数値化された世界

僧侶A

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数値化された世界

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とある日、世界的な企業が人の能力値を数値化することに成功した。細かい分野に関しては対応していないが、筋力や知力といった値を正確に評価できるようになったということで、世の中が変わった。

まず起こったこととしては、就職活動への影響だ。良い学歴を持っていることがあまり意味を持たなくなったのだ。今まで必死に勉強したからといって知力が低いとあまり評価されなくなった。

とはいっても、学歴と大きく乖離している人間はあまりいないために大体は評価は変わらない。ただ、少なくとも良い大学に行くためだけに勉強する必要は無くなったのだ。今は自分の能力値を少しでも上げることが何よりも重要な時代となった。

俺はそんな世の中になったからといって生活を変えることもなかった。別に何があったとしても自分の能力値を見せられれば良いのだ。この世界はより一層それが表現しやすくなったので寧ろ都合が良い。

俺は自分の能力値の中では知力が高い方の人間らしい。記憶力は並より多少マシなだけだが別に大したことはない。

スポーツ界に行くのであれば身体能力に関する能力値である速さ、力など様々な項目が評価される。しかしそれ以外の分野、社会に出て働くという分野では何よりも知力が優先される。

俺は知力を活かすべく社会に出て働く方を選んだ。そのため俺は来年より就職活動を行うことになる。

俺は来年の就職活動を嫌だなと思いつつもゲームを起動した。レベルを上げて強い敵と戦うよくあるRPGゲームである。

実はこの系統のゲーム、最近になって一気に廃れた分野である。それもそうなのだが、現実もレベル制のような世界になったのにゲームでも現実を味わいたくないと考える人が多かったからだ。

まあ当然である。ゲームを現実から離れた娯楽と考える人も多いのだ。わざわざ現実のようなことをしたくないと考える人も多いだろう。

俺はそれでもこのゲームが好きだ。自分の努力が目に見えて分かり、その成果がきちんと出る。それが俺は楽しいのだ。

そんなこともあり俺は現実世界においても楽しみが増えた。現実においてもレベル上げが出来て成果がはっきり出るなんて楽しくてしょうがない。

俺はゲームを楽しみつつ、それ以外の時間は自己研鑽に励んだ。

この世にある様々な脳を使うゲームを楽しみ、様々な小説などの本を読み多くの世界を味わった。

特に俺の趣味というわけではないものの、自分の数値が目に見えて伸びていくのが楽しいあまりに知力を上げることに没頭していた。

そして俺は翌年、就職活動を始めた。元々知力が高かったためにその時点でもそこそこの所に就職出来たようだが、現在の俺はそれよりも知力が上がっており、引く手あまたな状態である。

他の人達は少し影響はあったらしいが今まで通りの暮らしをしている。実際には大きな変化は無いと思っているからだ。

しかし、俺は思う。数値化された世界に変わったことはつまり、この世界がゲームと化したことと同義である。
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