この世で一番嫌いな自慢の彼女

僧侶A

文字の大きさ
14 / 37

第14話

しおりを挟む
 七森の案内により幹部たちが毎週集まっているとされる廃ビルの近くに来た。

「ヤンキーとか悪い奴って何故かこういう所好きだよな」

 馬鹿と煙はとかいうが多分壊れた建物の方が好きだと思う。多分。

「まあこういう所なら人も来ねえし話するのに丁度いいんじゃねえの?」

 悠理がそう言った。確かにそうだとは思う。

「顔もちゃんと隠して服装も特定されにくいものにしたし、さっさと行くか」

 神田はやる気満々のようだ。

「神田、お前はそこまで強くないんだから注意しとけよ?」

 七森が身を案じて注意する。こいつ弱いのか……。

 めっちゃ期待してたんだが。悠理と並んで雑兵を薙ぎ払うみたいなことできると思ってたんだが……

 まあ悠理要るしなんとかなるか。

「まあまあ。神田が弱いって言っても私たちの中ではってだけだし大丈夫大丈夫。さっさと行こう」

 ということで完全にピクニックの感覚でアジトまで来てしまった。

 別に下っ端が入り口を見張っているというわけでもなく、幹部たちの間に全員が集まっている状態だった。

 さっきのヤンキーは下っ端の下っ端だったんだな。ある程度鍛えられている奴らばっかりだった。

「たのもー!」

 北条がその中にすごく軽いノリで入っていった。一応ムードは大切にしたかったなあ……

「なんだお前ら?」

 突然の侵入者に警戒心を強めてはいるものの、マスクを着けて各々がパリピでも付けないようなダサいサングラスを付けている光景に困惑していた。

 その気持ちはよく分かる。でも七森がノリノリで選んでいて止める気にならなかったんだ……
 どうせ今後使うことは無いからな。まあいいさ。

「君達には滅亡してもらいます!悪事は見逃せないたちなんだ」

 北条がリーダーらしき人物に指をさし宣戦布告をした。

「ああ?女なのにいい度胸だな」

 困惑していた空気が一変し、全員が戦闘モードに入っていた。

 ヤンキー共が攻撃を仕掛けてくると同時に戦闘が始まった。

 30対6か。一人頭6人の計算だが……

 多分悠理が大体倒してくれるので2人位でよさそうだな。

 とりあえず俺はボスであろう奴の所へ真っ先に仕掛けた。

「こういうのはさっさと頭潰すのが良い」

「ハッ、お前が一番弱そうなのに笑わせる」

 実際の所見た目は俺が一番弱そうだ。七森もそこまで大差ない体つきではあるのだが、身長があいつの方が5㎝程高い。

 これでも追いついた方なんだけどな。中2の段階で150ちょっとしかなかったからな。牛乳をたくさん飲んだ甲斐があったというものだ。

 それにしてもあいつら身長高すぎなんだよな。七森と北条以外は180を当然のように超えてるし。

 女子である北条ですら177cmってなんだよ。

 まあ今じゃ172㎝だし?一般的な身長だから?

「弱そうなだけで弱くは無いぞ」

 ぶっ潰す。

 俺は一直線に懐へ突っ込む。いつも通り顎に一発かまして——

「なんか面白そうなことやってるわね」

 突然の乱入者だった。

 俺はそれに気を取られた結果、攻撃をたやすく避けられてしまった。

「大賀じゃねえか。丁度いいタイミングに来たな」

 大賀と呼ばれた人物は目の前のボスとは違う制服を着ていた。

 そう。北条たちの高校にみかじめ料を要求していたところだった。

「架橋くんお待たせ。んで、この子達は何者?」

「分からん。ただ一つ言えるのはここら辺の高校の人間ってことだ」

「じゃあ口止めしてあげないとね。二度と喋れない位に」

「お前ら結託していたのか」

「あったりまえだよねえ。じゃなきゃ関係ない高校を警護するなんてボランティアしてあげるわけないじゃない」

 大規模なカツアゲみたいなことをしたかったわけか。

「それは何のために?」

 大賀と呼ばれた男が笑う。

「ただお金が欲しかっただけに決まってるじゃない」

 決めた。ぶっ潰す。

 とは言ってもこいつと同時に20人ほど入ってきたことにより、選挙区が一気に苦しくなった。

 悠理が同時に相手できる人数がいくら多いとはいえ、20人も追加されたら対処の仕様がない。

 そもそもあいつは既に半数の15人を同時に相手取って貰っているのだ。

 つまりそれが何を意味するかというと、俺は目の前にいる二校のボスを同時に相手しなければならないということである。

 一人ならどうとでもなったんだが。

 これは万事休すか……?

 と思ったら大量の男達が現れた。

「え?あいつら何よ?架橋の差し金?」

「大賀が呼んだわけじゃないのか?」

 二人が困惑している。ということは俺たちの中の誰かが呼んだわけだ。

「俺の味方だ。安心しろ」

 というわけで神田が呼んだ仲間らしい。

 呼んだ奴らの正体は分からないが、味方になってくれるのは非常に頼もしい。

 これで人数差はある程度確保できた。

 とはいえ結局俺がこの二人を相手する必要があるのだが……

「さっさとこいつやっちまって舎弟たちに加勢してあげないとまずいわよね」

 俺がこの二人と睨みあっているうちに後ろで人がバッタバッタと薙ぎ倒されている。だから早々に決着をつけたいご様子。

「じゃあさっさとやるぞ!」

「わかったわ」

 そのセリフと共に鉄パイプを持っていた大賀が背後に回り、俺に対して振り下ろす。

 そしてその避けた先に架橋がバットを振りぬく。

 非常に連携の取れた動きだった。

 そして一度でも攻撃を受けたら確実に気絶する。

 流石によけ続けてみんながこっちに来るのを待っているのは無理なようだ。

 そう判断した俺は架橋を一旦無視し、大賀の方に特攻を仕掛けた。架橋は体が強く、速攻で倒すのは不可能と判断したからだ。

「やっぱりこっちに来るのね。でも、甘いわよ」

 これは予測済みだったようで、俺が動き出すと同時に俺の方へ動いていた。

 俺はたまらずに横に逃げる。一発入れることも出来なかった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されていた。手遅れな程に・・・

月白ヤトヒコ
恋愛
婚約してから長年彼女に酷い態度を取り続けていた。 けれどある日、婚約者の魅力に気付いてから、俺は心を入れ替えた。 謝罪をし、婚約者への態度を改めると誓った。そんな俺に婚約者は怒るでもなく、 「ああ……こんな日が来るだなんてっ……」 謝罪を受け入れた後、涙を浮かべて喜んでくれた。 それからは婚約者を溺愛し、順調に交際を重ね―――― 昨日、式を挙げた。 なのに・・・妻は昨夜。夫婦の寝室に来なかった。 初夜をすっぽかした妻の許へ向かうと、 「王太子殿下と寝所を共にするだなんておぞましい」 という声が聞こえた。 やはり、妻は婚約者時代のことを許してはいなかったのだと思ったが・・・ 「殿下のことを愛していますわ」と言った口で、「殿下と夫婦になるのは無理です」と言う。 なぜだと問い質す俺に、彼女は笑顔で答えてとどめを刺した。 愛されていた。手遅れな程に・・・という、後悔する王太子の話。 シリアス……に見せ掛けて、後半は多分コメディー。 設定はふわっと。

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

25年の後悔の結末

専業プウタ
恋愛
結婚直前の婚約破棄。親の介護に友人と恋人の裏切り。過労で倒れていた私が見た夢は25年前に諦めた好きだった人の記憶。もう一度出会えたら私はきっと迷わない。

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

愚か者が自滅するのを、近くで見ていただけですから

越智屋ノマ
恋愛
宮中舞踏会の最中、侯爵令嬢ルクレツィアは王太子グレゴリオから一方的に婚約破棄を宣告される。新たな婚約者は、平民出身で才女と名高い女官ピア・スミス。 新たな時代の象徴を気取る王太子夫妻の華やかな振る舞いは、やがて国中の不満を集め、王家は静かに綻び始めていく。 一方、表舞台から退いたはずのルクレツィアは、親友である王女アリアンヌと再会する。――崩れゆく王家を前に、それぞれの役割を選び取った『親友』たちの結末は?

(完結)私のことが嫌いなら、さっさと婚約解消してください。私は、花の種さえもらえれば満足です!

水無月あん
恋愛
辺境伯の一人娘ライラは変わった能力がある。人についている邪気が黒い煙みたいに見えること。そして、それを取れること。しかも、花の種に生まれ変わらすことができること、という能力だ。 気軽に助けたせいで能力がばれ、仲良くなった王子様と、私のことが嫌いなのに婚約解消してくれない婚約者にはさまれてますが、私は花の種をもらえれば満足です! ゆるゆるっとした設定ですので、お気楽に楽しんでいただければ、ありがたいです。 ※ 番外編は現在連載中です。

処理中です...