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ピロートーク
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初めてが終わったわたし達は、ベッドで夢見心地のまま天井を見つめていた。
「俺たち、本当にしたんだね」
「うん……」
「なんか、夢みたいだ」
「そうだね」
「……」
「……」
変な沈黙が続く。だけど、不思議と嫌ではなかった。
初めては痛いってよく聞く気がしたけど、わたしの初めては最初から最高に気持ち良かった。まあ、初体験と言うには今さらな年齢もあるんだろうけど。
レイ君が愛おしい気持ちがどんどん湧いてくる。本当に、初めての相手が彼で良かったな、なんて思う。
今までのつらかったこととか、ロキ君事件のこととかが走馬灯のように流れていく。たかだか初めてのセックスをしただけで大げさな。そう思いながらも、それだけ色々なものを背負って生きてきたんだと思う。三十路の処女というのは。
「ねえ、レイ君」
半ば本能的に口を開く。仰向けになったまま、レイ君と手を繋いだ。
「わたし達、このままずっと一緒にいられるかな」
言ってから、「普通の男性だったら『たった一回ヤっただけで重っ! キモッ!』とかなるんだろうな」って思ったけど、レイ君ならきっと大丈夫。
「うん。少なくとも俺は七海さんとずっと一緒にいたい」
「両想いだね」
「両想いだね」
「大好きだよ」
「俺も、大好きだよ」
天井を眺めて「ふふ」って笑う。
もしかしたら今は人生で一番幸せな時間なのかもしれない。大好きな人が傍にいて、わたしのことを理解して、受け入れてくれる。そういう人を見つけた時に、人は結婚しようと思うのかな。
結婚か。いつの間にか遠い言葉になってしまっていたけど、やっと現実性を帯びてきた感じかな。あまりにも色んなことがありすぎたからね。
レイ君、いい旦那さんになりそうだな。そして、いいパパにも。
……まあ、でも、それを言うのは今度の機会にしておこう。さすがにお互い初体験だし、付き合って初めてのセックスだし、色々と情報量が多過ぎる。
なんか中学生みたい。できるものなら戻りたい。タイムリープとかで。でも、そうするとレイ君には会えないのか。じゃあ戻らなくていいや。今が最高なんだから。
さて、木下さんにはなんて伝えようかな。彼女は直接的な言葉を使ってもそんなに引かないだろうけど、さすがに「レイ君とセックスできたよ♡」って言うのはね……。
って、そんなことは後で考えればいいか。今はこの幸せな瞬間を噛みしめよう。
この瞬間が、ずっとわたしの記憶に刻まれておくように。そして、それが生きていく上で何にも勝る糧となるんだ、きっと。
◆
その日を境に、わたしとレイ君はことあるごとにお互いの家へと行き来して、情熱的に体を重ねた。遅すぎる初めてを経験したせいか、下手な二十代よりヤりまくっていたと思う。
エッチばっかりしているせいで他がだめになるかと思いきや、そうはならなかった。わたしはレイ君に早く会いたいから、なるべく早く仕事を終わらせるように頭を使うようになった。それに加えて集中力が増したので、凡ミスが無くなった。
レイ君もお仕事で週間のトップセールスを獲る回数が増えてきたようで、会社内であちこちから覚えがめでたくなってきているとのこと。わたしもそれを聞いて誇らしい気持ちになった。
わたし達はそれこそ新婚の夫婦のように、遅まきに輝きだした人生を謳歌していた。ああ、これが世間一般の人が経験していたことだったんだなと思うと、それまであった変な疎外感も無くなっていった。
別に社会はわたしを拒絶なんてしていなかったけど、わたしがそれに気付くまで時間がかかったということなんだろう。
あの夜に結ばれたわたし達は、このまま幸せなゴールを迎える。わたしもレイ君も、周囲を取り囲む人たちもそう確信していた。幸せへの道は、まさに目の前へと続いていた。
――でも、この時わたしは知らなかった。この後すぐに、わたしを地獄に突き落とす最悪の事態が待っていることを。
「俺たち、本当にしたんだね」
「うん……」
「なんか、夢みたいだ」
「そうだね」
「……」
「……」
変な沈黙が続く。だけど、不思議と嫌ではなかった。
初めては痛いってよく聞く気がしたけど、わたしの初めては最初から最高に気持ち良かった。まあ、初体験と言うには今さらな年齢もあるんだろうけど。
レイ君が愛おしい気持ちがどんどん湧いてくる。本当に、初めての相手が彼で良かったな、なんて思う。
今までのつらかったこととか、ロキ君事件のこととかが走馬灯のように流れていく。たかだか初めてのセックスをしただけで大げさな。そう思いながらも、それだけ色々なものを背負って生きてきたんだと思う。三十路の処女というのは。
「ねえ、レイ君」
半ば本能的に口を開く。仰向けになったまま、レイ君と手を繋いだ。
「わたし達、このままずっと一緒にいられるかな」
言ってから、「普通の男性だったら『たった一回ヤっただけで重っ! キモッ!』とかなるんだろうな」って思ったけど、レイ君ならきっと大丈夫。
「うん。少なくとも俺は七海さんとずっと一緒にいたい」
「両想いだね」
「両想いだね」
「大好きだよ」
「俺も、大好きだよ」
天井を眺めて「ふふ」って笑う。
もしかしたら今は人生で一番幸せな時間なのかもしれない。大好きな人が傍にいて、わたしのことを理解して、受け入れてくれる。そういう人を見つけた時に、人は結婚しようと思うのかな。
結婚か。いつの間にか遠い言葉になってしまっていたけど、やっと現実性を帯びてきた感じかな。あまりにも色んなことがありすぎたからね。
レイ君、いい旦那さんになりそうだな。そして、いいパパにも。
……まあ、でも、それを言うのは今度の機会にしておこう。さすがにお互い初体験だし、付き合って初めてのセックスだし、色々と情報量が多過ぎる。
なんか中学生みたい。できるものなら戻りたい。タイムリープとかで。でも、そうするとレイ君には会えないのか。じゃあ戻らなくていいや。今が最高なんだから。
さて、木下さんにはなんて伝えようかな。彼女は直接的な言葉を使ってもそんなに引かないだろうけど、さすがに「レイ君とセックスできたよ♡」って言うのはね……。
って、そんなことは後で考えればいいか。今はこの幸せな瞬間を噛みしめよう。
この瞬間が、ずっとわたしの記憶に刻まれておくように。そして、それが生きていく上で何にも勝る糧となるんだ、きっと。
◆
その日を境に、わたしとレイ君はことあるごとにお互いの家へと行き来して、情熱的に体を重ねた。遅すぎる初めてを経験したせいか、下手な二十代よりヤりまくっていたと思う。
エッチばっかりしているせいで他がだめになるかと思いきや、そうはならなかった。わたしはレイ君に早く会いたいから、なるべく早く仕事を終わらせるように頭を使うようになった。それに加えて集中力が増したので、凡ミスが無くなった。
レイ君もお仕事で週間のトップセールスを獲る回数が増えてきたようで、会社内であちこちから覚えがめでたくなってきているとのこと。わたしもそれを聞いて誇らしい気持ちになった。
わたし達はそれこそ新婚の夫婦のように、遅まきに輝きだした人生を謳歌していた。ああ、これが世間一般の人が経験していたことだったんだなと思うと、それまであった変な疎外感も無くなっていった。
別に社会はわたしを拒絶なんてしていなかったけど、わたしがそれに気付くまで時間がかかったということなんだろう。
あの夜に結ばれたわたし達は、このまま幸せなゴールを迎える。わたしもレイ君も、周囲を取り囲む人たちもそう確信していた。幸せへの道は、まさに目の前へと続いていた。
――でも、この時わたしは知らなかった。この後すぐに、わたしを地獄に突き落とす最悪の事態が待っていることを。
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