でも、後で聞いてくるとは思うよ」
主人の3割型ぐらいは杞憂な不安感に、或斗は少しだけ虚ろな表情を浮かべてこう答える。
「その時は............主様、」
「大丈夫、その時は僕がお前を護ってあげる」
先に待っているかもしれない事に対する従者の不安に、今度は主人である瑠凪がはっきりと返事をしてやった。
「あ、ありがとうございます!!っへへ、一生ついていきます、大好きです愛してます主様~♪」
「普通なら引き剥がす所だけど......ここで引き剥がしたら僕落ちちゃうし、元気出たんならよかった!」
「んふふ~♪」
「......仲、いいんだな。あの2人......」
「......」
「あ?なんだ?」
そんな3人の様子を近くで眺めていたオセの肩を的李が軽くとんとんとん、と叩き、
「..今、この状況について軽くでいいから説明してくれないかい?」
唐突にそう問いかけた。
「見りゃわかんだろ。脱出できたけど出入口がこんな高ぇ所にあったから、地面にひゅーっと落ちるところだったんだよ」
「いやそこじゃなくて、どうやって脱出できたのかを聞いているのだよ。あれから、どうやってここまで......」
オセの雑な説明に、先程鐘音に撃たれた所を押さえながら、的李は少し不満げに眉を顰めながら言い返す。
「あ、それ私も気になってたのよ!鐘音......ベルゼブブと戦ってたら、いきなり外に出たからびっくりしたわ!!」
聖火崎も的李の言い草に便乗しながら、2人の横から首を突っ込んでくる。
「あー、それはだな......えーっと......」
オセはその2人からの問に対して、すぐにすっと答える事ができなかった。
何故なら、あの状況......変な異空間に閉じ込められた状態から、どうやって出てきたのか自分でもよく分かっていないからだ。
敵であるはずのガルダが、強制的に外に出す魔法を使って出した。というのは理解できているのだが、肝心の"ガルダが異空間から出してくれた理由"が分からないのだ。
よく分からないタイミングで、さっと"貴方達を出してあげる"と言ってきたのだ。だが、人が変わったように......ではなく、ガルダ本人には一応、あの行為を躊躇するような素振りはあった。
ただ、やはり明らかにおかしなタイミング......自分達が絶対的優位に立っていて、なおかつ上層部に手綱を握られていて目標を達成しないと自分達の命が危ういという状況で、あの言動。
とにかく、オセにとってガルダの"あの行動"は、あまりに唐突で訳が分からない物だったために、すぐに答えられなかったのだ。
無論、あれもガルダがオセ達を騙すために打った芝居であるかもしれないから、というのも理由の1つである。
「あー............んっとなぁー......あ、」
そんなオセの答えは、
「あんたらに言ってなかったっけ?俺、異才持ちなんだわ......あれ、言ってなかったかーぁ、悪ぃ悪ぃ......」
こんな風に、苦笑交じりの、いかにも胡散臭いものになってしまった。
「......?」
「......!」
そしてその返答に対する反応は、三者三様であった。
聖火崎は「何それ?異才?」と不思議そうに首を傾げているが、的李は何が思い当たる節があるのか、目を少し見開いて驚いたような表情を浮かべている。
「ベルフェゴール......お前、何か知ってんな?」
オセも的李の反応を見逃さなかったようで、そちらに視線を向けて少し怪訝そうに訊ねた。
「ああ、と......前に、少し聞いたことがあった程度なのだよ。だから気にしないで、続けてくれ給え」
「そっか、ならいいんだ」
しかし、的李がすぐにいつも通りの表情に戻ったため、オセはあまり気に留めずに話を続ける。
「で、私はその異才ってのをよく知らないんだけど、言葉の響き的に常人は持ってない、特殊な力か何かなんでしょ?」
「ああ。その中で、俺は重力操作の異才持ちだ。現に今、俺は魔力使ってねえのに浮いてんだろ」
「本当だ、魔力反応こそあれど使ってる感じはない......で、その中でってことは、その異才?ってのはいくつかあるのね」
「まあな。異才ってのは基本的に、何かしらの条件をクリアしてる奴が本人の意思に関係なく持ってるもんなんだ。んで、その条件ってのが、ユグドラシルの種子......あの黄色い宝石みたいなやつな、あれが体ん中にあること」
「え、そんな感じなのね!?なんかもっとあるのかと思ってたわ......」
......宇宙樹·ユグドラシルの種子......天界にある宇宙樹に成る木の実で、そこそこ濃い神気を秘めた謎の多い物体。その"果実"の中にある宝石のようにきらきらした黄色の石が、オセの言う"種子"である。
「フレアリカの嬢ちゃんの体ん中にもあるんだろ?今んとこフレアリカに特殊能力とか使えてる感じはないが、いつかはっきり"使える"時が来るかもな......っつーか、来るんだろうな」
「フレアリカに......」
フレアリカの体内に埋まっている......正確には、フレアリカの体内で"種子"が心臓と同じ役割を果たしているらしい。が、フレアリカ本人はなんの違和感もなさそうに過ごしている。
