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「明日そっちに行くんだけど、出勤してるかな?」
友達になってからずっとも無言だったイカ君からのメッセージ。夢かと思ったけど、やっぱりこのアカウントはレイジ君のものみたいだった。
え? 嘘でしょ? 明日にもレイジ君が来るの? そんな……!
嬉しいのは間違いないんだけど、それ以上に推しが来るという事実がわたしのキャパを超えている。きっと、宝くじが当たったらこんな感じ。
どうしよう? とりあえず、明日は絶対に出勤しなくちゃ。他の指名が入っていても全部断る勢いで。
「してますしてます。一日中空けておくから、また長い間いっしょにいられるよ」
ついでに「待ってるよ」って言ってるかわいい女の子のスタンプを送る。それだけじゃ足りないって思ってこれでもかとスタンプを送りまくってから「あ」って思う。
わたし、がっつき過ぎじゃね?
こういうのは自分の方が優位になるようにそっけないぐらいがいいって聞いたことがあるけど。今のわたしは「あなたと一緒にいたいです」感がスマホの画面から溢れている。時間差でそれに気付いて、恥ずかしくなってきた。
どうしよう、これはひどいぞ。ヨシ、見られる前に送信キャンセルしちゃえば……。
と思うのも束の間、すぐに既読が付いて床に倒れ込む。チーン。わたしは死にました。
ああ、恥ずかしい。本当はわたしの方が上手くリードしないといけないのに。そう思っていたら、また通知が鳴る。
「ありがとう。それじゃあ明日は10時間コースかなwww」
え、マジですか?
10時間コースって確かにあるけど、結構とんでもない金額ですよ?
このお仕事に就いてそんなに経っていないけど、10時間で働いていた嬢はまだお目にかかったことはない。
「本気にしていいの?」
「俺はいつだって本気だよ」
なんだか、この会話にも現実感が無い。わたしがやり取りしているのは本当にレイジ君なんだろうか? 国際ロマンス詐欺みたいなのじゃないの? この後に暗号資産の話とかが出てきてさ……。
「あなたは本当にあのレイジ君ですか?」って訊きたくなるけど、なんとなしにこのメッセージで名前を出すのは良くないと思った。誰かにこの会話を抜かれたところで言い逃れはいくらでもできそうだけど、スパイ同士が本名で呼び合わないのと同じ。
「ねえ、本物だよね?」
「本物だよ。君が信じている限りは」
何とか名前を出さずにメッセージを送ると、その意図を察したのか微妙なメッセージを返してくる。ますますもどかしくなるばっかりなんだけど、これ以上この会話を引っ張って嫌われたらバカみたいだし、信じるしかないんだろうなって思う。
「ここ最近、あなたのことだけを考えていた」
「嬉しいことを言ってくれるね。他の客に同じことを送っていないと願っているよ」
「送ってるかも」
「送ってるのかーい!www」
「ごめんね」って頭を下げるウサギのスタンプ。
「でも、あなたには本気で言ってるよ。って、このセリフもあやしいんだけど」
「分かるよ。まあ、お互い様だよなwwwそれじゃあまた会えるのを楽しみにしているよ」
画面には「おやすみ」って言ってるクマのかわいいスタンプが出てくる。
やり取りはそこでひと段落した。
死ぬほど嬉しいはずなのに、わたしの心が事実を受け止めることを拒否している。きっと、裏切られた時に壊れないように防御反応が働いているんだと思う。
たしかにこの流れで花形さんとのオフィスラブ事件みたいな終わり方を迎えたら今度こそわたしの心は粉々になりそうな気がする。
「10時間か。本当に?」
誰もいない天井に向かって呟く。
待て。レイジ君って、初体験の時から絶倫のバケモノだったよね?
あの時でもトータルで4時間ほどのコースだった。次のエッチではそれに6時間がプラスになる。……マジですか。わたし、生きて帰れるかな?
たとえ騙されていなくても、わたしは結構なピンチを迎えていることに気付いた。
「とりあえず、12時間寝よう」
明日に備えて、さっさと寝ることにした。お店には「太い客を捕まえたから明日は終日その人のところに行きます」と前もって連絡をしておく。こうやってあらかじめスケジュールを埋めておかないと、他の客から指名が入った時にバッティングすることになる。
スケジュールの管理は木村さんもやっているけど、特に何も言われることもなかった。他にもしれっと10時間働いている女の子がいるのか、それとも数字が出るからには干渉しない主義なのか。木村さんの場合は後者かな。
とりあえず寝よう。寝て備えよう。推しのために。
そう、すべては推しのために。
友達になってからずっとも無言だったイカ君からのメッセージ。夢かと思ったけど、やっぱりこのアカウントはレイジ君のものみたいだった。
え? 嘘でしょ? 明日にもレイジ君が来るの? そんな……!
