35 / 84
捨て猫は見た a cat
しおりを挟む
ジメっとした空気。空もどんよりと曇っている。
今日は雨が降りそうだな。そんなことを思いながら灰色の空を眺めていた。
それにしても腹減ったな。ぼくの飼い主、色々といい加減で困る。この前もごはんを忘れているからニャアニャア鳴いてアピールしたら「うるさい」って頭をはたかれた。
今日は普通にごはんをくれるのかな。
そう思っていると、飼い主がどこか暗い目でぼくを見下ろしていた。
嫌な予感。これ、理由なく叩かれる気がする。
それでも叩く口実を与えないように、鳴き声は出さないようにする。
ふいに首の後ろを掴まれ、乱暴に持ち上げられる。そのせいで、思わず「ニャッ!?」と声が漏れた。
そのまま野菜が入っていたダンボールに放り込まれ、ぼく達は家を出て行く。
どこへ行くの?
飼い主を見上げるも、辛気臭い顔で目を合わせてくれない。
外はポツポツと雨が降り出していた。嫌だなあ。このまま雨が降ってきたら、傘も無いからずぶ濡れになっちゃうじゃないか。
しばらく飼い主はぼくの入ったダンボールを持ったまま歩いて行く。歩きながらブツブツと呟いていて、いちいち怖い。
しばらくすると、巨大な建物の前に来た。学校とか呼ばれている、子供だちが集まる場所だ。何をしているのかは知らないけど。
飼い主はダンボールごと僕を下ろすと、周囲をキョロキョロと見回してから去っていった。
えっ……。
ちょっと待ってよ。そんなことをされたら、僕はどうやって帰ればいいんだよ?
そう思うも束の間、飼い主の姿はどこにも見当たらなくなっていた。
ちょ……怖いよ。一人にしないでよ。いや、ぼくは猫だから一匹か。そんなことはどうでもいい。とにかく、目下ぼくは生命の危機にある。
屋根こそあるけど、雨が強くなってきた。
風は吹くし、そのせいで水が顔に当たる。うわ、最悪。おい飼い主、お前はどこに行ったんだよ。
それでも戻ってくるだろうと思い、雨風の中でじっと待っていた。だけど、待てども待てども飼い主が帰って来る気配は無い。
――まさか、ぼくは捨てられたの?
そう思った瞬間、本能的にニャアニャアと声を上げていた。
なんでだよ。置いてかないでよ。ぼくが何をしたんだよ。
そんな想いも虚しく、ぼくの声は届かない。
怖いよ。なんか、すぐ近くに鉄の塊みたいなのが走っているし。ダンボールの箱から出ようとしたぼくは恐怖ですぐに戻った。
濃い灰色になった空は、それだけで怖かった。ましてやぼくは子供だ。こんな中で置いて行かれたんだから最悪だ。
リードに繋がれた犬がこちらを見る。うわ、死ぬ。あんなのに噛まれたらひとたまりもない。恐怖。これが、死に近付いた者の味わう絶望というやつなのか。
あまりにも怖くて、気持ち的にはわんわん泣いてるんだけど、実際にはニャンニャン鳴いていた。
そうしたら学校のチャイムが鳴って、同じ服を着た若い人間たちがたくさん出て来る。その中で、足を止めた者がいた。
「猫……」
そう呟いた女の子は、ぼくのことをじっと見下ろしていた。制服を着ているから、この学校の生徒なんだろうなって思う。
「かわいい」
頭を軽く撫でられる。さっきまで恐怖に支配されていたこともあり、本能的に頭をこすりつける。
「うん、うん。いい子だね」
そう言って喉を撫でてくれる。最悪な状況だったのに、喉がゴロゴロしてしまう。本能ってやつは厄介だ。
「おう、加藤。それ、どうしたの?」
ふと見ると、もう一人の人間が来ていた。着ている服はちょっと違って、きっとオスなんだと思う。女の子が答える。
「捨て猫みたい」
「捨て猫? マジか。最悪な飼い主だな」
ぼくを撫でずに、二人が勝手に会話をはじめる。なんか嫌だったので、とりあえず「ニャア」と鳴いてみた。
「かわいい」
「たしかに、こりゃかわいいな」
二人の視線に、ぼくはじっと見つめ返した。
「で、どうすんだ?」
オスの方が訊くと、女の子が顔をしかめる。
「飼いたいんだけどさ、」
「うん」
「ウチ、猫がダメな家なんだよね」
「何やってんだよ」
目の前の男女が揉めだした。
一体何があったんだろう。
「だって、こんな雨の中で一人ぼっちなんて、そんなの見過ごせるわけないじゃない」
「まあ、たしかに……」
そう言ってオスの方が困った顔でぼくを見る。あまりよく分かっていないけど、とりあえず「ニャア」と鳴いてみた。そうすると、二人ともますます困った顔になった。
「どうしよう……」
女の子が悲しそうな顔をしたまま、ぼくの頭を撫で続ける。
「このまま放っておいたら猫好きがなんとかするんじゃないか?」
「そんなこと言ったって、この辺には車も走っているし、放っておけないよ。第一、そうやって誰もこの子を拾わなかったら死んじゃうじゃない」
「そうだな。ああ、もう、どうすんだ、これ」
オスの方がなんだかイラ立っているようだった。さっきまでかわいいと言ってくれたのに、ぼくは何かを間違えたのだろうか?
