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羽を手に入れた男
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「はあ、なんでこんなことになったんだろうか」
今俺は職場の屋上に追い込まれている。本当に最悪な気分だ。
いつもは屋上で同僚と談笑しながら飯を食っているのでそんなに嫌なところではないのだが⋯⋯
「手間取らせやがって。もう逃げ道はなくなったぞ」
今俺に脅しの言葉をかけたこいつは俗に言うテロリストの1人だ。生き物の命を絶つなと命をいただくことを絶対悪としていたヴィーガンもここまで過激化してしまったらしい。内の会社は肉を使った食品を主に取り扱っているのがおそらく理由だろう。今はナイフを持って俺に迫ってきている。
「大人しく人質になってもらおうか」
そう男が言うので両手を上げて降参の意を示す。ここが一階かテロリストが1人だったらうまく逃げることも可能かもしれない。しかしここは屋上だしテロリストは20人以上いる。そんな中逃げるのは至難の技だ。もうお手上げだ。
腹痛でトイレに篭っていたら逃げ遅れて死ぬとかいう一番アホらしい死に方なのが悲しい。
いっそのこと自ら屋上から飛び降りてやろうかと思って俺は下を見た。すると警官がネットを張っていた。おそらく取り残された人に飛び降りてもらうためなのだろう。まあ屋上からは想定されてはいないのだろうが。
まあ、それしか道がないのならやるしかないのだろう。
「テロリストさん、俺は飛び降りる。人質も居なくなるな。ご愁傷様」
「おい、お前!ここは屋上だぞ!ネットは貼られてるがこの高さから生き残れると思ってるのか!?!?」
俺の言葉に慌てたテロリストが止めようとした。
「さあな、どの道助からないだろうし運次第だってことだな」
そう言って俺はビルから飛び降りた。
ああ、退屈な人生だったな。学生の時はそこそこに楽しかったが就職してからは仕事に行くだけの毎日だったな。もう少し遊べばよかった。
俺はそう人生を振り返りながら目を瞑り、自分の身体が地面に辿り着くのを待った。
しかし一向に地面につく気配が無い。
不可思議に思って目を開けてみると、空中で体が止まっていた。
「何が起こっているんだ」
そう思い周囲を見渡してみると、自分の背中あたりに羽らしきものがあった。
「空を飛んでいるのか?」
そう考えた俺は軽く空中で動いてみようとした。羽の動かし方なぞさっぱりわからないが、何故か思い通りに動くことが出来た。
何はともあれ命は助かったのでとりあえずネットが張ってある下に降りることにした。
俺もよく分かっていないが、周囲の人々も何が起こったのか分からず奇妙なものを見るような目で見ていた。
その視線が辛くて俺は思わず逃げた。
家に着いた俺はこの先どうするかを考えることにした。
正直俺はもう会社に戻りたくない。絶対に奇異な目で見られるからだ。そんな環境で生きていくだなんてとても耐えられない。
そう考えた俺は、会社から遠く離れた田舎の県に住むことにした。連日ニュースであのテロリストと謎の俺のことについての報道が続いてはいたが、ここまで離れればきっとバレないし、いずれそのニュースも忘れられるだろう。
その後俺は普通に就職した。羽も自由に出し入れできるらしく何も問題は無かった。たまに俺は羽で空を飛び異次元なサッカーの真似事なんかをして遊んでいるがそれだけだ。
羽があって空を自由に飛べるからといって何か大きなメリットがあるわけではない。羽を使って行けるところなんざ車や公共交通機関を使えば自由に行ける。そして羽なんぞ人のいるところで使おうもんなら目立ってしょうがない。
「空を自由に飛びたいだなんで子供の頃は言っていたけど大人になり文明もより発達してきた今ではあまり必要のないことなのかもしれないな」
俺はそう自嘲するかのように呟いた。
今俺は職場の屋上に追い込まれている。本当に最悪な気分だ。
いつもは屋上で同僚と談笑しながら飯を食っているのでそんなに嫌なところではないのだが⋯⋯
「手間取らせやがって。もう逃げ道はなくなったぞ」
今俺に脅しの言葉をかけたこいつは俗に言うテロリストの1人だ。生き物の命を絶つなと命をいただくことを絶対悪としていたヴィーガンもここまで過激化してしまったらしい。内の会社は肉を使った食品を主に取り扱っているのがおそらく理由だろう。今はナイフを持って俺に迫ってきている。
「大人しく人質になってもらおうか」
そう男が言うので両手を上げて降参の意を示す。ここが一階かテロリストが1人だったらうまく逃げることも可能かもしれない。しかしここは屋上だしテロリストは20人以上いる。そんな中逃げるのは至難の技だ。もうお手上げだ。
腹痛でトイレに篭っていたら逃げ遅れて死ぬとかいう一番アホらしい死に方なのが悲しい。
いっそのこと自ら屋上から飛び降りてやろうかと思って俺は下を見た。すると警官がネットを張っていた。おそらく取り残された人に飛び降りてもらうためなのだろう。まあ屋上からは想定されてはいないのだろうが。
まあ、それしか道がないのならやるしかないのだろう。
「テロリストさん、俺は飛び降りる。人質も居なくなるな。ご愁傷様」
「おい、お前!ここは屋上だぞ!ネットは貼られてるがこの高さから生き残れると思ってるのか!?!?」
俺の言葉に慌てたテロリストが止めようとした。
「さあな、どの道助からないだろうし運次第だってことだな」
そう言って俺はビルから飛び降りた。
ああ、退屈な人生だったな。学生の時はそこそこに楽しかったが就職してからは仕事に行くだけの毎日だったな。もう少し遊べばよかった。
俺はそう人生を振り返りながら目を瞑り、自分の身体が地面に辿り着くのを待った。
しかし一向に地面につく気配が無い。
不可思議に思って目を開けてみると、空中で体が止まっていた。
「何が起こっているんだ」
そう思い周囲を見渡してみると、自分の背中あたりに羽らしきものがあった。
「空を飛んでいるのか?」
そう考えた俺は軽く空中で動いてみようとした。羽の動かし方なぞさっぱりわからないが、何故か思い通りに動くことが出来た。
何はともあれ命は助かったのでとりあえずネットが張ってある下に降りることにした。
俺もよく分かっていないが、周囲の人々も何が起こったのか分からず奇妙なものを見るような目で見ていた。
その視線が辛くて俺は思わず逃げた。
家に着いた俺はこの先どうするかを考えることにした。
正直俺はもう会社に戻りたくない。絶対に奇異な目で見られるからだ。そんな環境で生きていくだなんてとても耐えられない。
そう考えた俺は、会社から遠く離れた田舎の県に住むことにした。連日ニュースであのテロリストと謎の俺のことについての報道が続いてはいたが、ここまで離れればきっとバレないし、いずれそのニュースも忘れられるだろう。
その後俺は普通に就職した。羽も自由に出し入れできるらしく何も問題は無かった。たまに俺は羽で空を飛び異次元なサッカーの真似事なんかをして遊んでいるがそれだけだ。
羽があって空を自由に飛べるからといって何か大きなメリットがあるわけではない。羽を使って行けるところなんざ車や公共交通機関を使えば自由に行ける。そして羽なんぞ人のいるところで使おうもんなら目立ってしょうがない。
「空を自由に飛びたいだなんで子供の頃は言っていたけど大人になり文明もより発達してきた今ではあまり必要のないことなのかもしれないな」
俺はそう自嘲するかのように呟いた。
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