異世界転生担当の神様

僧侶A

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異世界担当

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私は神様だ。生まれたのは5年か6年くらい前の話だ。生まれた瞬間に異世界転生の担当を任されることになった。

元々そんな仕事はなかったのだが、近年人間界で異世界に転移する小説が流行ったことで私が生まれたらしい。

神様は元々は存在しないけれど、人間達がその存在を信じることにより生まれるものらしい。

そうやって生まれた神様が由来となった分野の仕事を任されるといったところらしい。

別の分野の神様に神としての運営方法を教えてもらいながら少しずつ仕事を進めている。

他の世界への魂の斡旋の仕事だ。

仕事には2通りあって、とりあえず頼まれた世界に人を送り込むものと、面接をして力を与えてから送り込むものがある。

前者はとても楽だけれど後者は面倒だ。

まずその人に死んだことを伝えること、送る世界について簡単に説明すること、現実的な範囲のチート能力を与えることなどすることは多い。

今日もまた1人面接をしなければいけないらしい。

やってきたのは高校生くらいの男の子。そこそこ活発な子だった。

傾向的に異世界転生を知らなさそうだ。

「こんにちは。神様です。突然ですがあなたは死にました」

「死んだ?どういうことですか?」

「ここに来る前の記憶がありませんか?あなたはトラックに当たって死んでしまったのです」

「たしかにそういう記憶はありますね」

「そんなあなたにもう一度新たな人生を送ってもらう予定です。端的に言えば異世界転生です」

知っていれば楽なんだけれども。

「本当ですか!?!?憧れていたんですよ!死んだことは残念ですが転生できるのは嬉しいです!」

「それならば話は簡単ですね」

知っていたので楽で助かった。

私は異世界について軽い説明をして、チートを与えて異世界に送り出した。

今回は楽だったのでよかった。たまにこちらに酷い当たり方をしてくる人がいるのだ。死んだことには一切関与していないのに。

そういう人には弱いチートを与えて異世界でさっさと死ぬように仕向けたりしたいのだが、あちらに迷惑がかかるので出来ないのが残念なところだ。

異世界転生について知る人が増えるたびに仕事が増えるのでさっさとブームが過ぎ去って欲しいと思う。

もしくは、異世界転生と死人を共有する新たなブームが来てくれればなあ。

私はいつもそう願っている。

いつか仕事がなくなり好き勝手できるように。
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