「加藤、お前んちは本当に猫を飼えないのか?」
「うん。壁もそんなに厚くないし、割とすぐにバレちゃうかも。最悪、引っ越して下さいってなってしまうかもね」
女の子がそう言うと、悩み抜いた末にオスの方が口を開く。
「じゃあ俺が飼うよ」
「えっ……?」
「だって、加藤の家だとこいつは飼えないんだろ? それに、無理矢理飼って引っ越すなんて話になったら大ごとじゃないか」
「そうだけど……いいの?」
「いいのも何も、どうにかするしかない。親の説得は何とかする」
「本当に? 正和君、ありがとう」
「おう。ただ、正直いきなりすぎて不安しかないけどな。まあ大丈夫だろ。家の人間も全員が猫好きのはずだから」
オスがそう言うと、ぼくはダンボールごと持ち上げられる。
「俺は正和って言うんだ。今日からお前は、ウチの猫だ。それで……おい、加藤。この子の名前はどうする?」
「サノなんてどう?」
「サノ? なんで?」
「るろうに剣心に相楽左之助っているでしょ?」
「ああ、まあ確かに。でも、それなら剣心で良くないか?」
「剣心はねえ、あたしの子供が生まれたら使う名前だからダメ」
「はーそうですか。じゃあサノ、今日からよろしくな」
そう言ってぼくはダンボールごと連れて行かれた。
いきなり捨てられたと思ったら拾われて、人生(?)って本当に分からないものだなと思いながら宙に浮かぶ揺れる箱に身を任せていた。
なんだか分からないけど、心から安堵した。
気が抜けたら眠くなって、ぼくは知らぬ間に意識を失っていた。
今日は雨が降りそうだな。そんなことを思いながら灰色の空を眺めていた。
それにしても腹減ったな。ぼくの飼い主、色々といい加減で困る。この前もごはんを忘れているからニャアニャア鳴いてアピールしたら「うるさい」って頭をはたかれた。
今日は普通にごはんをくれるのかな。
そう思っていると、飼い主がどこか暗い目でぼくを見下ろしていた。
嫌な予感。これ、理由なく叩かれる気がする。
それでも叩く口実を与えないように、鳴き声は出さないようにする。
ふいに首の後ろを掴まれ、乱暴に持ち上げられる。そのせいで、思わず「ニャッ!?」と声が漏れた。
そのまま野菜が入っていたダンボールに放り込まれ、ぼく達は家を出て行く。
どこへ行くの?
飼い主を見上げるも、辛気臭い顔で目を合わせてくれない。
外はポツポツと雨が降り出していた。嫌だなあ。このまま雨が降ってきたら、傘も無いからずぶ濡れになっちゃうじゃないか。
しばらく飼い主はぼくの入ったダンボールを持ったまま歩いて行く。歩きながらブツブツと呟いていて、いちいち怖い。
しばらくすると、巨大な建物の前に来た。学校とか呼ばれている、子供だちが集まる場所だ。何をしているのかは知らないけど。
飼い主はダンボールごと僕を下ろすと、周囲をキョロキョロと見回してから去っていった。
えっ……。
ちょっと待ってよ。そんなことをされたら、僕はどうやって帰ればいいんだよ?
そう思うも束の間、飼い主の姿はどこにも見当たらなくなっていた。
ちょ……怖いよ。一人にしないでよ。いや、ぼくは猫だから一匹か。そんなことはどうでもいい。とにかく、目下ぼくは生命の危機にある。
屋根こそあるけど、雨が強くなってきた。
風は吹くし、そのせいで水が顔に当たる。うわ、最悪。おい飼い主、お前はどこに行ったんだよ。
それでも戻ってくるだろうと思い、雨風の中でじっと待っていた。だけど、待てども待てども飼い主が帰って来る気配は無い。
――まさか、ぼくは捨てられたの?
