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学校は楽しい

座学も実技も私達義獣人の家でも出来ることなのにここにいる時間が楽しくて早送りみたいに太陽が西に沈んでしまう。

真っ青っだった空は少しずつオレンジ色に染まってやがては夜色になる、だから人は心が安らぐ家に帰るの。


「アカリちゃんまたね!」

「うん…また明日」


また明日になれば会える、だから今は手をふって再会を願うのだ。

教科書をカバンにつめて背負うと椅子をしまって教室を出た。

廊下には生徒はもういない

教師も定時を過ぎれば夜の警備番の人以外はいなくなる。

不思議な感覚だ




「あっ…」


ふと後ろから声が聞こえて振り返れば夕陽に照らされて長い影がおばけみたいにその人の後ろをついている。

私のつけてるウィッグとは違うきれいな黒い前髪の隙間から見える赤い瞳がこちらを覗いてきた。

彼、どこかで見たことがあるような気がする


「最終下校時刻に帰宅部がまだいるなんてどういうことだ?」


首を傾げてきたから真似するように首を傾げていると顔を顰めて何か言えよと言われた。

声を聞いて思い出した、コイツと同じクラスの男子じゃん。


「えっと…君俺と同じクラスの転校生だよな?

たしか五十嵐…」

「灯里、五十嵐灯里。

あなたは秋元勇利君だよね?」


いつも教室の隅っこで他の男子と一緒にいるけどいつも視線が気になっていたんだ。

しかしそろそろ校舎をでないとニコが待ってるかもしれないから急がないと。


「私、迎えの車が来てるかもだから先に……!?」


いま一瞬だけ妙な気配を感じ取った

ふと廊下の窓から外のグラウンドを覗いてみると顔がひきつった感覚がしたのがわかる。


「同胞…」


フラフラとグラウンドの真ん中に向かって歩くその姿になぜ学校関係者は誰も気づかないのだろうか。

自然に生えてくるはずのない奇抜な緑色の髪、血色の悪い顔

そしてこちらを見てくるブラウン混じりの黒い瞳


「(気づかれた…!)」


とっさに体制を低くして窓から離れると横にいる秋元勇利という男子生徒の存在を思い出した。

どうする?おそらくあの同胞は私を狙ってくる

でも一般人を狙わない可能性を捨てるなんて馬鹿だろう。

考えろ


「はぁ…ちょっと来て」

「え?ちょっ…おい!」


私のいない場所でなにかされるよりかはマシだ

彼の手を取り長い廊下を駆け抜けると階段を登った

降りて遭遇するよりかはまだ逃げて時間を稼ぐ、そしてカバンの奥に閉まってあるあれを取り出して置かないと


「なあ…さっきから何してるんだよ」


少しだけ失敗をした

私なんかよりも能力が劣る人間からすればさっきの同法の恐ろしさがわからないんだ。

なら教えないとな、やつから逃げながら


「さっきグラウンドに人影が見えたの気づいた?」

「そういえばいたな…あれって家に帰ろうとした生徒じゃないのか?」


それっだたらそれだけ良いだろうね

背負っていたリュックを前にかけてチャックを開けると奥に手を突っ込んで四角くて冷たいそれをしっかりと掴んだ。

電源をつけて起動するまでに時間がかかることに舌打ちをすると周りを警戒した。

その様子にいよいよまずいのではないかと不安そうな顔でこちらを見てきた。


「今現在で知ってほしいことが二つある。

一つはグラウンドにいたあれは学校関係者じゃない

もう一つは私達の存在に気づいて追ってきている。」


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