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80話
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「ねえ、もしかして機嫌が悪いのって九重ヤイバってVtuber関連とか?」
「えっ、どうして!?!?」
やっぱり葵をからかわないといけないよな。原因は九重ヤイバだが、斎藤一真は一切悪くないという最高の状況。使わない手はないよね。
「九重ヤイバのコラボウィークが終わったあたりから機嫌が少しずつ悪くなっていたような気がするなって思って」
「え、そうかな?別に関係ないと思うけど……」
葵が九重ヤイバの大ファンだという事を知っていてこれを理由に挙げられるのは葵=水晶ながめだと知っている人でしかないのだが、身バレ回避の方に思考を9割持っていかれてしまう葵に気づくことは不可能だ。
「でもそうにしか見えないんだよね。普段の学校でも不運な出来事とか腹が立つ事って無いらしいし」
「それはどうして知ってるの?」
「宮崎さんから聞いた」
「宮崎さんか、沙希ちゃんと最近仲良いしそれが理由で知ったのかな?」
実際には誰からも聞いていないが、宮崎さんであればどうとでも口裏を合わせられそうなのでそういうことにした。
身バレ対策に必死でまさかここを突っ込まれるとは思わなかった。危ない危ない。
「じゃないかな。俺はよくわかんないや」
「ってか宮崎さんと仲良いんだ。学校で一緒に居る姿をあまり見かけないけど」
アレ?今日の葵はなんだか冷静じゃないか?
上手いこと話題をずらそうとしていないか?
……いや、理由が思いつかないから必死に時間稼ぎしているだけだ。
ならさっさとこっちの説明を片付けて本題に戻そう。
「結構前にカラオケに行った時にやたら歌声が気に入られてね。定期的に収録スタジオに呼び出されて歌わされているんだ」
「そこはカラオケじゃないんだ……」
「歌ってみたが好きで将来MIX師になりたいから」
「ああ、だから最近沙希ちゃんと歌ってみたのイラストの話とかしているのかな」
「かもね。そこら辺は深く聞いているわけじゃないから知らないや。で、九重ヤイバのせいなの?」
これ以上脱線して話を持っていかれるとこっちの都合が悪いので雑に話を切って元の話題に戻した。
「えーっと、そうだなあ……」
色々と言い淀んでいる時点で誰が見ても確定なのだが、それに気づかない葵は必死に思考を巡らせている。
「やっぱりそうなんだ」
「いや、違うくて。ヤイバ君は全然悪くなくて。ただ私がなんとも言えない気持ちになっているだけだというか。季節のせい、かな?」
困り果てた挙句、実質ヤイバが原因だと言っているような答え方になっていた。しかも別に挙げた理由が季節って。
「季節?今は暑くもなく寒くもなく滅茶苦茶快適な季節だと思うんだけど」
今は秋という最高に丁度いい季節だと思うんですが。
夏と冬が嫌いな人は結構いるけど春と秋が嫌いな人っていない気がする。秋休みが無いから秋が嫌いという人は居るだろうが、それはあまりにも少数派だ。
誰がそれで誤魔化されようか。
「いや、そのね……」
「やっぱり九重ヤイバなんでしょ?何か変な事言ってたの?まさかメン限配信で悪口言われたりした?」
というわけで俺は畳みかけることにした。あくまで葵の心配をしている体で九重ヤイバをあえて悪くいってみる。
「違うに決まってるでしょ!!ヤイバ君は同い年なのに成人している配信者さん達に偉そうな口調で配信をしているけど、本当は優しくて良い人なんだよ!じゃなきゃアスカさんとかがあそこまでヤイバ君ラブみたいな行動しないでしょ!」
すると流石に怒った口調で言い返してきた。良かった。これで悪口言われたことにされなくて。
「うん、そうかもね。でも、ヤイバ君が原因で機嫌が悪くなるってことを考えると実際に何かをされたとしか思えないからさ。女性ファンが機嫌悪くなりそうなコラボウィークは普通に機嫌よかったし」
コラボウィークの時に不機嫌になっていればこんな場面は怒らなかったのだが、葵は良いファンすぎた。それが仇となったな。
「確かにそう思われるかも……」
誤魔化しきれないと踏んだのか、原因は九重ヤイバだと認める方針にしたようだ。
さて、ここからどう逃げるのだろうか。恐らくそっちの方がきついぞ。
「じゃあ何されたの?」
「何かされたっていうか、何もしなかったからっていうか……」
「何もしなかった?」
「うん。ヤイバ君って、コラボウィークが終了してから昨日のアスカちゃんとのコラボまで誰ともコラボしなかったんだ」
「そうだったね」
……これ大丈夫か?この路線だと本当の事話す以外無い気がするけど。
ちょっと待って。なんか腹くくったみたいな顔してない?今から私は水晶ながめですって告白するんじゃないよね!?!?
