3 / 5
3 誘い
しおりを挟む
ー痛い
痛みとともに目覚めた。
地面が揺れている。
馬車に乗せられているようだ。手は縄で拘束されているが、足は自由だ。
周りを見回してみると、僕以外に人の姿はない。壺や剣、赤や青の宝石のついたアクセサリー、金貨等が乱雑に積み入れられている。
余程、あの男達は急いでいたようだ。
僕は、馬車の後ろから布を開け外を伺い見た。
馬車は絶え間なく走っているようだ。
人の姿は後ろには見えない。
どうやら、森の中のようだ。
馬車から飛び降りて逃げ込めそうなくらい鬱蒼とした茂みが沢山ある。
一旦馬車の中を見やり、金貨と宝石をポケットの中に詰め込む。剣を持って行こうかと思ったが、僕が持つには重たい。
剣で縄を切り、馬車の荷台から飛び降りる。
ードサッザザーザザーッ
飛び降りたというよりも、無様に転がり落ちたという方がお似合いだ。
全身が千切れたかと思うくらい痛いが、見つかってはいけない。
あの人に似た笑みを浮かべる男に捕まる訳にはいかない。
すぐに立ち上がり道端の茂みに飛び込みとにかく人に見つからないように走る。
一心不乱に走る。
ハァハァッ・・ハァッ・・
痩せきり、栄養も大して取っていない体では息がすぐに切れてしまう。
見つかりたくない
見つかりたくない
捕まりたくない!
自分の背丈より高い茂みの中に身を隠す。周囲の音を探るために、息を必死に整える。
スゥーーッ
一度大きく息を吸い、呼吸を止める。
ドクンッドクンッドクン
心臓の音がやたらと鳴り響く。
ドクン
ドクンッ
ドクン
聞こえるのは、自分の心臓の音だけだ。
人の声も、馬車の音も聞こえない。
ふーと安堵の息を吐く。
逃げ切れたようだ。
少し力が抜けたが、ひとまずこの茂みを歩いてかき分けていく。
ここにとどまっている程の勇気はない。
どこか安心できる所へ、夜のうちに見つけなければ。
茂みをかき分けて、とにかく進む。
所々、棘が生えていて腕に傷をつける。
だが、そんな些事に気を取られる訳にはいかない。
どうしよう。
どうしよう。
どこに向かえばいいか分からない。
誰か助けて。
ーでも誰が。
お兄ちゃん助けて。
ー本当は助けてくれないと知っている癖に。いつもあの人が牢屋の鍵を閉めて出ていくの見てた癖に。
帰りたいよ。
ーどこへ。
お父さん、お母さん。
ー目の前で死んだじゃないか。
あの人に、爪を剥がれ。
同じように腕を焼かれ。
目をくり抜かれ。
指を一本ずつ切られ。
歯を抜かれる姿を見たじゃないか。
お父さんが
お母さんが
壊れていく様を。
毎日毎日毎日毎日。
早く壊れてくれればと祈った日もあれば
僕を置いていかないでとみっともなく泣いた日もあった。
あの人さえいなければ
いなければ
いなければ
いなければ
いなければ!
僕は幸せだったはずだ!
憎い
憎い
憎い!
神様が平等などと誰が抜かしたんだ!
死ね死ね死ね死ね!
ーッ!!!!
足の裏に棘が刺さったようだ。
痛い。痛い。いたいよ。
痛みのせいで堰をきるかのように、胸にこみ上げてくる。
しにたい。
僕も死にたいよ。
ーでも、死ぬ勇気なんかないよ。
これからどうしよう。
帰る場所が欲しいよ。
僕にも帰る場所が欲しい。
お願いだから、僕に帰る場所を。
僕はどうしたらいいの。
縋るような足どりで、茂みをかき分け歩いていく。
茂みの終わりだ。
ーガサガサッ!
茂みから出てみると、先程まで夜だったように思うが太陽が昇っている。
どこかの屋敷にでてしまったのだろうか。
緑は綺麗に整備され、黄色や白の花が咲いている。
「ーっ!」
人がいたらどうしよう。
また、恐怖心が戻ってきた。
焦って、キョロキョロと周りを見渡す。
ピンク色に綺麗に咲き誇る花が見えた。
そしてその横には、ソファと机が置かれている。
明るさで眩んでいる目をよく凝らして姿を見ると思いがけない姿が見えた。
「うさぎ?」
グレー色の毛並みをしたウサギが座っている。驚きのあまり声が出てしまった。
僕の知っているうさぎよりは、かなりサイズが大きい。
僕と同じくらいの背丈のうさぎはふてぶてしい姿で、優雅に紅茶を飲みお菓子を食べている。
こちらを伺いみるような視線だ。
攻撃の意思は感じられない。
このうさぎは痛いことを僕にはしてこない?
あの人に似た目はしていない。
苦痛も
暴力も
嗜虐も
支配も
屈服も
加虐も
虐待を
楽しむ目ではないように見える。
だけど、面倒くさそうな目で見ている事は分かる。
どうしたらいいのか分からずにうさぎが紅茶を飲む姿を見つめていた。
うさぎは紅茶を飲み、カップをコトッと机に置き、口を開いた。
「こんにちは、少年。」
痛みとともに目覚めた。
地面が揺れている。
馬車に乗せられているようだ。手は縄で拘束されているが、足は自由だ。
周りを見回してみると、僕以外に人の姿はない。壺や剣、赤や青の宝石のついたアクセサリー、金貨等が乱雑に積み入れられている。
余程、あの男達は急いでいたようだ。
僕は、馬車の後ろから布を開け外を伺い見た。
馬車は絶え間なく走っているようだ。
人の姿は後ろには見えない。
どうやら、森の中のようだ。
馬車から飛び降りて逃げ込めそうなくらい鬱蒼とした茂みが沢山ある。
一旦馬車の中を見やり、金貨と宝石をポケットの中に詰め込む。剣を持って行こうかと思ったが、僕が持つには重たい。
剣で縄を切り、馬車の荷台から飛び降りる。
ードサッザザーザザーッ
飛び降りたというよりも、無様に転がり落ちたという方がお似合いだ。
全身が千切れたかと思うくらい痛いが、見つかってはいけない。
あの人に似た笑みを浮かべる男に捕まる訳にはいかない。
すぐに立ち上がり道端の茂みに飛び込みとにかく人に見つからないように走る。
一心不乱に走る。
ハァハァッ・・ハァッ・・
痩せきり、栄養も大して取っていない体では息がすぐに切れてしまう。
見つかりたくない
見つかりたくない
捕まりたくない!
自分の背丈より高い茂みの中に身を隠す。周囲の音を探るために、息を必死に整える。
スゥーーッ
一度大きく息を吸い、呼吸を止める。
ドクンッドクンッドクン
心臓の音がやたらと鳴り響く。
ドクン
ドクンッ
ドクン
聞こえるのは、自分の心臓の音だけだ。
人の声も、馬車の音も聞こえない。
ふーと安堵の息を吐く。
逃げ切れたようだ。
少し力が抜けたが、ひとまずこの茂みを歩いてかき分けていく。
ここにとどまっている程の勇気はない。
どこか安心できる所へ、夜のうちに見つけなければ。
茂みをかき分けて、とにかく進む。
所々、棘が生えていて腕に傷をつける。
だが、そんな些事に気を取られる訳にはいかない。
どうしよう。
どうしよう。
どこに向かえばいいか分からない。
誰か助けて。
ーでも誰が。
お兄ちゃん助けて。
ー本当は助けてくれないと知っている癖に。いつもあの人が牢屋の鍵を閉めて出ていくの見てた癖に。
帰りたいよ。
ーどこへ。
お父さん、お母さん。
ー目の前で死んだじゃないか。
あの人に、爪を剥がれ。
同じように腕を焼かれ。
目をくり抜かれ。
指を一本ずつ切られ。
歯を抜かれる姿を見たじゃないか。
お父さんが
お母さんが
壊れていく様を。
毎日毎日毎日毎日。
早く壊れてくれればと祈った日もあれば
僕を置いていかないでとみっともなく泣いた日もあった。
あの人さえいなければ
いなければ
いなければ
いなければ
いなければ!
僕は幸せだったはずだ!
憎い
憎い
憎い!
神様が平等などと誰が抜かしたんだ!
死ね死ね死ね死ね!
ーッ!!!!
足の裏に棘が刺さったようだ。
痛い。痛い。いたいよ。
痛みのせいで堰をきるかのように、胸にこみ上げてくる。
しにたい。
僕も死にたいよ。
ーでも、死ぬ勇気なんかないよ。
これからどうしよう。
帰る場所が欲しいよ。
僕にも帰る場所が欲しい。
お願いだから、僕に帰る場所を。
僕はどうしたらいいの。
縋るような足どりで、茂みをかき分け歩いていく。
茂みの終わりだ。
ーガサガサッ!
茂みから出てみると、先程まで夜だったように思うが太陽が昇っている。
どこかの屋敷にでてしまったのだろうか。
緑は綺麗に整備され、黄色や白の花が咲いている。
「ーっ!」
人がいたらどうしよう。
また、恐怖心が戻ってきた。
焦って、キョロキョロと周りを見渡す。
ピンク色に綺麗に咲き誇る花が見えた。
そしてその横には、ソファと机が置かれている。
明るさで眩んでいる目をよく凝らして姿を見ると思いがけない姿が見えた。
「うさぎ?」
グレー色の毛並みをしたウサギが座っている。驚きのあまり声が出てしまった。
僕の知っているうさぎよりは、かなりサイズが大きい。
僕と同じくらいの背丈のうさぎはふてぶてしい姿で、優雅に紅茶を飲みお菓子を食べている。
こちらを伺いみるような視線だ。
攻撃の意思は感じられない。
このうさぎは痛いことを僕にはしてこない?
あの人に似た目はしていない。
苦痛も
暴力も
嗜虐も
支配も
屈服も
加虐も
虐待を
楽しむ目ではないように見える。
だけど、面倒くさそうな目で見ている事は分かる。
どうしたらいいのか分からずにうさぎが紅茶を飲む姿を見つめていた。
うさぎは紅茶を飲み、カップをコトッと机に置き、口を開いた。
「こんにちは、少年。」
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる