精霊宿る人々の有り様

ネミルラ

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① 怠惰な女王の有り様

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 千王国せんおうこくの王都〝清水しみず〟にある国立霊能高等学校こくりつれいのうこうとうがっこうに通い始めて四年目になる私、山代やましろ かえでは孤高な学校生活にすっかり慣れた。

 ある晴れた日のお昼休み、人気が無い中庭のベンチに座りながら、購買で手に入れたパンを食べていた私に「楓先輩、今日はここに居たんですか」って声をかけた二つ下の男の子、渡辺わたなべ あおいは嫌われ者の私に声をかける風変わりな千王国このくにの第二王子だ。
 なんで、蒼が変わり者なのか、それは私の異名に理由がある。怠惰な女王たいまん じょうおうっていう異名に……。


 それは12歳になった私が霊力れいりょくの高さを理由に進学した国立霊能高等学校このがっこうで付けられた蔑称。霊力の高さが最上位のAランクなのに勉学や交友に不真面目な態度が嫉妬なんかの陰口と共に広まったらしい。
 私自身、その蔑称は気に入っている。なんせ、最上位の霊力を持って生まれながら、他者ひとや社会の為に使わない私にピッタリの呼び名だから。

 霊力のランクは義務教育である初等学校で計測する際、A~Eに区分される。霊力の高さは後天的に変わらないって考えられているから、何度も計測する必要は無い。
 初等学校は言葉の読み書き・数字や計算方法・霊具れいぐの使い方など、生活に必要な常識を学ぶために6歳から12歳まで通う小~中規模の学校。
 初等学校は国民の生活水準を高める為に国民全員が受ける義務教育に該当する事から小さな村にも存在している。

 高等学校の入学条件は学校によって異なっているけど、共通しているのは初等学校を卒業している事だ。
 国立霊能高等学校このがっこうはお金持ちか、磨けば光る逸材が通う学校なんだけど、元々は武勇や精霊学せいれいがくを学ぶ為だけに作られた国立の教育機関だったらしい。
 一世紀以上前の話らしいんだけど、運営資金を増やす為に人脈を欲する貴族や商人を学生として迎え始めたらしい。その人たちが求める環境を整えた結果、経済や政治なんかの授業も充実しているらしい。

 高等学校は大きな都市に1校ずつある程度だから初等学校に比べて少ない。それは高等学校に通う学生が初等学校の5分の1程度だからなんだけど。その理由は、通わないってよりお金か才能が必要な高等学校には通えないって人が大半らしい。
 そんなすごい学校に霊力が高いって理由で入学した私が、勉学に不真面目な態度だったら、怠惰な女王って侮辱されて当然だ。
 それ以外に『霊力が高いからって学費を免除されているくせに授業をサボってる』なんて理由で嫉妬されてるんじゃないかなーとも思う。

 怠惰な女王の女王・・って蔑称は私の態度から名付けられたらしい。誰にも頭を下げない女性は女王の他に居ないって事から名付けられたそうな。
 上級生は自分より格上だけど同学年の生徒は等しい地位だって決まり事が国立霊能高等学校このがっこうにはあるけど、そんな形だけのルールを守っている人は殆どいない――と思う。上級生が下級生の貴族に頭を下げる――なんてことは珍しくないし。
 そんな環境で貴族とか先輩からの厚意を無下にする私の傲慢さが女王って呼ばれる所以らしい。
 権威に屈する人間って思われないなら、この蔑称は私の益になる。だから私はその蔑称に異を唱えない。
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