キョリとリセイ~恋人は愛の香り~

国府春学

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皇太子の結婚

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「ルートリヤ隊長、しばらくです」
「あぁ。ご苦労! 皇太子に挨拶に来たよ」
 ルートリヤは、城内勤務の知り合いに敬礼されて、朗らかに応える。

 数日前に帰国した皇太子の部屋に到着するまでに、幾度も足を止めることになった。
「ルゥト、顔が広いんだな」
「一応、偉い人だからね、俺」
 小声で言葉を交わし、ルートリヤは腰に両手を当てて威張って見せた。
「失礼いたします。近衛隊長のルートリヤであります」

 重厚な扉をノックして、ルートリヤは中に呼びかける。
「入りなさい」
 皇太子の許可が下りて、そばに控えていた侍従が扉を開けた。
「久しぶりだね、ルートリヤ。シェスリタもはじめまして」
 玉座にかけていた皇太子シャルルが笑った。

「うん。いろいろあったけど、すべてうまくいったので、任務に復帰できそうです」
 ルートリヤは、人払いした後も、形式的に跪いたまま報告した。
「それはよかった」

 シャルルは立ち上がって、ぽんぽんとルートリヤの肩を叩く。
 その親しげな様子を、シェスリタは当惑の面持ちで見ていた。
「シェスは明日から、城内の勤務に配属だっけ。これまでとは勝手が違うだろうけど、よろしく頼む」
「は。お役に立てますよう、誠心誠意努めます」
「そんなに固くならなくていい。君は私の弟…ルートリヤの、だいじな人なんだから」

 微笑している皇太子は、厳格な父王にあまり似ていない。
「近いうちに発表されることだが、私からも、先に伝えておきたいことがある」
 改まった様子でシャルルは言った。
「隣国の姫君、第三王女のカトリアーナ様と結婚することにしたよ」
「えっ」
 突然の吉報に、ルートリヤは目を大きくする。

「おめでとうございます、殿下」
 シェスリタのほうが先に、落ち着いた様子で祝福した。
「ありがとう。ルートリヤ、驚かせてすまないが、近衛隊にとっても忙しい日になると思うから…式当日の警護、頼んだよ」
「うん。もちろん!おめでとうシャルル!」

 ルートリヤは皇太子の手を取って祝った。
 ヴェルソナデル公国において、婚礼の儀を華やかに行うのは王家の者だけだ。その日は臨時の祝日となり、国民皆が花を持って通りに立つ。近衛隊の先導する四頭立ての馬車で、新郎新婦が都を巡り、人々は沿道でそれを見守る。

「陛下の結婚式のときは俺も生まれてなかったから、初めてだなぁ」
「ここ二十数年、国内で結婚した王族はいないからね」
 他国に嫁いだ姫の場合は、相手国で式典を行うためだ。
「結婚して世継ぎが生まれるころには、私も王になるかもしれない。
 父もそろそろ、隠居したいと言っていたからね」
 そう遠くない未来を語るシャルルを、ルートリヤはまっすぐ見つめている。
「そのときは、俺たちが、ずっとそばで守るから」
「……ありがとう」
 皇太子は、二人を頼もしげに見た。
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