"種子"はそれ自体には害はなく、むしろ人体の欠けた部分や抜け落ちてしまった能力を補ったり回復させたりする、更には、常軌を逸した性能の特殊能力......異才を付与する事ができる、人類や悪魔、天使などにとって+の力を与えてくれる凄い物、という事になる。
そんな事実を目の当たりにし、改めて聖火崎と的李は"種子"、そしてその大本である"宇宙樹"の凄さを実感した。
「宇宙樹の種子......なんかよくわかんないけど、とにかくあれには凄い作用があるってことよね」
「フレアリカの様子を見ていて薄々そうとは思っていたから、今更大した驚きもないのだよ」
聖火崎は何処か感心したようにうんうんと頷きながらそう言い、的李は表情1つ変えずにいた。
「......にしても、俺らがあんな変なとこに閉じ込められてたってくらいで、こっちじゃ特に何も起こってなさそうだな」
「そうね......」
表立った動きは、現実世界の日本では特にない。
そう思った一同は、とりあえず人目を避けて近くのビルの屋上に降り立った。
「てゆーか、私達があの変なとこに閉じ込められてから1日経ってたのね......」
「俺が入った時はもーちっと明るかったんだが......」
そんな事を言いながら聖火崎とオセが屋上に着地した頃、
「......ん?何だこの匂い、」
「あ、あれじゃないかな?」
或斗による飛行魔法が解かれ地面に足を着いた望桜がふとそれに気づき、瑠凪はその匂いの発生源と思しき謎の煙が立ち上っている方を指さしてそう言った。
「あー、だな。火事かなんかか......って、ん?なんか光ってんのがめっちゃ高速でピュンピュン飛んでんな......」
瑠凪が指さす先に視線を移した望桜はそう呟いて、
「ん?発光体が高速で飛んでる?」
もう一度今見たものを口に出して再確認する。
「望桜......それってもしかして......」
それに対して望桜の中で何かが引っかかったのを察して、瑠凪は望桜の横に並んで件の空の方を眺めながらそう呟く。
「「葵雲!?」」
「あー、あの光ってんのはアスモデウスの野郎か......」
「戦ってる、っぽいわね。見た感じ」
瑠凪と望桜の声に反応したオセと聖火崎もまた、それぞれ思った事を言いながらそちらに視線を向ける。
「私、援護に行ってくるわ」
「んじゃ、俺はこっちにいる奴らの護衛しとくわ。ルシファーと望桜は戦力として期待できるほど強くねえし、奈津生ともう1人の嬢ちゃんはそもそも戦えねえんだろ。ベルフェゴールとアスタロトは治ってきてはいるがまだ手負いと病み上がりの状態だし、いざという時の戦力として俺がいりゃまあ大抵の奴は大丈夫だろ」
「OK。任せたわよ」
互いに目配せした後、聖火崎は葵雲らしき人物が戦っている方へと飛び立ち、オセはそれを見送った後に、
「おーい、お医者様よぉ」
『んん......なんじゃオセ......こんな朝っぱらから......』
「今そっち昼だろ」
ウィズオート皇国東方にあるヴァルハラ独立国家内の母屋......ヴァルハラ·グラン·ギニョルに居る下界1(と謳われる)医者·マモンに、スマホとテレパシーを用いて電話をかけた。
昼寝でもしていたのか、若干掠れた声で応答したマモンに軽く突っ込みながら返事をして、
「こっちで色々あって確実に怪我してんのが3人......あと、一応検査して欲しいのが5人ほどいるんだが......」
と、後ろで寝転がったり話したりしている望桜達の方をちらと見た後に、マモンにそう返した。
『わかった......ぁふ、1分ほどかかるがよいかの?場所は逆探知で調べたから、言わなくても大丈夫じゃぞ』
「へえへえ、仕事が早ぇこった」
『迅速な行動が鍵の仕事じゃからな。ではまた』
「おう」
会話の合間に聞こえてくる音からマモンが既に準備を開始しているのを理解して、オセは静かに電話を切った。
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【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
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田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
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金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
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※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
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