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第零章 砕けた氷
第五話 帰還
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私が憧れの宵月先輩の通っている高校を見つけた時、それはそれは喜んだものです。
あの宵月先輩と同じ屋根の下で学べる。
宵月先輩の、あの苛烈な炎の輝きを身近で見ることが出来る。
それは、宵月先輩横に立てるような魔術師になりたいと思っている私には大チャンスでした。
でも、彼女の通う秋風武装学園の入学試験には実技が含まれることを知った時、浮かれていた私は一気に地の底に叩きつけられたかのようなショックを受けました。
もっとも、不運なことに、私には再びチャンスが訪れたのですが。
秋風武装学園の生徒も多数参加した国防軍のD-3地区解放作戦の失敗。
ほんとはこんな風に思っちゃいけないのだろうけど……それでも、この知らせは私にとっては間違いなく吉報でした。
2022年 4月18日 D-3地区近郊・集合地点 Side:宵月瑠奈
その後、私たちは敵と遭遇することなく、無事にD-3地区から離脱することに成功した。
ただ、氷華はかなり疲れているみたいで歩くことすらかなり辛そうだ。
……Cクラスの魔術師が、1時間もの間ずっと索敵魔術を使い続けていたのだ。
そんなことをすれば、魔力の元となる生命力が尽きてしまうのも致し方あるまい。
「氷華、あとちょっとだから頑張って」
「はい……」
今、私は背中にM4カービンを背負っているし、右手には例の大剣を持っているので、残念ながら彼女を助けることは出来ない。
出来るのは、彼女を励ましてやることくらいだ。
……こういう時、自分の無力さがいやになる。
火葬屋だの、火属性魔術師の到達点の一つだの持ち上げられているが、私に出来ることは人を焼き殺すだけ。
頑張る後輩の1人も助けてやれない。
治癒魔術や本物のテレポートが使えれば……。
「氷華、着いたわ。お疲れ様」
「やっと……着きましたか」
「えぇ」
私たちの目の前には、国防軍の輸送防護車とその輸送防護車の外でタバコを吸っている1人の若い男が居た。
彼は迷彩服を着ており、腰にはホルスターに収納されている9mm拳銃のグリップの一部が見える。
私たちの姿を見るや、彼はタバコを地面に投げ捨て、近寄ってくる。
「おう、また大物を取ってきたな。ソイツを寄越しな。俺がこの車に積んでおいてやる」
「ありがと、大宮二等兵。いつも大きい鹵獲品ばかりで悪いわね」
そう言いながら、私は彼に大剣を手渡す。
彼は、それを受け取ると車内へと運ぶ。
「別に良いってことよ。そんなことより、お前らも早く乗りな。火葬屋様の連れがお疲れのようだしな」
「えぇ、そうさせて貰うわ。氷華、肩を貸すから行きましょう」
「あ……わざわざそんな」
「いいのよ、貴女はちゃんと頑張ったんだから。ほら行くよ」
私が、彼女に"頑張った"と言った瞬間、氷華は笑みを浮かべていた。
喜んでもらえたなら何よりだ。
私は、氷華の腕を肩にかけて、肩を組む。
そして、私たちはゆっくりと輸送防護車へと近づき、車に乗り込む。
「よし。んじゃ、学園まで送って行くぞ」
「よろしく」
そうして私たちは、少し時間がかかったが、無事に学園へと帰ることが出来た。
あの宵月先輩と同じ屋根の下で学べる。
宵月先輩の、あの苛烈な炎の輝きを身近で見ることが出来る。
それは、宵月先輩横に立てるような魔術師になりたいと思っている私には大チャンスでした。
でも、彼女の通う秋風武装学園の入学試験には実技が含まれることを知った時、浮かれていた私は一気に地の底に叩きつけられたかのようなショックを受けました。
もっとも、不運なことに、私には再びチャンスが訪れたのですが。
秋風武装学園の生徒も多数参加した国防軍のD-3地区解放作戦の失敗。
ほんとはこんな風に思っちゃいけないのだろうけど……それでも、この知らせは私にとっては間違いなく吉報でした。
2022年 4月18日 D-3地区近郊・集合地点 Side:宵月瑠奈
その後、私たちは敵と遭遇することなく、無事にD-3地区から離脱することに成功した。
ただ、氷華はかなり疲れているみたいで歩くことすらかなり辛そうだ。
……Cクラスの魔術師が、1時間もの間ずっと索敵魔術を使い続けていたのだ。
そんなことをすれば、魔力の元となる生命力が尽きてしまうのも致し方あるまい。
「氷華、あとちょっとだから頑張って」
「はい……」
今、私は背中にM4カービンを背負っているし、右手には例の大剣を持っているので、残念ながら彼女を助けることは出来ない。
出来るのは、彼女を励ましてやることくらいだ。
……こういう時、自分の無力さがいやになる。
火葬屋だの、火属性魔術師の到達点の一つだの持ち上げられているが、私に出来ることは人を焼き殺すだけ。
頑張る後輩の1人も助けてやれない。
治癒魔術や本物のテレポートが使えれば……。
「氷華、着いたわ。お疲れ様」
「やっと……着きましたか」
「えぇ」
私たちの目の前には、国防軍の輸送防護車とその輸送防護車の外でタバコを吸っている1人の若い男が居た。
彼は迷彩服を着ており、腰にはホルスターに収納されている9mm拳銃のグリップの一部が見える。
私たちの姿を見るや、彼はタバコを地面に投げ捨て、近寄ってくる。
「おう、また大物を取ってきたな。ソイツを寄越しな。俺がこの車に積んでおいてやる」
「ありがと、大宮二等兵。いつも大きい鹵獲品ばかりで悪いわね」
そう言いながら、私は彼に大剣を手渡す。
彼は、それを受け取ると車内へと運ぶ。
「別に良いってことよ。そんなことより、お前らも早く乗りな。火葬屋様の連れがお疲れのようだしな」
「えぇ、そうさせて貰うわ。氷華、肩を貸すから行きましょう」
「あ……わざわざそんな」
「いいのよ、貴女はちゃんと頑張ったんだから。ほら行くよ」
私が、彼女に"頑張った"と言った瞬間、氷華は笑みを浮かべていた。
喜んでもらえたなら何よりだ。
私は、氷華の腕を肩にかけて、肩を組む。
そして、私たちはゆっくりと輸送防護車へと近づき、車に乗り込む。
「よし。んじゃ、学園まで送って行くぞ」
「よろしく」
そうして私たちは、少し時間がかかったが、無事に学園へと帰ることが出来た。
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