この世で一番嫌いな自慢の彼女

僧侶A

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第26話

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「選び終わったよ!って二人ともどうしたの?めちゃくちゃテンションが低い……」

「どうしたもこうしたもない」

「加賀美さんから事情を聞いちゃったけどそれで楽しみに待てるわけが……」

「あはは。確かにそうかも。それだけ聞いちゃったら楽しみに待てるわけがないよね。でも安心して!ちゃんと私はまともな使い方が出来る服をちゃんと選定しているから!」

 自信満々に言い切る小野田さん。それでもなんだか心配だ。

 そして俺たちのファッションショーが始まった。

 次々に服を試着室に投げ込まれ、ただ俺たちは無心で着ていくのみ。同時に試着しているのでお互いの醜態を見て笑うこともできない。

 さて、最初の服はっと。

 ジャブと言わんばかりに爽やかすぎる服が出てきた。これはホストだな。

「いらっしゃいませ、ご主人様。とでも言えばいいのかな?」

 若干困りつつも相手は小野田さんだから文句は隠す。

「いいねいいねそれ!二人とも似合っているよ!」

「眼福です」

 ハイテンションでカメラを連射している小野田さんと、後ろで笑顔を隠し切れない加賀美。

「はい次行くぞ」

 若干苦笑いしつつもまともな服では合ったので文句は言えないご様子。

 次の服は量産型大学生のような服装だった。

「悠理くん……」

 小野田さんが笑いを必死にこらえている。流石に筋肉にこのファッションは合わないようだ。

「次行くぞ」

 隠れるかのようにカーテンを閉めたらしい悠理は次の服を要求した。

 その後も様々な服を着せ替えさせられた。ネタに走っているのも多数あったが、基本的には俺たちに似合うものが多かった。

 おもちゃにされている感は確かにあったが、それでも総合的に見ると満足な出来だった。

「ありがとうございました。私は満足です」

「じゃあ買いにいこっか」

 俺たちが自分で気に入ったと宣言した服と、おそらく二人の琴線に触れたであろう服を選別してレジに持って行っていた。

「ちょっと待って多すぎない?」

「目の保養になったお礼ですよ」

 そう言い切りそのままレジに向かった。

 あのホストの服を取り下げさせる口実だったのだがうまくいかなかった。

「あいつら散々俺らで遊びやがったが、何枚かは良い服買ってもらえるし必要経費ってとこか」

「そう考えるのが無難だな」

 実際時給換算すると大学生どころか社会人ですらびっくりの効率だからな。医学部専門の家庭教師とかの比ではない。

 実際にどれだけ儲かったかを計算しているうちに二人は会計を済ませ戻ってきた。

「それではご飯でも食べに行きましょうか」

 時計を見ると12時を回っていた。

「そうだね」

「すまん。ちょっと用事があるから食う所を決めて先に行っといてくれ」

「分かった」

 悠理は急ぎ足で目的地に向かって行った。

「悠理くん何かあったの?」

「本屋に行ったんだよ。悠理は大の本好きでね。今日は大ファンの作家である星進次って人の小説の発売日なんだって」

 あいつはあの見た目で重度な文学少年なのだ。国語の成績がやたら高いのもそれが原因である。

「一緒に行けばいいのに」

 文句を言う小野田さん。

「全員で行ってしまうと誰かが止めるまで際限なく本屋に居座ってしまうから。せっかくみんなで遊びに来たのに何時間も費やしたら悪いって思ったんじゃないかな」

 あいつ俺と本屋に行くと平気で3時間くらい本を探し回るからな。だから最近は本屋のある店には二人で行かないようにしている。

「なるほどね。面白そうだから見てきてもいい?」

「いいけど見つからないようにしてね。見つかるとややこしいから」

 小野田さんは悠理を観察しに本屋の方へ向かっていた。

「それじゃあ俺らはさっさと飯屋を決めるか。多分決めて連絡するまで戻ってこないだろうし」

「そうですね」

 俺たちはデパートのレストラン街で食べる場所を決めることにした。

「正直どれでもいいが、無難なところで言えばオムライスかな」

 俺はレストラン街に立ち並ぶ有名チェーン店の中から、恐らくこの地域で一番人気な店を選んだ。

 正直金持ちの二人が一般庶民に好評な店程度で満足させられると思っていないからな。無難なところを選んでさっさと食べてしまおうという魂胆である。

「それが良さそうですかね。環の大好物ですし」

 ということであっさりと決まり、悠理と小野田さんに連絡を入れる。

「距離的に後10分くらい待てば来るだろ」

 なんだかんだ悠理と別れてから10分くらい経っていたので、恐らく会計でそれ相応に時間がかかるだろう。

 そして待つこと10分。

「なかなか来ませんね」

「悠理の性格的に俺以外をここまで待たせることは無いはずだが。ちょっと様子を見てくる」

 そう思い本屋の所へ向かおうとした矢先に、小野田さんが戻ってきた。

「小野田さん。悠理は?」

「知らない」

 若干怒っている口調でそう言った小野田さん。

「何があったんですか?」

 小野田さんを心配に思った加賀美が俺の代わりに聞いた。

「知らない」

「俺は悠理を探してくる。加賀美は小野田さんの方を頼んだ」

「分かりました」

 俺は悠理を探しに本屋の方へ向かった。
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