没落令嬢の華麗なる狂詩曲 〜奴隷堕ちした令嬢がハーレムを築くまでの軌跡〜

中原星道

文字の大きさ
1 / 41
第一幕 黄昏のエイレンヌ

プロローグ 〜ケモノたちの狂宴

しおりを挟む
 少女はその日、十四歳の誕生日を迎えた――

 高潔な貴族のひとり娘である少女は、多くの者から祝福と贈り物を受けた。
 少女はその中でも母から贈られた首飾りネックレスをいたく気に入り、コの字型をした乳白色の宝珠がトップに付いたその首飾りネックレスをその場で身につけた。

 ――きっとそれは貴女を護ってくれるわ
 
 若く美しい母は慈愛の笑みを浮かべて言った。
 そんな母の美しさを存分に受け継いだ少女は、うれしそうにうなずいた。

 豪奢ごうしゃな装飾に彩られ贅沢な食事に囲まれた宴――

 優しい両親と少女を崇拝する家臣たち――

 何不自由の無い暮らしを送ってきた少女にとって、その日は最高の誕生日となる――

 はずだった――

 しかし、そんな幸せな時間は突如鳴り響いた群衆の咆哮と断末魔の悲鳴によって脆くも崩れ去った。

 当時、アルセイシア王国では大規模な農民叛乱が各地で勃発しており、その戦火は王国北部にあるこの地にもついに及んだのだ。

 圧倒的な数の暴力によって守備兵は次々と討ち倒され、居城は焼かれ、宴席にいた少女たちはなすすべも無く暴徒と化した農民たちによって荒々しくねじ伏せられ、捕縛されたのだった。

 松明たいまつの炎の様に燃え盛り辺りを怪しく照らし出す城。荒縄で後ろ手に縛られ、城の前にある広場に連れ出された少女たちに待っていたのは、敗者に対する野蛮な蹂躙じゅうりん劇だった。
 
 ――犯せ! 犯せ! 犯せ!
 ――殺せ! 殺せ! 殺せ!
 
 群衆たちが狂った様にシュプレヒコールを叫ぶ中で、いつも少女の身の回りの世話をしてくれていた女中メイドたちはその場で犯され、家臣たちは切り株を利用した粗末な処刑台で次々と首をねられた。

 ――これは悪夢だ……夢なら早く醒めて

 少女は膝をガクガクと震わせながら祈った。
 しかし、現実は無情にも少女を血気にはやる群衆の前に突き出した。

 少女のすぐ側には無骨な両手斧を携えたスキンヘッドの大男が立ち、彼の足下には処刑された男たちの首が無造作に積み上げられていた。
 つい先程まで少女に美辞麗句びじれいくを並び立ててその美しさを讃えていた男たちは、今はいろの失せた瞳を虚空に漂わせている。

 死を間近に感じた少女はそこで失禁した。
 
 それは恥辱であった。
 しかしそのような状況にありながら、少女は涙と鼻水でくしゃくしゃとなった顔を周囲に向け、彼らをののしった。

 そんな健気な少女の姿に、群衆は驚き怯んだ。中には少女に同情を抱いた者もいたかもしれない。

 叛乱軍のリーダーらしき男は迷い、隣に立つ者に意見をうかがった。
 その者は獣をかたどった面で顔を覆っているため性別すらもわからずその表情もうかがい知ることは出来ないが、少女はそれを一目見た途端、なぜかはわからないがゾワリとまとわりつくような悪寒に襲われ、背中に震えが走るのだった。
 
 しばらくして獣面の者の助言を受けた男は、群衆に向けて少女の罪を朗々とあげつらった。

 それは、民を一切救済せずに重税を課して苦しめる領主を少女がいさめなかったこと――
 そして、民が困窮しているという現状を少女は知ろうともしなかったこと――

 結果、少女の有利に傾きかけた場の空気はくつがり、再びシュプレヒコールが響き渡った。

 ――犯せ! 犯せ! 犯せ!
 ――殺せ! 殺せ! 殺せ!

 こうなると、もう少女にはなすすべが無かった。

 処刑執行人であるスキンヘッドの男が、斧を引きずりながら少女へと近づく。

 そして男は少女の服の襟口を掴むとそれを一気に引きちぎった。
 乳白色の宝珠が付いた首飾りネックレスが弾け出し、少女の豊満で瑞々しい乳房が露出されると、群衆のボルテージは最高潮に達した。

 少女は恥辱に悶えながら、それでも猛然と男に罵詈雑言と唾を吐きつけた。

 一瞬、その場がしんと静まり返る。
 その静寂を打ち破る様に、男の大きな手のひらが少女の左頬を殴打した。

 少女の顔面は激しく揺さぶられ、鼻と口の端から鮮血が滴り落ちる。

 朦朧もうろうとする意識の中、それでも少女は顔を上げて男を精一杯睨みつけた。

 と、その時だった――

 少女の顔からぽたりとこぼれ落ちた一滴の血が乳白色の宝珠に滴ると、それは突然まばゆいばかりの閃光を放ったのだった。

 ――一体何が起こったの?

 意識が薄れゆきがくりと体が崩れてゆく中で、少女は再び獣面の者を視界に捉えていた。
 仮面をまとっているはずなのに、その者はなぜかわらっているように見えた。

 そこで少女の意識はプツリと完全に途切れた――

 そして次に少女が目を覚ました時、彼女は知らない町に奴隷として売られていたのだった……
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

処理中です...