キョリとリセイ~恋人は愛の香り~

国府春学

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恋熱

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「熱い……」
 ふと、シェスリタがつぶやいて、ルートリヤの額に手を当てた。
「ルゥト、熱がある」
 気づいたことでフェータルヒュームの力が少し弱まったのか、シェスリタは身体を起こし、救急箱から解熱剤を探し出して、ルートリヤに口移しで飲ませた。

「すまなかった。すぐ、誰かに言って、氷を持ってこさせる」
「シェス、俺、仕事が……」
「無茶言うな、そんな身体で…俺のせいだ、本当にすまない」
 シェスリタが詫びたとき、ドアのほうで声がした。
「入りますよ」
「ヴェルロッド…」
「ルートリヤ様、今日は出勤しなくて大丈夫ですよ」
「え、何で……?」
 ルートリヤは飛び起きそうになったが、ひどい頭痛で再びベッドに沈んだ。
「今朝、シャルル様が訪ねていらっしゃったのです。士官学校の訓練を視察するついでに寄ったそうで。ルートリヤ様に会いたいとおっしゃって…」
 ヴェルロッドは主人の事情を察して止めたが、「よいではないか」と押し切られてしまった。

 シャルルはドアの近くまで来て、足を止めた。
「ルートリヤは、恋の病に冒されているようだね」
 少し考えた後、皇太子は言ったそうだ。
「シェスリタのことが整理できるまで、ルートリヤには休暇を与えることにする。
 私は公務でしばらく、国を離れるから」
 王宮警護を務める近衛隊はしばらく、演習の日々を送ることとなる。

「そんな…俺の、個人的な事情のために……」
 こめかみを押さえて、ルートリヤは呻く。
 治安のよい国だから許されているようなものだが、近衛隊の隊長ともあろうものが色恋沙汰を職務より優先するなんて……。とはいえ、皇太子の命とあっては聞かぬわけにもいかない。
「お二人のこと、案じて見守っていらっしゃるのでしょう」

「それはうれしいけど…聞かれちゃったよね、たぶん……」
 実の兄に恋人との睦言を知られた羞恥で、ルートリヤはシーツを頭の上まで引っ張り上げる。
「俺のせいで申し訳ない。熱が上がるから、ひとまずゆっくり休んで…それから考えよう」
 シェスリタはぽんぽん、とルートリヤの肩を叩いた。
「氷、取ってきますね」
 ヴェルロッドの足音が遠ざかっていくのを聞きながら、ルートリヤの意識は少しずつ眠りに溶けていった。
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