「それを見てさ、コラボウィークってやっぱり嫌だったんじゃないかって。ヤイバ君自身は嫌じゃないって言ってそれで炎上も解決したけど、無意識ではしんどいって思ってて、その反動でソロ配信をしたいって思っちゃってるんじゃないかなって」
なるほどな。葵は俺が最近ソロ配信だけだった理由がコラボが嫌だったからだと思って心配だったわけだ。
それで不機嫌になるのは視聴者だったらかなり違和感がある話だが、葵の努力と優しさに免じて許してやるか。
「なるほどね。でも流石にそんなことは無いでしょ。クロさんに嵌められたみたいな体で始まったらしいけど、嫌だったら学校が忙しいとか適当な嘘ついてでも断れたでしょ」
「それはそうだけどさ。やった後に嫌って思ったのかも……」
「大丈夫だって。演劇部のメンバーともう一回コラボするって話になっているらしいし。単にソロ配信が出来なかった分ソロ配信をしているだけだと思うよ」
「————、————」
と俺が言うと、俺には内容が聞こえないレベルの小さな声でぶつぶつと考えているようだった。
それから数十秒後、
「うん、そうだね。私の考えすぎだったかも」
と話す葵の表情はいつも通りのものだった。
「そっか」
これ以上はどうやってもからかうことは出来なさそうだ。
しまったな。もう少しからかう時間を延ばしておくべきだった。
それからは九重ヤイバについての話題に戻ることはなく、最近のアニメや漫画について話すだけだった。残念だ。
「えっ、どうして!?!?」
やっぱり葵をからかわないといけないよな。原因は九重ヤイバだが、斎藤一真は一切悪くないという最高の状況。使わない手はないよね。
「九重ヤイバのコラボウィークが終わったあたりから機嫌が少しずつ悪くなっていたような気がするなって思って」
「え、そうかな?別に関係ないと思うけど……」
葵が九重ヤイバの大ファンだという事を知っていてこれを理由に挙げられるのは葵=水晶ながめだと知っている人でしかないのだが、身バレ回避の方に思考を9割持っていかれてしまう葵に気づくことは不可能だ。
「でもそうにしか見えないんだよね。普段の学校でも不運な出来事とか腹が立つ事って無いらしいし」
「それはどうして知ってるの?」
「宮崎さんから聞いた」
「宮崎さんか、沙希ちゃんと最近仲良いしそれが理由で知ったのかな?」
実際には誰からも聞いていないが、宮崎さんであればどうとでも口裏を合わせられそうなのでそういうことにした。
身バレ対策に必死でまさかここを突っ込まれるとは思わなかった。危ない危ない。
「じゃないかな。俺はよくわかんないや」
「ってか宮崎さんと仲良いんだ。学校で一緒に居る姿をあまり見かけないけど」
アレ?今日の葵はなんだか冷静じゃないか?
上手いこと話題をずらそうとしていないか?
