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寂しい
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結婚式は、二か月後に行われることに決まった。
全体の式をとる近衛隊は忙しくなり、ルートリヤは最近、屋敷に戻らない。
シェスリタもシェスリタで、新しい職について、日々覚えることでいっぱいだ。
今もルートリヤの家に居候しているが、屋敷の主は深夜に帰宅して早朝に出ていくので、最近顔を合わせていない。
起きて帰りを待っていよう、もしくは早く起きてキスの一つもしてやろうと思うのだが、シェスリタも疲れていて、結局眠ってしまうのだ。
「アイツは今朝、どんな顔してた? 具合悪そうじゃなかったか?」
朝食後、シェスリタはそばに控えていたヴェルロッドに尋ねた。
恋人の様子を使用人に訊くなんて、と一瞬ためらったものの、知りたい気持ちには勝てなかった。
「今朝も早くに慌ただしく出ていかれましたが、元気ですよ。皇太子様の結婚式を成功させたいと、楽しみにしてますからね」
「そうか……」
シェスリタはほっとした。
「ただ、シェスリタ様と過ごす時間をとれないことは、ご主人も嘆いてましたよ」
――シェスの顔、しばらく見てない気がする。元気かな。
相手も同じように気にかけていたらしい。
「……近くにいるのにな」
寂しい、と胸の内だけでつぶやいて、シェスリタは上着にそでを通した。
「シェスリタ? 顔色、悪いですよ。大丈夫ですか?」
書類の仕分け中、ふと手をとめたときに、顔を覗き込まれた。
「あっ…大丈夫。すまない、心配かけて」
相手は、年下の先輩だ。
年下といっても二つしか違わないのだが、シェスリタに仕事を教える教育係である。
名はティーヴァレイ、軽くはねたオレンジ色のショートヘアにネイビーの瞳をしている。
「もしかして、誰かさんのことを考えてたとか?」
「ちがっ」
図星を指されて、シェスリタは思わず飛び起きる。
その拍子に、書類を何枚か落としてしまった。
「本当かな?」
落ちた紙を拾って、ニヤッと笑うティーヴァレイ。
シェスリタは困惑して目をそらす。
こんなふうにからかわれるのは苦手だ。
特殊な身体に生まれたこともあって、人と接するのも得意ではなかった。
ルートリヤに出会って、友人になり、今のような関係を築くまでは。
訓練中はほとんど口をきかなくてもよい軍隊から、軽い雑談も許される職場に異動になって、最初は緊張していたのだが、人懐こい性格のティーヴァレイのおかげで、仕事に慣れつつあった。
「気になるなら、あとでいっしょに見に行きません? やることさっさと終わらせて、ね?」
提案され、シェスリタは浅くうなずいた。
全体の式をとる近衛隊は忙しくなり、ルートリヤは最近、屋敷に戻らない。
シェスリタもシェスリタで、新しい職について、日々覚えることでいっぱいだ。
今もルートリヤの家に居候しているが、屋敷の主は深夜に帰宅して早朝に出ていくので、最近顔を合わせていない。
起きて帰りを待っていよう、もしくは早く起きてキスの一つもしてやろうと思うのだが、シェスリタも疲れていて、結局眠ってしまうのだ。
「アイツは今朝、どんな顔してた? 具合悪そうじゃなかったか?」
朝食後、シェスリタはそばに控えていたヴェルロッドに尋ねた。
恋人の様子を使用人に訊くなんて、と一瞬ためらったものの、知りたい気持ちには勝てなかった。
「今朝も早くに慌ただしく出ていかれましたが、元気ですよ。皇太子様の結婚式を成功させたいと、楽しみにしてますからね」
「そうか……」
シェスリタはほっとした。
「ただ、シェスリタ様と過ごす時間をとれないことは、ご主人も嘆いてましたよ」
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相手も同じように気にかけていたらしい。
「……近くにいるのにな」
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「シェスリタ? 顔色、悪いですよ。大丈夫ですか?」
書類の仕分け中、ふと手をとめたときに、顔を覗き込まれた。
「あっ…大丈夫。すまない、心配かけて」
相手は、年下の先輩だ。
年下といっても二つしか違わないのだが、シェスリタに仕事を教える教育係である。
名はティーヴァレイ、軽くはねたオレンジ色のショートヘアにネイビーの瞳をしている。
「もしかして、誰かさんのことを考えてたとか?」
「ちがっ」
図星を指されて、シェスリタは思わず飛び起きる。
その拍子に、書類を何枚か落としてしまった。
「本当かな?」
落ちた紙を拾って、ニヤッと笑うティーヴァレイ。
シェスリタは困惑して目をそらす。
こんなふうにからかわれるのは苦手だ。
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