Vtuberの幼馴染は自分の正体を隠せていると思っているので、全力でからかってやろうと思います

僧侶A

文字の大きさ
80 / 130

80話

しおりを挟む
「ねえ、もしかして機嫌が悪いのって九重ヤイバってVtuber関連とか?」

「えっ、どうして!?!?」

 やっぱり葵をからかわないといけないよな。原因は九重ヤイバだが、斎藤一真は一切悪くないという最高の状況。使わない手はないよね。

「九重ヤイバのコラボウィークが終わったあたりから機嫌が少しずつ悪くなっていたような気がするなって思って」

「え、そうかな?別に関係ないと思うけど……」

 葵が九重ヤイバの大ファンだという事を知っていてこれを理由に挙げられるのは葵=水晶ながめだと知っている人でしかないのだが、身バレ回避の方に思考を9割持っていかれてしまう葵に気づくことは不可能だ。

「でもそうにしか見えないんだよね。普段の学校でも不運な出来事とか腹が立つ事って無いらしいし」

「それはどうして知ってるの?」

「宮崎さんから聞いた」

「宮崎さんか、沙希ちゃんと最近仲良いしそれが理由で知ったのかな?」

 実際には誰からも聞いていないが、宮崎さんであればどうとでも口裏を合わせられそうなのでそういうことにした。

 身バレ対策に必死でまさかここを突っ込まれるとは思わなかった。危ない危ない。

「じゃないかな。俺はよくわかんないや」

「ってか宮崎さんと仲良いんだ。学校で一緒に居る姿をあまり見かけないけど」

 アレ?今日の葵はなんだか冷静じゃないか?

 上手いこと話題をずらそうとしていないか?

 ……いや、理由が思いつかないから必死に時間稼ぎしているだけだ。

 ならさっさとこっちの説明を片付けて本題に戻そう。

「結構前にカラオケに行った時にやたら歌声が気に入られてね。定期的に収録スタジオに呼び出されて歌わされているんだ」

「そこはカラオケじゃないんだ……」

「歌ってみたが好きで将来MIX師になりたいから」

「ああ、だから最近沙希ちゃんと歌ってみたのイラストの話とかしているのかな」

「かもね。そこら辺は深く聞いているわけじゃないから知らないや。で、九重ヤイバのせいなの?」

 これ以上脱線して話を持っていかれるとこっちの都合が悪いので雑に話を切って元の話題に戻した。

「えーっと、そうだなあ……」

 色々と言い淀んでいる時点で誰が見ても確定なのだが、それに気づかない葵は必死に思考を巡らせている。

「やっぱりそうなんだ」

「いや、違うくて。ヤイバ君は全然悪くなくて。ただ私がなんとも言えない気持ちになっているだけだというか。季節のせい、かな?」

 困り果てた挙句、実質ヤイバが原因だと言っているような答え方になっていた。しかも別に挙げた理由が季節って。

「季節?今は暑くもなく寒くもなく滅茶苦茶快適な季節だと思うんだけど」

 今は秋という最高に丁度いい季節だと思うんですが。

 夏と冬が嫌いな人は結構いるけど春と秋が嫌いな人っていない気がする。秋休みが無いから秋が嫌いという人は居るだろうが、それはあまりにも少数派だ。

 誰がそれで誤魔化されようか。

「いや、そのね……」

「やっぱり九重ヤイバなんでしょ?何か変な事言ってたの?まさかメン限配信で悪口言われたりした?」

 というわけで俺は畳みかけることにした。あくまで葵の心配をしている体で九重ヤイバをあえて悪くいってみる。

「違うに決まってるでしょ!!ヤイバ君は同い年なのに成人している配信者さん達に偉そうな口調で配信をしているけど、本当は優しくて良い人なんだよ!じゃなきゃアスカさんとかがあそこまでヤイバ君ラブみたいな行動しないでしょ!」

 すると流石に怒った口調で言い返してきた。良かった。これで悪口言われたことにされなくて。

「うん、そうかもね。でも、ヤイバ君が原因で機嫌が悪くなるってことを考えると実際に何かをされたとしか思えないからさ。女性ファンが機嫌悪くなりそうなコラボウィークは普通に機嫌よかったし」

