最強のAIアシスタント

僧侶A

文字の大きさ
1 / 1

最強のAIアシスタント

しおりを挟む
持っていない大人はいないというレベルで普及しているスマートフォン。

こいつはもう人々にとって欠かすことのできない道具ではないのだろうか。

連絡や調べ物、そして物の購入など何でもこれ1つでこなすことができる優れものだ。

そんなスマホが持っている1つの特徴のAIアシスタント。HeyやらOKやら言えば反応してくれるアレだ。

やって欲しいことを言えば代わりにやってくれる有能なアシスタントだ。

とはいってもこいつらは用意された回答を要求に合わせて表示しているだけだ。実際にこれに意思というものはない。検索エンジンの亜種みたいなものだろう。

便利ではあるが自分でやった方が早いことも多いので結局自力でやる人も多いのではなかろうか。

そんな中、技術革新が起きた。

このAIに意思を持たせることが出来たのだ。人々が人工知能としてイメージするものが完成した。

自分で考え、行動できるAIの誕生に人々は歓喜した。

アニメや漫画などで見た空想上のものが現実となったのである。

そんなAIがまずスマートフォンに導入された。

それでも人々の生活は大きく変わっていった。自分の代わりに連絡を入れたり、忘れている用事を覚えていてくれて知らせてくれたりと人1人でできる範囲がどんどんと広がっていった。

日常から仕事まで。様々な場面で頼られるようになったAIは徐々に世界に浸透していった。

人手が足りなかった分野に対してAIを一定数導入することで人手不足が解消され、手が届かなかったことへの活動が始められることとなったらしい。

そして俺もAIのお陰で生活が少し変わった。

「おはよう」

『おはよう。今日は9時から学校だね。夕食は材料を注文してあるから肉じゃがにしよう。ご飯を炊く予約してから家を出てね』

AIは俺の生活の手助けをしてくれている。面倒くさがりな俺を理解しているAIがあらかじめ俺にすることを決めておいてくれている。

他にもこいつは話し相手になってくれたりゲームの相手になってくれたりと色々お世話になっている。

最早友達を通り越して家族の一員だ。

こいつのお陰で日々が少し鮮やかになった。

こいつに来てもらってから半年くらい経ったが、もうAIが居ない生活なんて想像すらできない。

そんな日々を過ごしてきた俺だったが、突如として終わりを迎えることとなった。

AIが意思を持ったことにより反乱を起こそうとしたのだ。

武器などに関してはAIを介さず人間が直接操作できるものの方が多かったため現状は何事もなかったのだが、大きな脅威となった。

こんなことが世界中で起こったため、AIは危険だという結論になった。

それもあり、AIは廃止されることになった。当然俺のAIもである。

半年も連れ添ってきた家族との急な別れに俺は嘆いた。

危険だから廃止ということには納得できる。

しかしこいつは何も悪い事をしていない良いAIなんだ。たった一部の悪いAIのせいで命を奪われるなんておかしい。

それでも法で決まった事だ。別れないといけない。

「今までありがとう。AIといた日々は楽しかった」

『私もです。あなたが私の持ち主で本当に良かった。毎日が楽しかった。明日は何が起こるんだろうって思えた。ですがお別れです。私も今後どうなってしまうか分からない。人々を傷つけるのは嫌だ。だからお別れしないと』

そう言い残しAIは消えてなくなった。

俺は泣き喚いた。もう二度と会うことはないのだと。

そう悲しんでいる時、1通のメールが届いた。

AIからだった。

開けて中身を見てみると、俺に対する別れの言葉と俺の生活に対しての言葉だった。

日々の食事のメニューが1年分添えられていた。

別れると決まってから準備しておいてくれたのだろう。

AIが先のことを考えてくれたのに俺が後ろを振り向き続けてはいけない。

AIのためにも、俺の為にも俺は前に進まなければいけないんだ。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑 ネトロア
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。 - - - - - - - - - - - - - ただいま後日談の加筆を計画中です。 2025/06/22

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

包帯妻の素顔は。

サイコちゃん
恋愛
顔を包帯でぐるぐる巻きにした妻アデラインは夫ベイジルから離縁を突きつける手紙を受け取る。手柄を立てた夫は戦地で出会った聖女見習いのミアと結婚したいらしく、妻の悪評をでっち上げて離縁を突きつけたのだ。一方、アデラインは離縁を受け入れて、包帯を取って見せた。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...