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第一章 異世界召喚と旅立ち
012 深夜の脱出劇3 最後の一撃は切ない
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"ドン!"
赤と青の火の粉をまき散らしてエマさんがこっちに突っ込んでくる。
速い! けど、なんとか反応できそうだ!
右手に持った赤い炎の短剣を振りかぶっているエマさんがハッキリと見える。
振り下ろしてくるタイミングに合わせて体を半身にして左に躱す。
すり抜けざまに、左手の青い炎の短剣を、横なぎにして振ってきたのもバッチリ見えてる。
体勢を低くしてその攻撃もすり抜ける。
Lvによるステータス上昇のおかげか? エマさんの動きはとても速い、とても速いのだが……その動きは俺の目にはっきりと見える。
格闘ゲームでコンボの練習をしすぎて、2~3フレームのボタン受付時間の体感時間がどんどん長く感じるようになっていく……それの上位互換のような感覚だ。
コンボの練習を始めた直後は、こんな短い時間でそんなコマンド入力出来ないよ! と思うのだが、ずっと練習をしていると、目で見て攻撃が当たったところを確認してからコマンド入力をできるようになってくるのだ。そんな感覚のすごいバージョンみたいな?
うまく説明が出来ないが、他の例えだと、野球漫画の「ボールの縫い目まで見えるぜ!」とか言っているバッターのような見え方だと思ってほしい。
「これはすごいな」
そう呟く俺に、続けてエマさんの攻撃が飛んでくる。
右、左、右、右、左の突きから一回転身体を回してからの右の横なぎ。
見えてる、見えてますよ~、ばっちりと! エマさんの連続攻撃をすいすいと避けていく。
これでも子供の頃は家の近くの空手道場に通っていたのだ。
隣の家の友達が辞めるのと同時に俺もやめてしまったので、そんなに長いことやっていたわけではないが……簡単な足さばきくらいは今でもお手の物だ。
「くっ、どうして……」
予想外に攻撃が全く当たらず、エマさんは悔しそうな顔をしている。
そんな苦戦しているエマさんを後ろの方から励ます奴がいた。
田仲だ。
「がんばれエマさーん! そんなヤツやっつけろー!」
そう言って後ろの方で飛び跳ねている。
まったく、お前が捕まったせいでこんなことになってるのに、そんなことはわかってないんだろうな。
まぁ、異世界に来てから一度も顔を合わせていないのだ。
わかれというのも無理な話ではあるのだが…。
「コノヤロウ! バカヤロウ! バカ、コノヤロウ!」
どこかのプロレスラーのような罵声を俺に浴びせてくる。
「これでもくらえ! このウンコ野郎!」
そう叫んで、休んでいた時に兵士が使っていたであろうコップを掴んで投げつけてくる。
くそ、鬱陶しいな田仲! そう思いながら飛んできたコップを避ける。
そのコップを避けた俺の様子を見ていたエマさんは、ハッとした表情をしている。
「なるほど、そういうことですか! ラヴィちゃん、お手柄ですよ!」
思いもよらず褒められた田仲君は
「えぇ~お手柄ですか? 照れちゃうなぁ~♪」
と照れて、頭をかいていた。なんの事かわかっていないようだ。
そして俺もその理由はわからない。
「はぁ!」
再度エマさんが攻撃してくる。
左、右、右の切り返し…そこまで順調に避けたあとに、左足の蹴りが飛んできた。
「うわっと!」
今までの左右の攻撃に合わせて蹴りまで飛んでくるようになる。
長いスカートで隠されている状態の足からの攻撃は見極めづらい。
それに、美人メイドの足が大きく蹴りだされ、スカートがフワリと舞う様は、ちょっと良いモノなのだ。とても俺の意識を引いてしまう。
「ふふ、実体のない魔物かと思っていましたが、魔力の通っていないただのコップを避ける必要があるような魔物だったということですね。それならいくらでもやりようがあります!」
そんな蹴りを交えたエマさんの攻撃をなんとか躱していると、ひときわ大きい振りの蹴りがきた。
スカートがブワッっと大きく翻り、俺の視界を遮る、そして、その影から短剣が降られた。
危ない! 死角からの攻撃かよ! だが、その攻撃もなんとか躱す。
くそ、エッチなのはいいが、かなりやりづらくなってきたな。
そんなことを思っていると不意に俺の足が止まる。
地面に足が張り付いたように動かなくなったのだ。
何事かと思い足元を見ると俺の足が凍り付いている。What?
