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最強厨の覚醒()
その2
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次に目が覚めると、僕は一面が真っ白の世界に浮かんでいた。
「これは、成功したのか!」
噂通りの光景に、僕は思わず叫んだ。
そしてこの後には確か……。
ヴォン
ブラウン管が点灯するような音を立てて、文字だけのウィンドウが現れた。
「あなたの名前を教えてください。」
望みが叶ったことを実感して、溢れ出しそうな喜びを抑えて僕は答えた。
「佐藤 翼だ。」
「能力を一つだけ会得できます。何にしますか?」
その答えは既に決めていた。
昔からよくある妄想だ。
何か一つだけ願いが叶うなら、何を望むか。
そんなもの、決まっている。
「能力を生み出す能力だ。」
そう、願い事を増やせば、無限に叶えることが出来る!
「了解しました。では転送開始します。」
「え、いいの……?」
横紙破りなこの能力が承認され、拍子抜けしてしまった。
そうして惚けているあいだに、とうやら転生の準備は完了したらしい。
START
いかにも押せと言わんばかりの文字が浮かび上がってきた。
ようやく夢が叶う。僕は深呼吸してゆっくりと手を伸ばし、そして、押した。
すると、今まで白一色だった世界に黒が混じり始め、斑になっていく。
そして、その世界をすべて置き去りにして、僕の意識は高速で前進していく。
永遠にも思えたその時間は、衝撃とともに終わりを迎えた。
ドスンッ
少しの浮遊感のあと、落下による痛みが来た。
目がチカチカする。
周りを把握出来ないが、おそらく僕は、尻餅をついた体制になっているはずだ。
「痛つつつ……。……、ここは?」
起き上がりながら辺りを伺った。
痛いほどの静寂、頭上に掲げられた十字架、どうやらここは教会らしい。
「教会からスタートするなんて、まるでゲームみたいだな。」
そう、独り言を呟いた。
「いえ、ここはゲームなんかじゃなくて、紛れもない現実よ。」
答えが帰ってくるとは思っていなかった僕は、背後からの声に驚きを隠せず、急いで振り返った。
声の主は少女だった。
パイプオルガンに腰掛けた少女は、艶やかな黒髪をなびかせ、僕を見据えていた。
「私は蘇芳よ。あなたを導く存在。」
蘇芳、そう名乗った少女から、僕は目が離せないでいた。
絶世の、と頭につくほどの美少女、そして、どことなく僕が好きだったあの娘に似ている……。
「聞かせて欲しいの。あなたの能力は何?」
「あ……。あ、あぁ……、能力を生み出す能力です。不死でも、時間停止でも、なんでも生み出せます!」
いつの間にか近づいていた蘇芳は、僕の頬に手を当てると、じっと目を合わせてきた。
「私に、その力を貸してほしい。君しか、頼れないんだ。」
真剣な顔で見つめられ、吸い込まれそうになる。
「わ、わかりました。けど、その前に、この世界について教えてください。」
そう、異世界に行けるとは聞いていたものの、その世界がどんな世界かは誰も知らなかった。ここがどんな世界で、僕が何をすべきか、知らないと何も出来ないのだ。
「そうね、長くなるから、移動しながら話しましょう。」
「移動って、どこへ?」
「もちろん、私の家よ。」
「い……。」
一瞬、何を言っているのか分からなかった。
「家って、いや、おかしいでしょう。初対面の男をいきなり家に呼ぶなんて、そんな。」
「おかしいも何もあなた、この世界で住む場所ないですよね?」
「あ……。」
そう言えばそうだ。異世界といえば宿屋、と思っていたけれど、今の僕は1文無しじゃないか。
「とりあえずここを出ましょう。」
蘇芳に連れられ、教会を出ると、目の前に広がっていたのはーーいつもと変わらぬ景色だった。
「これは、成功したのか!」
噂通りの光景に、僕は思わず叫んだ。
そしてこの後には確か……。
ヴォン
ブラウン管が点灯するような音を立てて、文字だけのウィンドウが現れた。
「あなたの名前を教えてください。」
望みが叶ったことを実感して、溢れ出しそうな喜びを抑えて僕は答えた。
「佐藤 翼だ。」
「能力を一つだけ会得できます。何にしますか?」
その答えは既に決めていた。
昔からよくある妄想だ。
何か一つだけ願いが叶うなら、何を望むか。
そんなもの、決まっている。
「能力を生み出す能力だ。」
そう、願い事を増やせば、無限に叶えることが出来る!
「了解しました。では転送開始します。」
「え、いいの……?」
横紙破りなこの能力が承認され、拍子抜けしてしまった。
そうして惚けているあいだに、とうやら転生の準備は完了したらしい。
START
いかにも押せと言わんばかりの文字が浮かび上がってきた。
ようやく夢が叶う。僕は深呼吸してゆっくりと手を伸ばし、そして、押した。
すると、今まで白一色だった世界に黒が混じり始め、斑になっていく。
そして、その世界をすべて置き去りにして、僕の意識は高速で前進していく。
永遠にも思えたその時間は、衝撃とともに終わりを迎えた。
ドスンッ
少しの浮遊感のあと、落下による痛みが来た。
目がチカチカする。
周りを把握出来ないが、おそらく僕は、尻餅をついた体制になっているはずだ。
「痛つつつ……。……、ここは?」
起き上がりながら辺りを伺った。
痛いほどの静寂、頭上に掲げられた十字架、どうやらここは教会らしい。
「教会からスタートするなんて、まるでゲームみたいだな。」
そう、独り言を呟いた。
「いえ、ここはゲームなんかじゃなくて、紛れもない現実よ。」
答えが帰ってくるとは思っていなかった僕は、背後からの声に驚きを隠せず、急いで振り返った。
声の主は少女だった。
パイプオルガンに腰掛けた少女は、艶やかな黒髪をなびかせ、僕を見据えていた。
「私は蘇芳よ。あなたを導く存在。」
蘇芳、そう名乗った少女から、僕は目が離せないでいた。
絶世の、と頭につくほどの美少女、そして、どことなく僕が好きだったあの娘に似ている……。
「聞かせて欲しいの。あなたの能力は何?」
「あ……。あ、あぁ……、能力を生み出す能力です。不死でも、時間停止でも、なんでも生み出せます!」
いつの間にか近づいていた蘇芳は、僕の頬に手を当てると、じっと目を合わせてきた。
「私に、その力を貸してほしい。君しか、頼れないんだ。」
真剣な顔で見つめられ、吸い込まれそうになる。
「わ、わかりました。けど、その前に、この世界について教えてください。」
そう、異世界に行けるとは聞いていたものの、その世界がどんな世界かは誰も知らなかった。ここがどんな世界で、僕が何をすべきか、知らないと何も出来ないのだ。
「そうね、長くなるから、移動しながら話しましょう。」
「移動って、どこへ?」
「もちろん、私の家よ。」
「い……。」
一瞬、何を言っているのか分からなかった。
「家って、いや、おかしいでしょう。初対面の男をいきなり家に呼ぶなんて、そんな。」
「おかしいも何もあなた、この世界で住む場所ないですよね?」
「あ……。」
そう言えばそうだ。異世界といえば宿屋、と思っていたけれど、今の僕は1文無しじゃないか。
「とりあえずここを出ましょう。」
蘇芳に連れられ、教会を出ると、目の前に広がっていたのはーーいつもと変わらぬ景色だった。
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