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閉じ込められた
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街を歩いていたら顔を隠した数名に捕らえられ、目隠しをされ、手を縛られた状態で車でどこかに連れていかれた。
車を降りた後歩かされ、地面に座らされた後縄が切られた後、扉が閉じる音がした。
めちゃくちゃ怖い。これからどんなことをさせられるのだろうか。そしてどうして自分なんだ。
『こんにちは渡辺君。今日は勝手ながら私が呼んだゲームに参加して貰う』
スピーカーから声が聞こえた。
「おい!ここから出してくれ!俺が何をしたっていうんだ!」
『おいおいそんなに焦らないでくれ。別に危害をとしているわけではない』
「どういうことだ?」
『君には1発逆転のチャンスを与えよう。報酬は5億円だ。普通の人間には一生稼ぎようのない金だ。君が私の行うゲームにクリアした場合はそれを与えてそのまま解放しよう』
「失敗した場合はどうなる?」
『君が通っている大学を卒業した直後に私の経営する華永グループの社長になって貰う』
「華永グループの社長!?」
華永グループは日本を牛耳っているとも言われる日本最大の会社だ。
『この時点でお察しかもしれないけど私はそこの社長だよ』
「どうしてそんなことをするんだ?」
『それは終わってからのお楽しみだよ。悪意はないから安心して』
「で?何をするんだ?」
『意外とあっさり受け入れてくれるんだね』
「まあそれだけの大金だしな」
『ではゲームの説明をしよう。内容は単純だ。今壁にテニスボール一個分の穴がお腹あたりにあるだろう?』
「確かにあるな。4つの壁に3つずつ」
『君はそこから発射される矢を3分間避け続けてもらいたい。ああ、勿論矢に殺傷性は無いから安心して』
「それだけで良いのか?」
『そうだよ。ただし一度でも当たったら言うことを聞いてもらうよ』
「分かった。それなら早く始めようか」
『そうだね。では始めよう』
3分が始まった。結果がどちらに傾こうと人生的には大勝利が確定している。
しかし働きたくない!5億貰って一生遊ぶんだよ!
矢があらゆる方向から飛んでくる。普通なら避けられないんだが、親切にも予備動作を作ってくれている。実際のゲームなら相当簡単な部類に入るんじゃないだろうか。
しかし現実だとそうはいかない。こういったゲームは普通上からの視点で行われる。だからこそ初見でも全てを見切れるのだ。今回はプレイヤー本人の視界である。どうあがいても全方位のカバーは不可能なのだ。
何度も何度も矢が俺の前を掠める。それに安心して一息つこうとしたら次の矢は既に発射されている。
それでも何とか避け続けた。徐々に難易度が上がっていく。段々と俺は疲れさせられる。本当に性格が悪い設計になっている。油断も隙もあったもんじゃない。
そして時間まであとわずかとなった頃。すでに息も絶え絶えだった。
これが最後となる頃。全方位から矢が飛んできた。避けようが無い。
そんな卑怯な手に俺はゲームに負けたのだ。
『残念だね。それでは君に社長になってもらおう!』
こうして俺は社長になった。
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