立ち回りを捨て、全てをエイムに捧げてきた元プロゲーマーは現実でもエイムに全振りして無双する

僧侶A

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8話

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 その後ダンジョンの報酬を受け取り、配信を終了した後に石板を使用して脱出した。

 この攻略によってE級ダンジョンを二個踏破したことになるため、無事にD級へと昇格した。


 その後はやることがあるとリンネに告げて解散した。

 俺はその足で飛行機に乗り、目的地へと向かう。着いた頃には夜だったので、空港付近のネカフェで一晩を明かす。

 朝起きたらすぐにレンタカーを借り、目的地へ。

 それからしばらくして、目的地へと到着した。

「なんでこんな所に店を開いているんだよ……」

 北海道の中でも最北の地、稚内にあったのはブーメラン専門店『円』。

 前回の訓練をした配信の際に、ここにブーメラン専門店があると教えてもらっていたのだ。普通の店ではブーメランよりも弓矢を優先するため、品ぞろえが良くない。

 しかしこの店は店長が物好きで、ブーメランのみで戦闘を行うことを考慮した商品が数多く並んでいるとの事。

 俺はその言葉を信じ、この店にやってきたというわけだ。

 少し古ぼけた店内ではあるが、営業中の看板があるので開いてはいるのだろう。

「いらっしゃい」

 入ると、老いた男性では無く若々しい女性の声が出迎えてくれた。

「あなたは?」

「私は一ノ瀬涼、この店の店長だよ。涼って呼んでね」

 入り口そばのレジに座っていたのは、深紅に染まったショートカットと綺麗な青い目が特徴的な、可愛いというよりはカッコいいという言葉がよく似合う女性だった。

 そんな女性が紺色のよくある作業着を着ているので、少し違和感がある。

「ではそうしますね。私の名前は」

「AIM君で良い?」

「俺の事を知っているのか」

 AIMとしての俺を知っていると確信したので、イメージの兼ね合いもあり配信での口調で話すことにした。

「勿論、だって紹介したのは私だし」

 どうやら、あの配信でこの店を紹介していた人はこの人らしい。

「ってことはファンなのか?」

「配信を見ているって上ではファンだけど、少し違うかな」

「違うとは?」

「ブーメランを主軸に戦闘をすると決めたことに期待をしているんだ」

 なるほど。俺ではなく、『ブーメランを使って戦う冒険者』に注目しているということか。

「別にあんたが戦えば良いんじゃないか?」

「そう思ったけど、市販のブーメランじゃ厳しいから」

 なるほど。この人も俺と同じ壁にぶち当たったってことか。

「じゃあ今は冒険者としてブーメランを使っていないのか?」

「いや、今も現役で使っているよ。だから君に希望を託したいとかそういうわけじゃないよ」

「なら普通に商売相手として呼んだってことか?」

「そういうこと。AIMくん、私の事を専属にしない?」

「まずは商品を見てからだな」

「それはそうだね」

 俺は当初の予定の通り、ブーメランを見て回ることにした。

「これは、刃か」

 最初に目に着いたのは、ブーメランの一部分に鋭利な刃がついたもの。

「そうだね。敵モンスターを叩くのではなくて、切り裂いて戻ってくるものだね」

「言いたいことは分かるが、危なくないか?」

 ブーメランは敵に投げてそれっきりではなく、自分にしっかり戻ってくるのだ。

 相手を刃で切りつけられるということは、自らに刃が飛んでくると同義。

「まあね。作ったは良いものの私には使いこなせなかったよ」

「そりゃそうだろ」

「でもAIMくんには使いこなせるんじゃない?」

「そうだな」

 ちゃんと自分の手元に戻ってくるタイミングで刃が無い方になるよう調整すればいい話だ。

 一旦置いて次の物へ。

「これは最早手裏剣じゃないか?」

 置いてあったのは一般的なくの字型や十の字型ではなく八方位型と言えば良いのだろうか、十の字型を二つ重ねたようなものだった。

「そうだね。そのまま手裏剣に影響を受けて作ったよ」

「これは?」

「私には無理でした。掴むところが小さすぎて」

「だろうな」

 十字型なら90度の幅があるが、これは45度しかない。いや、太さを考えるとそれ以下か。そんな隙間を狙って手を入れるのは相当な動体視力が要る。

「でもAIMくんは……?」

「無理だ」

 キャッチする時に触れる面は投げ方でどうとでも出来るが、これはそもそもキャッチ技術の問題だ。エイム能力とは一切関係が無い。

 そして次の3次元になったブーメランを見て察した。

「お前、俺なら使えるのではって思って呼んだだろ」