近くの地面にあの青い宝石が付いた短剣が突き刺さっており、足元の氷はそこから発生しているようだ。
青い炎の短剣は、実は氷の短剣だったようだ。
一度後ろに飛び退いたエマさんは、赤い短剣を両手に持って掲げた。
「イグニス、もっと、もっと強く燃えなさい! すべてを出し尽くすのです……」
短剣が纏う赤い炎がまわりの空気を轟々と吸い込み、どんどん大きく燃え上がっていく。
エマさんは次で止めを刺そうとしている、なんとかしなくては丸焼きにされてしまいそうだ。
凍り付いていた足を無理やり持ち上げると氷は砕けて足は自由になった。
よし、と思い横へ移動して逃げようとしたのだが、足元の氷が広がりこちらの足を追いかけてくる。
またもや足は凍り地面にくぎ付けにされてしまう。
「その氷を砕けるなんて大したものですが、いくら逃げようとしても無駄です。アーヴェの氷からは逃れることはできません」
再度氷から抜け出そうとしたが、どんどん足元の氷は広がり大きくなっていく。
もう足の踏み場が無い状態だ、これはマジでヤバい。
「さぁ、これで最後です。ラヴィちゃんの先輩さんの敵(かたき)は私が討ちます。さようなら邪悪なる者よ」
大きく燃え上がっていた赤い炎が、瞬時に圧縮され、白く強く輝く。
「エクス・イクト・フランマ」
振り下ろされた炎の短剣"イグニス"から白い閃光が放出され、俺に直撃する。
真っ白になった視界の中で、俺は思っていた。
あぁ、エマさんのパンツの色と同じだな……と。
赤と青の火の粉をまき散らしてエマさんがこっちに突っ込んでくる。
速い! けど、なんとか反応できそうだ!
右手に持った赤い炎の短剣を振りかぶっているエマさんがハッキリと見える。
振り下ろしてくるタイミングに合わせて体を半身にして左に躱す。
すり抜けざまに、左手の青い炎の短剣を、横なぎにして振ってきたのもバッチリ見えてる。
体勢を低くしてその攻撃もすり抜ける。
Lvによるステータス上昇のおかげか? エマさんの動きはとても速い、とても速いのだが……その動きは俺の目にはっきりと見える。
格闘ゲームでコンボの練習をしすぎて、2~3フレームのボタン受付時間の体感時間がどんどん長く感じるようになっていく……それの上位互換のような感覚だ。
コンボの練習を始めた直後は、こんな短い時間でそんなコマンド入力出来ないよ! と思うのだが、ずっと練習をしていると、目で見て攻撃が当たったところを確認してからコマンド入力をできるようになってくるのだ。そんな感覚のすごいバージョンみたいな?