そう思った瞬間、本能的にニャアニャアと声を上げていた。
なんでだよ。置いてかないでよ。ぼくが何をしたんだよ。
そんな想いも虚しく、ぼくの声は届かない。
怖いよ。なんか、すぐ近くに鉄の塊みたいなのが走っているし。ダンボールの箱から出ようとしたぼくは恐怖ですぐに戻った。
濃い灰色になった空は、それだけで怖かった。ましてやぼくは子供だ。こんな中で置いて行かれたんだから最悪だ。
リードに繋がれた犬がこちらを見る。うわ、死ぬ。あんなのに噛まれたらひとたまりもない。恐怖。これが、死に近付いた者の味わう絶望というやつなのか。
あまりにも怖くて、気持ち的にはわんわん泣いてるんだけど、実際にはニャンニャン鳴いていた。
そうしたら学校のチャイムが鳴って、同じ服を着た若い人間たちがたくさん出て来る。その中で、足を止めた者がいた。
「猫……」
そう呟いた女の子は、ぼくのことをじっと見下ろしていた。制服を着ているから、この学校の生徒なんだろうなって思う。
「かわいい」
頭を軽く撫でられる。さっきまで恐怖に支配されていたこともあり、本能的に頭をこすりつける。
「うん、うん。いい子だね」
そう言って喉を撫でてくれる。最悪な状況だったのに、喉がゴロゴロしてしまう。本能ってやつは厄介だ。
「おう、加藤。それ、どうしたの?」
ふと見ると、もう一人の人間が来ていた。着ている服はちょっと違って、きっとオスなんだと思う。女の子が答える。
「捨て猫みたい」
「捨て猫? マジか。最悪な飼い主だな」
ぼくを撫でずに、二人が勝手に会話をはじめる。なんか嫌だったので、とりあえず「ニャア」と鳴いてみた。
「かわいい」
「たしかに、こりゃかわいいな」
二人の視線に、ぼくはじっと見つめ返した。
「で、どうすんだ?」
オスの方が訊くと、女の子が顔をしかめる。
「飼いたいんだけどさ、」
「うん」
「ウチ、猫がダメな家なんだよね」
「何やってんだよ」
目の前の男女が揉めだした。
一体何があったんだろう。
「だって、こんな雨の中で一人ぼっちなんて、そんなの見過ごせるわけないじゃない」
「まあ、たしかに……」
そう言ってオスの方が困った顔でぼくを見る。あまりよく分かっていないけど、とりあえず「ニャア」と鳴いてみた。そうすると、二人ともますます困った顔になった。
「どうしよう……」
女の子が悲しそうな顔をしたまま、ぼくの頭を撫で続ける。
「このまま放っておいたら猫好きがなんとかするんじゃないか?」
「そんなこと言ったって、この辺には車も走っているし、放っておけないよ。第一、そうやって誰もこの子を拾わなかったら死んじゃうじゃない」
「そうだな。ああ、もう、どうすんだ、これ」
オスの方がなんだかイラ立っているようだった。さっきまでかわいいと言ってくれたのに、ぼくは何かを間違えたのだろうか?
「加藤、お前んちは本当に猫を飼えないのか?」
「うん。壁もそんなに厚くないし、割とすぐにバレちゃうかも。最悪、引っ越して下さいってなってしまうかもね」
女の子がそう言うと、悩み抜いた末にオスの方が口を開く。
「じゃあ俺が飼うよ」
「えっ……?」
「だって、加藤の家だとこいつは飼えないんだろ? それに、無理矢理飼って引っ越すなんて話になったら大ごとじゃないか」
「そうだけど……いいの?」
「いいのも何も、どうにかするしかない。親の説得は何とかする」
「本当に? 正和君、ありがとう」
「おう。ただ、正直いきなりすぎて不安しかないけどな。まあ大丈夫だろ。家の人間も全員が猫好きのはずだから」
オスがそう言うと、ぼくはダンボールごと持ち上げられる。
「俺は正和って言うんだ。今日からお前は、ウチの猫だ。それで……おい、加藤。この子の名前はどうする?」
「サノなんてどう?」
「サノ? なんで?」
「るろうに剣心に相楽左之助っているでしょ?」
「ああ、まあ確かに。でも、それなら剣心で良くないか?」
「剣心はねえ、あたしの子供が生まれたら使う名前だからダメ」
「はーそうですか。じゃあサノ、今日からよろしくな」
そう言ってぼくはダンボールごと連れて行かれた。
いきなり捨てられたと思ったら拾われて、人生(?)って本当に分からないものだなと思いながら宙に浮かぶ揺れる箱に身を任せていた。
なんだか分からないけど、心から安堵した。
気が抜けたら眠くなって、ぼくは知らぬ間に意識を失っていた。
5
あなたにおすすめの小説
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』
本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」
かつて、私は信じていた。
優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な──
そんな普通のお兄ちゃんを。
でも──
中学卒業の春、
帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、
私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった!
家では「戦利品だー!」と絶叫し、
年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、
さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!?
……ちがう。
こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない!
たとえ、世界中がオタクを称えたって、
私は、絶対に──
お兄ちゃんを“元に戻して”みせる!
これは、
ブラコン妹と
中二病オタク姫が、
一人の「兄」をめぐって
全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──!
そしていつしか、
誰も予想できなかった
本当の「大好き」のカタチを探す、
壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる