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最強厨の覚醒()
その1
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-2028年 10月 日本 東京-
ツツ……と、背中を汗が滴る。
季節はもう秋、暑さを感じているわけじゃない。原因は、今、僕の手の中にあるモノだ。
ゴクリ、と喉が鳴る。
否応にも心臓が拍動する。
「ハァ、ハァ……。」
覚悟を決めて、両手に力を込める。
金属特有の冷たい感触が喉から伝わる。
刃渡り数センチの凶器は、僕の震えをそのまま伝えてくる。
何もいいことが無かった。
好きな人には彼氏がいたし、成績は中の下で、運動もできない。家族も無関心で、ただ、空虚だった。そんな僕でも、異世界に転生して、チート能力を手に入れられれば、きっと……。
既にビフレストを起動し、「earth grid」をいつでも開始できる状態だ。このまま喉を貫き、「earth grid」を起動すれば、全ては完了する。
「や、やってやる……。やってやるんだ、この、僕が!」
恐怖を抑え込み、喉を一気に貫いた。
「ガ、ガはァッ!」
痛い、痛い痛い痛い!
熱い、喉が熱い。
息が、出来……。
覚悟なんて関係なく、想像を絶する苦しみで、意識が薄れそうになる。
「ヒュ、ガヒュッ。」
痛みで霞む意識の中、「earth grid」を起動させる。
瞬間、視界のすべてが、中世の街並みに囲まれる。
いつもはGAME STARTと表示される箇所に、見慣れない文字が浮かんでいた。
「望んだもの、受け入れたもの、あなたはどっち?」
そして目の前にTouchと文字が浮かんだ。
僕は意味もわからぬまま、消えゆく意識の中で死に物狂いで拳を叩きつけた。
そして、僕の意識は完全に消失した。
ツツ……と、背中を汗が滴る。
季節はもう秋、暑さを感じているわけじゃない。原因は、今、僕の手の中にあるモノだ。
ゴクリ、と喉が鳴る。
否応にも心臓が拍動する。
「ハァ、ハァ……。」
覚悟を決めて、両手に力を込める。
金属特有の冷たい感触が喉から伝わる。
刃渡り数センチの凶器は、僕の震えをそのまま伝えてくる。
何もいいことが無かった。
好きな人には彼氏がいたし、成績は中の下で、運動もできない。家族も無関心で、ただ、空虚だった。そんな僕でも、異世界に転生して、チート能力を手に入れられれば、きっと……。
既にビフレストを起動し、「earth grid」をいつでも開始できる状態だ。このまま喉を貫き、「earth grid」を起動すれば、全ては完了する。
「や、やってやる……。やってやるんだ、この、僕が!」
恐怖を抑え込み、喉を一気に貫いた。
「ガ、ガはァッ!」
痛い、痛い痛い痛い!
熱い、喉が熱い。
息が、出来……。
覚悟なんて関係なく、想像を絶する苦しみで、意識が薄れそうになる。
「ヒュ、ガヒュッ。」
痛みで霞む意識の中、「earth grid」を起動させる。
瞬間、視界のすべてが、中世の街並みに囲まれる。
いつもはGAME STARTと表示される箇所に、見慣れない文字が浮かんでいた。
「望んだもの、受け入れたもの、あなたはどっち?」
そして目の前にTouchと文字が浮かんだ。
僕は意味もわからぬまま、消えゆく意識の中で死に物狂いで拳を叩きつけた。
そして、僕の意識は完全に消失した。
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