嬉しいのは間違いないんだけど、それ以上に推しが来るという事実がわたしのキャパを超えている。きっと、宝くじが当たったらこんな感じ。
どうしよう? とりあえず、明日は絶対に出勤しなくちゃ。他の指名が入っていても全部断る勢いで。
「してますしてます。一日中空けておくから、また長い間いっしょにいられるよ」
ついでに「待ってるよ」って言ってるかわいい女の子のスタンプを送る。それだけじゃ足りないって思ってこれでもかとスタンプを送りまくってから「あ」って思う。
わたし、がっつき過ぎじゃね?
こういうのは自分の方が優位になるようにそっけないぐらいがいいって聞いたことがあるけど。今のわたしは「あなたと一緒にいたいです」感がスマホの画面から溢れている。時間差でそれに気付いて、恥ずかしくなってきた。
どうしよう、これはひどいぞ。ヨシ、見られる前に送信キャンセルしちゃえば……。
と思うのも束の間、すぐに既読が付いて床に倒れ込む。チーン。わたしは死にました。
ああ、恥ずかしい。本当はわたしの方が上手くリードしないといけないのに。そう思っていたら、また通知が鳴る。
「ありがとう。それじゃあ明日は10時間コースかなwww」
え、マジですか?
10時間コースって確かにあるけど、結構とんでもない金額ですよ?
このお仕事に就いてそんなに経っていないけど、10時間で働いていた嬢はまだお目にかかったことはない。
「本気にしていいの?」
「俺はいつだって本気だよ」
なんだか、この会話にも現実感が無い。わたしがやり取りしているのは本当にレイジ君なんだろうか? 国際ロマンス詐欺みたいなのじゃないの? この後に暗号資産の話とかが出てきてさ……。
「あなたは本当にあのレイジ君ですか?」って訊きたくなるけど、なんとなしにこのメッセージで名前を出すのは良くないと思った。誰かにこの会話を抜かれたところで言い逃れはいくらでもできそうだけど、スパイ同士が本名で呼び合わないのと同じ。
「ねえ、本物だよね?」
「本物だよ。君が信じている限りは」
何とか名前を出さずにメッセージを送ると、その意図を察したのか微妙なメッセージを返してくる。ますますもどかしくなるばっかりなんだけど、これ以上この会話を引っ張って嫌われたらバカみたいだし、信じるしかないんだろうなって思う。
「ここ最近、あなたのことだけを考えていた」
「嬉しいことを言ってくれるね。他の客に同じことを送っていないと願っているよ」
「送ってるかも」
「送ってるのかーい!www」
「ごめんね」って頭を下げるウサギのスタンプ。
「でも、あなたには本気で言ってるよ。って、このセリフもあやしいんだけど」
「分かるよ。まあ、お互い様だよなwwwそれじゃあまた会えるのを楽しみにしているよ」
画面には「おやすみ」って言ってるクマのかわいいスタンプが出てくる。
やり取りはそこでひと段落した。
死ぬほど嬉しいはずなのに、わたしの心が事実を受け止めることを拒否している。きっと、裏切られた時に壊れないように防御反応が働いているんだと思う。
たしかにこの流れで花形さんとのオフィスラブ事件みたいな終わり方を迎えたら今度こそわたしの心は粉々になりそうな気がする。
「10時間か。本当に?」
誰もいない天井に向かって呟く。
待て。レイジ君って、初体験の時から絶倫のバケモノだったよね?
あの時でもトータルで4時間ほどのコースだった。次のエッチではそれに6時間がプラスになる。……マジですか。わたし、生きて帰れるかな?
たとえ騙されていなくても、わたしは結構なピンチを迎えていることに気付いた。
「とりあえず、12時間寝よう」
明日に備えて、さっさと寝ることにした。お店には「太い客を捕まえたから明日は終日その人のところに行きます」と前もって連絡をしておく。こうやってあらかじめスケジュールを埋めておかないと、他の客から指名が入った時にバッティングすることになる。
スケジュールの管理は木村さんもやっているけど、特に何も言われることもなかった。他にもしれっと10時間働いている女の子がいるのか、それとも数字が出るからには干渉しない主義なのか。木村さんの場合は後者かな。
とりあえず寝よう。寝て備えよう。推しのために。
そう、すべては推しのために。
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