 どう考えても実用に耐えない形のブーメランがかなり混じっている。

「え?そ、そんなことは無いよ」

 完全に図星らしい。

「なら、普通のブーメランは無いのか?」

「あ、あるよ。ちょっと待って!」

 涼は慌てた様子で店の奥へと向かっていった。

「これこれ」

 戻ってきた涼はブーメランを二つ手渡してきた。くの字型のオーソドックスなものだ。

 普通の物よりは少し重いが、その分硬かった。

「これは両方ともホーングリズリーの角から作ったんだ」

「なるほど、モンスターから」

「強いモンスターの素材はそれに見合った硬さ丈夫さを持っているからね」

 確かにこれであればあのサウザントトレントにもダメージを与えられただろう。

「これは自分で作ったのか?」

「勿論私の手作りだよ。なかなかの腕前でしょ」

 どうやって作ったのかは分からないが、二つは機械で作ったかのように綺麗に形が揃っていた。

「そうだな。そのために作ったのか?」

「うん。これさえ見せれば信用してもらえると思ってね」

 別にここまで精巧なブーメランを作る必要性はあまりない。多少個体差があっても作りがミスってなければ基本的に重量以外に差は生まれないからだ。

 実際、俺が今まで使っていた工場産ブーメランも割と個体差はあった。けれど命中率に影響は無い。

 ただ、技術の差を見せつけるために作ったのなら効果的だったと言える。

 ここまで精巧に作れる人間が上手くないわけがないからな。

「そうだな、実力はよく分かった。専属になってほしい」

「やったあ!」

 涼は両手を上げて喜んでいた。

「そんなに嬉しいのか?」

「安定した収入がようやく確保できるようになったから。これでこの店を金物屋に戻さなくてよくなるよ」

 どうやら、この店は元々金物屋だったらしい。若干古びていたのはそのせいとのこと。

 金物屋を4年前に受け継ぐことになったらしいが、当時から冒険者をやっていた涼はそれを拒否。色々口論の末、今のブーメラン専門店になったようだ。

 しかし収益が安定せず店の継続自体が厳しい状態に。それでつい最近親に経営が厳しいなら金物屋に戻せと言われたとのこと。

 それで困り果てていたところにブーメランを主軸に戦う俺を発見し、店に呼んだというのが一連の流れらしい。

「ただ俺の場合大量にブーメランが必要になるが構わないか?」

「問題無いよ。客は今の所君だけだし」

 涼はあっさりと言った。

「それなら良いが。それと、店はここに構えたままにするのか?」

 正直東京住みなのでここまで来るのが非常に面倒くさい。

「うーん……ここ閉めると親がうるさいんだよなあ……」

 そして数秒考えた後に、

「まあいいか!定期的に戻ってきて開くって形にすれば文句ないでしょ!」

 と結論付けていた。本当にそれでいいのか。

「だが東京には設備が無いぞ」

「それは問題ないよ。だってそこまで大きなものは無いし」

「なら構わないが」

 そこまで言うのであれば、俺の為にやってくれるのに止める理由は無い。

「じゃあちょっと待ってて!」

 そう言われて待っていると、涼は工房に走っていった。

 待つこと数十分。

「お待たせ。乗って!」

 涼は店の前にボックスカーを持ってきた。

 中には大量の段ボールが入っており、俺が座れるのは助手席のみだった。

「まさか、今から車で行くのか?」

「勿論!」

「バカだろ。ここをどこだと思っているんだ」

「我が故郷、稚内!」

 うん、バカだな。ここから東京までは1500㎞位あるんだぞ。

「何時間かかると思っているんだ?」

「まあ10時間くらいかな?」

「20時間だ」

 10時間なら疲れるけどどうにかなるでしょとかいう表情をしていたが、20時間は想定していなかったようだった。

「ま、まあ20時間ならどこかで休憩すれば……」

 しかし諦めるという選択肢は無いのか、それでもやる気だった。

「そもそも東京のどこに住む気だよ」

「勿論AIM君の家だよ」

 そこはちゃんとしているのか…… いやちゃんとはしてないが。

「初対面の男の家に住みつくってどうなんだよ」

「大丈夫。AIM君のプライベートはちゃんと守るし家事もちゃんとしてあげるから」

「そういう問題じゃねえ!」

 田舎、田舎だからなのか?距離感バグってんだろ。

「それにAIM君の配信はちゃんと見ているから私からすると初対面じゃないよ」

 それはそうだが違う!配信なんだからそれ用にある程度キャラを作っているに決まっているだろ!

「というわけでよろしく」

「もういい。好きにしてくれ」

 俺は諦めて涼の車に乗ることにした。


 俺は明日の配信は休むとだけ視聴者に伝えて、これから始まる20時間の旅に備えた。
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