 コラボウィークの時に不機嫌になっていればこんな場面は怒らなかったのだが、葵は良いファンすぎた。それが仇となったな。

「確かにそう思われるかも……」

 誤魔化しきれないと踏んだのか、原因は九重ヤイバだと認める方針にしたようだ。

 さて、ここからどう逃げるのだろうか。恐らくそっちの方がきついぞ。

「じゃあ何されたの?」

「何かされたっていうか、何もしなかったからっていうか……」

「何もしなかった?」

「うん。ヤイバ君って、コラボウィークが終了してから昨日のアスカちゃんとのコラボまで誰ともコラボしなかったんだ」

「そうだったね」

 ……これ大丈夫か?この路線だと本当の事話す以外無い気がするけど。

 ちょっと待って。なんか腹くくったみたいな顔してない?今から私は水晶ながめですって告白するんじゃないよね!?!?

「それを見てさ、コラボウィークってやっぱり嫌だったんじゃないかって。ヤイバ君自身は嫌じゃないって言ってそれで炎上も解決したけど、無意識ではしんどいって思ってて、その反動でソロ配信をしたいって思っちゃってるんじゃないかなって」

 なるほどな。葵は俺が最近ソロ配信だけだった理由がコラボが嫌だったからだと思って心配だったわけだ。

 それで不機嫌になるのは視聴者だったらかなり違和感がある話だが、葵の努力と優しさに免じて許してやるか。

「なるほどね。でも流石にそんなことは無いでしょ。クロさんに嵌められたみたいな体で始まったらしいけど、嫌だったら学校が忙しいとか適当な嘘ついてでも断れたでしょ」

「それはそうだけどさ。やった後に嫌って思ったのかも……」

「大丈夫だって。演劇部のメンバーともう一回コラボするって話になっているらしいし。単にソロ配信が出来なかった分ソロ配信をしているだけだと思うよ」

「————、————」

 と俺が言うと、俺には内容が聞こえないレベルの小さな声でぶつぶつと考えているようだった。


 それから数十秒後、

「うん、そうだね。私の考えすぎだったかも」

 と話す葵の表情はいつも通りのものだった。

「そっか」

 これ以上はどうやってもからかうことは出来なさそうだ。

 しまったな。もう少しからかう時間を延ばしておくべきだった。


 それからは九重ヤイバについての話題に戻ることはなく、最近のアニメや漫画について話すだけだった。残念だ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

イケボすぎる兄が、『義妹の中の人』をやったらバズった件について

のびすけ。
恋愛
春から一人暮らしを始めた大学一年生、天城コウは――ただの一般人だった。 だが、再会した義妹・ひよりのひと言で、そんな日常は吹き飛ぶ。 「お兄ちゃんにしか頼めないの、私の“中の人”になって!」 ひよりはフォロワー20万人超えの人気Vtuber《ひよこまる♪》。 だが突然の喉の不調で、配信ができなくなったらしい。 その代役に選ばれたのが、イケボだけが取り柄のコウ――つまり俺!? 仕方なく始めた“妹の中の人”としての活動だったが、 「え、ひよこまるの声、なんか色っぽくない!?」 「中の人、彼氏か?」 視聴者の反応は想定外。まさかのバズり現象が発生!? しかも、ひよりはそのまま「兄妹ユニット結成♡」を言い出して―― 同居、配信、秘密の関係……って、これほぼ恋人同棲じゃん!? 「お兄ちゃんの声、独り占めしたいのに……他の女と絡まないでよっ!」 代役から始まる、妹と秘密の“中の人”Vライフ×甘々ハーレムラブコメ、ここに開幕!

クラスで一番人気者の女子が構ってくるのだが、そろそろ僕がコミュ障だとわかってもらいたい

みずがめ
恋愛
学生にとって、席替えはいつだって大イベントである。 それはカースト最下位のぼっちである鈴本克巳も同じことであった。せめて穏やかな学生生活をを求める克巳は陽キャグループに囲まれないようにと願っていた。 願いが届いたのか、克巳は窓際の後ろから二番目の席を獲得する。しかし喜んでいたのも束の間、彼の後ろの席にはクラスで一番の人気者の女子、篠原渚が座っていた。 スクールカーストでの格差がありすぎる二人。席が近いとはいえ、関わることはあまりないのだろうと思われていたのだが、渚の方から克巳にしょっちゅう話しかけてくるのであった。 ぼっち男子×のほほん女子のほのぼのラブコメです。 ※あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...