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第一章 異世界召喚と旅立ち
044 対決ワヒーラ2 あたしって、ほんとバカ
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再度飛び掛かってきたワヒーラの攻撃を、左に飛び退いて躱した俺は、持っていた樫の杖を剣道の構えの様に中段に構える。
所謂"正眼の構え"だ。
剣道は中学の授業でしかやったことはない俺だが、名前くらいは知っている、多分これが初心者には一番いい構えのはず!
実際に自分の体と相手の体の間に、障害物として木の棒を持っているだけで、安心感が全然違う。
いや、安心はしないのだが、間に物がひとつあるというだけで、精神的にかなり違う。
今この時は、この木の棒が俺のATフィールドだ、心の壁なのだ、こっちに来てほしくないのだ!
身体の前に突き出された杖を警戒して、俺の側面を狙おうと円の動きをしてくるワヒーラ。
それに合わせて、俺もワヒーラを正面に捕らえるように円の動きで対応する。
奴が右に回り込んでくれば、俺は左に。
左を狙ってくれば、右に移動して距離を一定に保った。
しかし、何かにつまずき体勢を崩した俺のせいで、しばらく続いた膠着状態に終わりが訪れる。
"ガッ"
「あっ!」
咄嗟に足元に視線をやり、何につまずいたのか確認しようとしたのだが、それが致命的な失敗となり、視線をワヒーラから外した瞬間に、俺は側頭部に強い衝撃を受けて吹っ飛ばされてしまう。
空を飛び、地面を転がる……グルグル回る視界の中で俺は死を覚悟した。
派手に吹き飛ばされたようで、俺がぶつかって止まった木の幹は半ば折れかけている。
遠くに右の前足を上げたままの体勢のワヒーラが見える。
たぶんあの前足でやられたのだろう……フック一発でここまで飛ばされるのかよ、なんて出鱈目な膂力だ。
しかし、あれだけの衝撃を受けたのに、今の俺は全くと言っていいほど体に痛みを感じない。
きっともう、何も感じないほどにやられてしまっているのだろうな……俺はそんな風に冷静に考えていた。
ワヒーラが一歩、また一歩とこちらに近付いてくる。
あぁ、せっかく異世界に召喚されて、これから面白おかしく冒険をしていこうという矢先に、こんなことになるなんて……
迷宮都市のダンジョン、見たかったなぁ……美人で有名な領主の娘さんも一目見てみたかった。
異世界のご飯も食べてみたかったし、黒パンだってまだ食べてない。
いろんな種族の人たちにも、会ってみたかった。
獣人だって、田仲君しかまだ見てないのに……あぁそうだ、田仲君はこの過酷な異世界でこれから生きていけるのだろうか? このあたりの地域では獣人は歓迎されていない様だし、なんとか無事に生きていけたらいいんだけど……
頭の中で走馬灯のように流れていく想い、今までの人生は流れてこなかったが、異世界での今後に馳せる想いはどんどんと溢れてくる。
ははっ、どんだけ楽しみにしてたんだよ……俺は。
そう自嘲した俺の耳に、ガラスが砕けたような音が聞こえてきた。
"パキィンッ!"
