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11話
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大学にて、
「ねえ、優斗君。ついにあれをやってくれるんだね」
と次葉は楽しそうに話しかけてきた。
「ああ。皆が求めていることだからな」
「だよね。期待して待っているよ」
「ああ、どうせなら参加するか?裏で教えられるしな」
当然匿名での参加にはなるがな。それでもバレる可能性は高いが。
「さすがにやめておくよ。ファンとしてそれはアンフェアってやつだよ」
「ファンである以前に幼馴染なんだがな」
「それでもだよ」
「そうか」
「とにかく楽しみにしていてくれ」
そしてその日の夜、私は配信ボタンを押した。
「集まってくれてどうもありがとう。今日の配信はお待ちかねのお絵描きの林だ!」
お絵描きの林。オンラインで集まったプレイヤー達と遊ぶお絵描きのゲームだ。
ルールは単純で、集まったプレイヤー達の中からランダムに描き手が選ばれ、描き手は表示されたお題に沿った絵を描き、残りのプレイヤーがそれを当てるというもの。
純粋にお題当てゲームとして楽しみつつも、描き手の描いた絵自体を楽しむことも出来る。
まさに、絵の天才である私にふさわしい企画であると言える。
この時点ですでにファン達の絶賛の声が未来から聞こえてくる。
「一応見知らぬ人と対戦するゲームもあるのだが、折角3000人も視聴者が居るのだから視聴者参加型にしようではないか」
私がそう宣言すると、視聴者のコメントは一層加速した。
実は普通の対戦モードに入るとガチ勢しかおらず、一本線を引いただけで答えを言い当てられてしまう状況だったので視聴者参加型にしたのだが、これは皆の為に内緒にしておく。
「では、部屋を開くぞ。パスワードはこれだ」
そして部屋に入るためのパスワードを配信画面に貼ると、一瞬で定員の5枠が全て埋まった。
「今回はよろしくな」
そのままゲームが始まった。
最初の描き手は私、というわけではなく、視聴者からスタートしていった。
「皆なかなか上手いではないか」
私のファンだからか、それともお絵描きゲームの視聴者参加型配信にやってくる勇気がある人間はそもそも絵が上手なのか分からないが、やたら絵がうまい奴が多い。
どの名前も見覚えが無いので確証は持てないのだが、半分くらいは現役のイラストレーターじゃないか?
素人ばかりが集まっているのであれば、もう少し絵に慣れていない奴が来てもいいはずだ。例えば、ペンタブなどの一般的なデバイスではなく、マウスで絵を描いているような人とか。
コメント欄も参加者の画力が高すぎて、私が絵を描き始める前の段階なのに大盛り上がりである。
「ついに私の番か。神のような絵を見せてやらないとな」
そんな素晴らしい絵を鑑賞していると、ついに手番が回ってきた。
お題はワンピース。このゲームは配信者に配慮されているので、版権の名前とかが出てこない設定になっている。つまり、着用できる方である。
ワンピースといえばイラストレーターが女の子に着させるものとして上位に入る服だ。つまり画力が最も反映されるお題だ。
そのため一度背筋を伸ばし、気合を入れ直した。今回のゲームは下書きなんてできないからな。
というわけで早速描き始める。まずは分かりやすいように服の輪郭を描き、スカートだとわかりやすいように線を入れていく。
ざっくりと描き終えたのでボタン等、細かい装飾を描いていくのだが……
「誰か解答しないか?」
もうこの時点で答えは粗方分かるだろ。
「なるほど、私の画力が高すぎて完成まで見ていたいのか。仕方ないな」
私が絵を描いているシーンは貴重だものな。それなら描けるところまで描いてやろうではないか。
一旦コメントを見ることを止め、絵を描くことに専念した。
「よし、どうだ!」
お題ごとに時間制限があるので全力を費やせたわけではないが、時間の割にはかなりいい出来のものを描くことができた自信がある。
「というわけで答えてくれ」
これ以上絵を変化させる時間的余裕が無いので、参加者にそう促すことにした。
すると、『ワンピース』と共に、『オーバーオール』、『ビニール袋』、『服(概念)』、『古着』等答えとは見当違いな解答がたくさん流れてきた。
