獣になれる人間

僧侶A

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獣になれる人間

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『美女と野獣』なんて言葉を大体の人間は耳にしたことがあるだろう。ブサイクな男が美女を射止めて結婚した時によく使われる言葉だ。芸能人の結婚報道においてよく耳にする。

ブサイクな人間のことを野獣だなんて表現をするのはどうなのかとは思う。大体のブサイクは野獣でイメージされる強い動物ではなく寧ろ小動物あたりに似てることも多い。逆にワイルドなイケメンの方が野獣のような見た目をしているだろう。

だからと言ってそういう人間を野獣と呼ぶのは違う。俺みたいな人間のことを野獣と言うのだ。

俺は夜になると獣の特徴が現れる。俗に言う獣人のようなものだ。どんな獣かと言えば猫である。

散々言ったくせに結局小動物の雑魚かよと思うかもしれないがそんなことはない。猫は強いのだ。自分よりもはるか高い地点から落ちても怪我1つしないしなやかさ。そして自分よりも数倍高い地点に飛び乗れるジャンプ力。

これだけでも猫は強いと言えるだろう。そんな力が人間に加わっているのだ。身体能力は人間と比べて圧倒的に高い。

猫の獣人である俺は特殊な所に行くわけでもなく普通の人間として生活している。

今俺は高校生として平穏な日常を暮らしている。夜じゃなきゃ猫の力は使えないため身体能力は並だが、念のため帰宅部だ。

何かあった夜まで残ることがあったら大変だからな。俺は徹底的に夜に人前に出ることを避けているわけだが、どうしても避けられないイベントがある。

それは修学旅行だ。中学の時は大変だった。修学旅行は人と一緒に夜を明かすわけで絶対に猫になっている時間が存在する。

俺は絶対にバレないように変化する時間にトイレの個室に入りカツラを被り猫の毛を剃り尻尾を隠して皆の元に戻ることを毎日やらなければならなかった。

そんな努力もあり今までバレたことなんてないのだが、正直夜に人といる度に神経が削れてしんどかった。

それさえ凌げば夜は凄まじい身体能力で色々できるからトントンだって言いたい所なのだが、俺は獣人として重大な欠点を抱えている。

俺は猫アレルギーなのだ。猫になれるからといって猫が寄ってくるわけでもないし、自分が猫になった瞬間にアレルギー反応を起こすとかいうわけでもない。

何が問題かと言えば、子供が作れないのである。厳密に言えば作れるのだが、子供が出来た場合猫確定なのである。

自分の体には反応しないくせに他の猫の獣人には反応するため子供にアレルギー反応が出てしまうのだ。

身を削って子を育てるなんて話もよくあるが、俺の場合命の危機なのだ。命を削って子を育てるのだ。しかも育てられるかすら分からない。

だから俺にとって獣人であることはマイナスなのである。

猫ではない子供が作れさえすれば⋯⋯
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