何かが割れたような音がして、体から光るガラスの破片の様なものが落ちていく。
これは……そうだった。
地下牢で戦った、メイドのエマさんの攻撃を受けたときにも同じようなことがあったのに……俺は全く学習していないようだ。
"マテリアルシールド"の魔法が発動したのだろう。
ワヒーラを探し出す前に自分にかけた魔法の一つで、一度だけ物理攻撃を無効化してくれる効果がある。
エマさんと戦ったときは、魔法のような攻撃をくらったときだったので、魔法攻撃無効化の"マジックシールド"とどちらが発動したのかわからなかったのだが、今回は物理無効のマテリアルシールドが発動したと考えて間違いないだろう。
道理で身体に痛みを感じないわけだ……自分の馬鹿さに呆れると同時に、だんだんと冷静に考えが巡るようになってきたのを感じる。
マテリアルシールドは確かに便利な魔法なのだが、範囲攻撃や魔法攻撃をくらっても剥がれてしまうし、消費MPもなかなかのものなので、ゲーム後半では使う機会があまりない魔法だった。
つまりは、最近使ってなかったので、マテリアルシールドありきの立ち回りというものが、俺の頭の中から抜け落ちてしまってのだ。
それに、出会い頭に頭を丸かじりしている様を見せつけられたせいで、雰囲気に飲まれてしまっていて冷静な判断ができなくなってしまっていたようだ。
落ち着いて考えれば、Lv7のカロンさんは、こいつに襲われて生き延びているのだ……言ってはなんだが、Lv7の人間を一発で殺せない敵なんて、俺にダメージを負わせられるかどうか怪しいんじゃないか? その程度のモンスターなんじゃないのかこいつは?
冷静になった俺は、ワヒーラに視線を戻す。
ヤツはニタニタしながらこちらを窺いつつ、こちらにゆっくりと近づいてくる。
狼の癖にニタニタって……本当に頭にくる野郎だ。
俺は寝転がったままで、あとすこしという距離まで近付いてきたワヒーラにタイミングを合わせて魔法を発動する。
「魔法詠唱:スリープミスト」
数秒の短い詠唱時間を経て、黒魔導士の魔法スリープミストが発動する。
俺の体の下に魔法発動の魔法陣が展開し、白い霧が発生する。
「グゥワゥッ!」
その白い霧を警戒して、飛び退いて距離を取ったワヒーラだがもう遅い。
こんな障害物がない場所では、発動してしまえば避けようがない魔法なのだ。
そして、少しでもこの霧を吸い込んでしまえば、低Lvモンスターにはレジストするすべはないだろう……俺はカンスト魔導士なのだから。
ヨタヨタとふらついた後、ドサリと地面に倒れ込んだワヒーラを見て、俺は立ち上がりながら魔法の発動を解除する。
「ふぅ、終わってみればあっけなかったな……最初からこうすればよかった」
俺って、ほんとバカ。
所謂"正眼の構え"だ。
剣道は中学の授業でしかやったことはない俺だが、名前くらいは知っている、多分これが初心者には一番いい構えのはず!
実際に自分の体と相手の体の間に、障害物として木の棒を持っているだけで、安心感が全然違う。
いや、安心はしないのだが、間に物がひとつあるというだけで、精神的にかなり違う。
今この時は、この木の棒が俺のATフィールドだ、心の壁なのだ、こっちに来てほしくないのだ!
身体の前に突き出された杖を警戒して、俺の側面を狙おうと円の動きをしてくるワヒーラ。
それに合わせて、俺もワヒーラを正面に捕らえるように円の動きで対応する。
奴が右に回り込んでくれば、俺は左に。
左を狙ってくれば、右に移動して距離を一定に保った。
しかし、何かにつまずき体勢を崩した俺のせいで、しばらく続いた膠着状態に終わりが訪れる。
"ガッ"
「あっ!」
咄嗟に足元に視線をやり、何につまずいたのか確認しようとしたのだが、それが致命的な失敗となり、視線をワヒーラから外した瞬間に、俺は側頭部に強い衝撃を受けて吹っ飛ばされてしまう。
空を飛び、地面を転がる……グルグル回る視界の中で俺は死を覚悟した。
派手に吹き飛ばされたようで、俺がぶつかって止まった木の幹は半ば折れかけている。
遠くに右の前足を上げたままの体勢のワヒーラが見える。
たぶんあの前足でやられたのだろう……フック一発でここまで飛ばされるのかよ、なんて出鱈目な膂力だ。
しかし、あれだけの衝撃を受けたのに、今の俺は全くと言っていいほど体に痛みを感じない。
きっともう、何も感じないほどにやられてしまっているのだろうな……俺はそんな風に冷静に考えていた。
ワヒーラが一歩、また一歩とこちらに近付いてくる。
あぁ、せっかく異世界に召喚されて、これから面白おかしく冒険をしていこうという矢先に、こんなことになるなんて……
迷宮都市のダンジョン、見たかったなぁ……美人で有名な領主の娘さんも一目見てみたかった。
異世界のご飯も食べてみたかったし、黒パンだってまだ食べてない。
いろんな種族の人たちにも、会ってみたかった。
獣人だって、田仲君しかまだ見てないのに……あぁそうだ、田仲君はこの過酷な異世界でこれから生きていけるのだろうか? このあたりの地域では獣人は歓迎されていない様だし、なんとか無事に生きていけたらいいんだけど……
頭の中で走馬灯のように流れていく想い、今までの人生は流れてこなかったが、異世界での今後に馳せる想いはどんどんと溢れてくる。
ははっ、どんだけ楽しみにしてたんだよ……俺は。
そう自嘲した俺の耳に、ガラスが砕けたような音が聞こえてきた。
"パキィンッ!"