「ねえ、優斗君。ついにあれをやってくれるんだね」
と次葉は楽しそうに話しかけてきた。
「ああ。皆が求めていることだからな」
「だよね。期待して待っているよ」
「ああ、どうせなら参加するか?裏で教えられるしな」
当然匿名での参加にはなるがな。それでもバレる可能性は高いが。
「さすがにやめておくよ。ファンとしてそれはアンフェアってやつだよ」
「ファンである以前に幼馴染なんだがな」
「それでもだよ」
「そうか」
「とにかく楽しみにしていてくれ」
そしてその日の夜、私は配信ボタンを押した。
「集まってくれてどうもありがとう。今日の配信はお待ちかねのお絵描きの林だ!」
お絵描きの林。オンラインで集まったプレイヤー達と遊ぶお絵描きのゲームだ。
ルールは単純で、集まったプレイヤー達の中からランダムに描き手が選ばれ、描き手は表示されたお題に沿った絵を描き、残りのプレイヤーがそれを当てるというもの。
純粋にお題当てゲームとして楽しみつつも、描き手の描いた絵自体を楽しむことも出来る。
まさに、絵の天才である私にふさわしい企画であると言える。
この時点ですでにファン達の絶賛の声が未来から聞こえてくる。
「一応見知らぬ人と対戦するゲームもあるのだが、折角3000人も視聴者が居るのだから視聴者参加型にしようではないか」
私がそう宣言すると、視聴者のコメントは一層加速した。
実は普通の対戦モードに入るとガチ勢しかおらず、一本線を引いただけで答えを言い当てられてしまう状況だったので視聴者参加型にしたのだが、これは皆の為に内緒にしておく。
「では、部屋を開くぞ。パスワードはこれだ」
そして部屋に入るためのパスワードを配信画面に貼ると、一瞬で定員の5枠が全て埋まった。
「今回はよろしくな」
そのままゲームが始まった。
最初の描き手は私、というわけではなく、視聴者からスタートしていった。
「皆なかなか上手いではないか」
私のファンだからか、それともお絵描きゲームの視聴者参加型配信にやってくる勇気がある人間はそもそも絵が上手なのか分からないが、やたら絵がうまい奴が多い。
どの名前も見覚えが無いので確証は持てないのだが、半分くらいは現役のイラストレーターじゃないか?
素人ばかりが集まっているのであれば、もう少し絵に慣れていない奴が来てもいいはずだ。例えば、ペンタブなどの一般的なデバイスではなく、マウスで絵を描いているような人とか。
コメント欄も参加者の画力が高すぎて、私が絵を描き始める前の段階なのに大盛り上がりである。
「ついに私の番か。神のような絵を見せてやらないとな」
そんな素晴らしい絵を鑑賞していると、ついに手番が回ってきた。
お題はワンピース。このゲームは配信者に配慮されているので、版権の名前とかが出てこない設定になっている。つまり、着用できる方である。
ワンピースといえばイラストレーターが女の子に着させるものとして上位に入る服だ。つまり画力が最も反映されるお題だ。
そのため一度背筋を伸ばし、気合を入れ直した。今回のゲームは下書きなんてできないからな。
というわけで早速描き始める。まずは分かりやすいように服の輪郭を描き、スカートだとわかりやすいように線を入れていく。
ざっくりと描き終えたのでボタン等、細かい装飾を描いていくのだが……
「誰か解答しないか?」
もうこの時点で答えは粗方分かるだろ。
「なるほど、私の画力が高すぎて完成まで見ていたいのか。仕方ないな」
私が絵を描いているシーンは貴重だものな。それなら描けるところまで描いてやろうではないか。
一旦コメントを見ることを止め、絵を描くことに専念した。
「よし、どうだ!」
お題ごとに時間制限があるので全力を費やせたわけではないが、時間の割にはかなりいい出来のものを描くことができた自信がある。
「というわけで答えてくれ」
これ以上絵を変化させる時間的余裕が無いので、参加者にそう促すことにした。
すると、『ワンピース』と共に、『オーバーオール』、『ビニール袋』、『服(概念)』、『古着』等答えとは見当違いな解答がたくさん流れてきた。
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