……いや、理由が思いつかないから必死に時間稼ぎしているだけだ。
ならさっさとこっちの説明を片付けて本題に戻そう。
「結構前にカラオケに行った時にやたら歌声が気に入られてね。定期的に収録スタジオに呼び出されて歌わされているんだ」
「そこはカラオケじゃないんだ……」
「歌ってみたが好きで将来MIX師になりたいから」
「ああ、だから最近沙希ちゃんと歌ってみたのイラストの話とかしているのかな」
「かもね。そこら辺は深く聞いているわけじゃないから知らないや。で、九重ヤイバのせいなの?」
これ以上脱線して話を持っていかれるとこっちの都合が悪いので雑に話を切って元の話題に戻した。
「えーっと、そうだなあ……」
色々と言い淀んでいる時点で誰が見ても確定なのだが、それに気づかない葵は必死に思考を巡らせている。
「やっぱりそうなんだ」
「いや、違うくて。ヤイバ君は全然悪くなくて。ただ私がなんとも言えない気持ちになっているだけだというか。季節のせい、かな?」
困り果てた挙句、実質ヤイバが原因だと言っているような答え方になっていた。しかも別に挙げた理由が季節って。
「季節?今は暑くもなく寒くもなく滅茶苦茶快適な季節だと思うんだけど」
今は秋という最高に丁度いい季節だと思うんですが。
夏と冬が嫌いな人は結構いるけど春と秋が嫌いな人っていない気がする。秋休みが無いから秋が嫌いという人は居るだろうが、それはあまりにも少数派だ。
誰がそれで誤魔化されようか。
「いや、そのね……」
「やっぱり九重ヤイバなんでしょ?何か変な事言ってたの?まさかメン限配信で悪口言われたりした?」
というわけで俺は畳みかけることにした。あくまで葵の心配をしている体で九重ヤイバをあえて悪くいってみる。
「違うに決まってるでしょ!!ヤイバ君は同い年なのに成人している配信者さん達に偉そうな口調で配信をしているけど、本当は優しくて良い人なんだよ!じゃなきゃアスカさんとかがあそこまでヤイバ君ラブみたいな行動しないでしょ!」
すると流石に怒った口調で言い返してきた。良かった。これで悪口言われたことにされなくて。
「うん、そうかもね。でも、ヤイバ君が原因で機嫌が悪くなるってことを考えると実際に何かをされたとしか思えないからさ。女性ファンが機嫌悪くなりそうなコラボウィークは普通に機嫌よかったし」
コラボウィークの時に不機嫌になっていればこんな場面は怒らなかったのだが、葵は良いファンすぎた。それが仇となったな。
「確かにそう思われるかも……」
誤魔化しきれないと踏んだのか、原因は九重ヤイバだと認める方針にしたようだ。
さて、ここからどう逃げるのだろうか。恐らくそっちの方がきついぞ。
「じゃあ何されたの?」
「何かされたっていうか、何もしなかったからっていうか……」
「何もしなかった?」
「うん。ヤイバ君って、コラボウィークが終了してから昨日のアスカちゃんとのコラボまで誰ともコラボしなかったんだ」
「そうだったね」
……これ大丈夫か?この路線だと本当の事話す以外無い気がするけど。
ちょっと待って。なんか腹くくったみたいな顔してない?今から私は水晶ながめですって告白するんじゃないよね!?!?
「それを見てさ、コラボウィークってやっぱり嫌だったんじゃないかって。ヤイバ君自身は嫌じゃないって言ってそれで炎上も解決したけど、無意識ではしんどいって思ってて、その反動でソロ配信をしたいって思っちゃってるんじゃないかなって」
なるほどな。葵は俺が最近ソロ配信だけだった理由がコラボが嫌だったからだと思って心配だったわけだ。
それで不機嫌になるのは視聴者だったらかなり違和感がある話だが、葵の努力と優しさに免じて許してやるか。
「なるほどね。でも流石にそんなことは無いでしょ。クロさんに嵌められたみたいな体で始まったらしいけど、嫌だったら学校が忙しいとか適当な嘘ついてでも断れたでしょ」
「それはそうだけどさ。やった後に嫌って思ったのかも……」
「大丈夫だって。演劇部のメンバーともう一回コラボするって話になっているらしいし。単にソロ配信が出来なかった分ソロ配信をしているだけだと思うよ」
「————、————」
と俺が言うと、俺には内容が聞こえないレベルの小さな声でぶつぶつと考えているようだった。
それから数十秒後、
「うん、そうだね。私の考えすぎだったかも」
と話す葵の表情はいつも通りのものだった。
「そっか」
これ以上はどうやってもからかうことは出来なさそうだ。
しまったな。もう少しからかう時間を延ばしておくべきだった。
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