何かが割れたような音がして、体から光るガラスの破片の様なものが落ちていく。
これは……そうだった。
地下牢で戦った、メイドのエマさんの攻撃を受けたときにも同じようなことがあったのに……俺は全く学習していないようだ。
"マテリアルシールド"の魔法が発動したのだろう。
ワヒーラを探し出す前に自分にかけた魔法の一つで、一度だけ物理攻撃を無効化してくれる効果がある。
エマさんと戦ったときは、魔法のような攻撃をくらったときだったので、魔法攻撃無効化の"マジックシールド"とどちらが発動したのかわからなかったのだが、今回は物理無効のマテリアルシールドが発動したと考えて間違いないだろう。
道理で身体に痛みを感じないわけだ……自分の馬鹿さに呆れると同時に、だんだんと冷静に考えが巡るようになってきたのを感じる。
マテリアルシールドは確かに便利な魔法なのだが、範囲攻撃や魔法攻撃をくらっても剥がれてしまうし、消費MPもなかなかのものなので、ゲーム後半では使う機会があまりない魔法だった。
つまりは、最近使ってなかったので、マテリアルシールドありきの立ち回りというものが、俺の頭の中から抜け落ちてしまってのだ。
それに、出会い頭に頭を丸かじりしている様を見せつけられたせいで、雰囲気に飲まれてしまっていて冷静な判断ができなくなってしまっていたようだ。
落ち着いて考えれば、Lv7のカロンさんは、こいつに襲われて生き延びているのだ……言ってはなんだが、Lv7の人間を一発で殺せない敵なんて、俺にダメージを負わせられるかどうか怪しいんじゃないか? その程度のモンスターなんじゃないのかこいつは?
冷静になった俺は、ワヒーラに視線を戻す。
ヤツはニタニタしながらこちらを窺いつつ、こちらにゆっくりと近づいてくる。
狼の癖にニタニタって……本当に頭にくる野郎だ。
俺は寝転がったままで、あとすこしという距離まで近付いてきたワヒーラにタイミングを合わせて魔法を発動する。
「魔法詠唱:スリープミスト」
数秒の短い詠唱時間を経て、黒魔導士の魔法スリープミストが発動する。
俺の体の下に魔法発動の魔法陣が展開し、白い霧が発生する。
「グゥワゥッ!」
その白い霧を警戒して、飛び退いて距離を取ったワヒーラだがもう遅い。
こんな障害物がない場所では、発動してしまえば避けようがない魔法なのだ。
そして、少しでもこの霧を吸い込んでしまえば、低Lvモンスターにはレジストするすべはないだろう……俺はカンスト魔導士なのだから。
ヨタヨタとふらついた後、ドサリと地面に倒れ込んだワヒーラを見て、俺は立ち上がりながら魔法の発動を解除する。
「ふぅ、終わってみればあっけなかったな……最初からこうすればよかった」
俺って、ほんとバカ。
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