うまく説明が出来ないが、他の例えだと、野球漫画の「ボールの縫い目まで見えるぜ!」とか言っているバッターのような見え方だと思ってほしい。
「これはすごいな」
そう呟く俺に、続けてエマさんの攻撃が飛んでくる。
右、左、右、右、左の突きから一回転身体を回してからの右の横なぎ。
見えてる、見えてますよ~、ばっちりと! エマさんの連続攻撃をすいすいと避けていく。
これでも子供の頃は家の近くの空手道場に通っていたのだ。
隣の家の友達が辞めるのと同時に俺もやめてしまったので、そんなに長いことやっていたわけではないが……簡単な足さばきくらいは今でもお手の物だ。
「くっ、どうして……」
予想外に攻撃が全く当たらず、エマさんは悔しそうな顔をしている。
そんな苦戦しているエマさんを後ろの方から励ます奴がいた。
田仲だ。
「がんばれエマさーん! そんなヤツやっつけろー!」
そう言って後ろの方で飛び跳ねている。
まったく、お前が捕まったせいでこんなことになってるのに、そんなことはわかってないんだろうな。
まぁ、異世界に来てから一度も顔を合わせていないのだ。
わかれというのも無理な話ではあるのだが…。
「コノヤロウ! バカヤロウ! バカ、コノヤロウ!」
どこかのプロレスラーのような罵声を俺に浴びせてくる。
「これでもくらえ! このウンコ野郎!」
そう叫んで、休んでいた時に兵士が使っていたであろうコップを掴んで投げつけてくる。
くそ、鬱陶しいな田仲! そう思いながら飛んできたコップを避ける。
そのコップを避けた俺の様子を見ていたエマさんは、ハッとした表情をしている。
「なるほど、そういうことですか! ラヴィちゃん、お手柄ですよ!」
思いもよらず褒められた田仲君は
「えぇ~お手柄ですか? 照れちゃうなぁ~♪」
と照れて、頭をかいていた。なんの事かわかっていないようだ。
そして俺もその理由はわからない。
「はぁ!」
再度エマさんが攻撃してくる。
左、右、右の切り返し…そこまで順調に避けたあとに、左足の蹴りが飛んできた。
「うわっと!」
今までの左右の攻撃に合わせて蹴りまで飛んでくるようになる。
長いスカートで隠されている状態の足からの攻撃は見極めづらい。
それに、美人メイドの足が大きく蹴りだされ、スカートがフワリと舞う様は、ちょっと良いモノなのだ。とても俺の意識を引いてしまう。
「ふふ、実体のない魔物かと思っていましたが、魔力の通っていないただのコップを避ける必要があるような魔物だったということですね。それならいくらでもやりようがあります!」
そんな蹴りを交えたエマさんの攻撃をなんとか躱していると、ひときわ大きい振りの蹴りがきた。
スカートがブワッっと大きく翻り、俺の視界を遮る、そして、その影から短剣が降られた。
危ない! 死角からの攻撃かよ! だが、その攻撃もなんとか躱す。
くそ、エッチなのはいいが、かなりやりづらくなってきたな。
そんなことを思っていると不意に俺の足が止まる。
地面に足が張り付いたように動かなくなったのだ。
何事かと思い足元を見ると俺の足が凍り付いている。What?
近くの地面にあの青い宝石が付いた短剣が突き刺さっており、足元の氷はそこから発生しているようだ。
青い炎の短剣は、実は氷の短剣だったようだ。
一度後ろに飛び退いたエマさんは、赤い短剣を両手に持って掲げた。
「イグニス、もっと、もっと強く燃えなさい! すべてを出し尽くすのです……」
短剣が纏う赤い炎がまわりの空気を轟々と吸い込み、どんどん大きく燃え上がっていく。
エマさんは次で止めを刺そうとしている、なんとかしなくては丸焼きにされてしまいそうだ。
凍り付いていた足を無理やり持ち上げると氷は砕けて足は自由になった。
よし、と思い横へ移動して逃げようとしたのだが、足元の氷が広がりこちらの足を追いかけてくる。
またもや足は凍り地面にくぎ付けにされてしまう。
「その氷を砕けるなんて大したものですが、いくら逃げようとしても無駄です。アーヴェの氷からは逃れることはできません」
再度氷から抜け出そうとしたが、どんどん足元の氷は広がり大きくなっていく。
もう足の踏み場が無い状態だ、これはマジでヤバい。
「さぁ、これで最後です。ラヴィちゃんの先輩さんの敵(かたき)は私が討ちます。さようなら邪悪なる者よ」
大きく燃え上がっていた赤い炎が、瞬時に圧縮され、白く強く輝く。
「エクス・イクト・フランマ」
振り下ろされた炎の短剣"イグニス"から白い閃光が放出され、俺に直撃する。
真っ白になった視界の中で、俺は思っていた。
あぁ、エマさんのパンツの色と同じだな……と。
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