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(20)月見坂高校アマ無は訳あり!
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ザー、ザザー、ブツッ、ブツブツッ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「なんかぁ、さっきのカオリの態度、イラッとしない?」
「分かる~! 委員長だからって、友だち優先してよね」
「そうそう。マジメかよって感じ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ハンディの音声が物理室に聞こえる。
その音声を聞くなり、走り出すミズキ。
それを追いかけるサラとルリ。
片山先生のお父さんの声が聞こえなくなっても。
ハンディは、危うい会話をキャッチするたび、三人に知らせる。
全部が全部上手くいく訳じゃないけれど。
三人で事が起こるのを防げたことは、今や両手の指の数より多い。
ものすごく変わったのは、片山先生だ。
あのやる気のないボサボサは、すっかり別人のようだ。
スッキリ髪にクリアな眼鏡、ピシッとしたシャツを着て。
時間を見つけては、校内を見回っている。
小さいトラブルでも相談にのってくれると評判だ。
「うちらにかこつけて、先生に言いたいことあったんじゃね?」
「あそこまで変わると、そんな気もしちゃうよね」
「でも、わたしたちもより仲良くなれましたし」
「いいってことだなっ!」
しーちゃんは、その後、当時のアマ無部員に連絡をしたそうだ。
きっと、もう一度、仲良くなれるんじゃないかな。
そう、三人は思っている。
もしダメでも、あたしたちがいるしね!
あれ以来、しーちゃんは先輩というより年上の友だちになった。
「しーちゃんが、うちらを勧誘した理由ってのも面白かったな!」
「ええ、まさか、そんな風に見えていたとは」
「でも、そのおかげで今があるからオッケーでしょ!」
しーちゃんは、あのあと、三人をアマ無に誘った訳を話してくれた。
「三人とも、友だちを失った私と同じような顔をしてたから」
新入生なのに、どこか影を背負ったような顔。
きっと、中学で何かあったんだろうなと感じたらしい。
ひとりで寂しかったしーちゃんだからこそ、気づけたのだろう。
「付喪神って知っていますか?」
「ああ、大事にされた道具が神様になるんだっけ?」
「ええ。勝手に動いたり、百鬼夜行の中に入っていたり」
「それが、どうかしたのかよ?」
「あれって、今回みたいなことだったのかなって」
「どういう意味?」
「物や道具自体に魂が宿ると考えるよりも」
「人の意識が物に宿るってことかっ?」
「ハンディに宿った先生のお父さんみたいに?」
「はい。この世での心残りが物に付くのでは、と」
「たしかに、『付喪神』って変な字だもんな」
「変じゃなくて、その通りってことかもね」
「『亡くなった人』が『付いた』神様ってことかぁ?」
「わたしは、そう思います」
ミズキは、人の名前を間違えて言うことがなくなった。
「なぜ、あんなに間違えていたんでしょう?」
「う~ん、うちも分からん!」
「たぶんさ。それも中学の訳ありのせいじゃない?」
「どういうことです?」
「ミズキは正しく人の名前を言いたくないみたいだった」
「そうかぁ?」
「きっと人と認めて、裏切られるのが嫌だったのかも」
「わたしたちの名前は、間違えたことがないですしね」
「そっかぁ~?」
ハンディは、その後もアマ無の備品として長く使われていた。
三人が卒業したあとで、ハンディが動いたのかは分からない。
それでも、三人は今でも思っている。
訳ありの子がいたら、ハンディが動き出すんじゃないかと。
「お~い! 帰りにあんドーナツいかねぇ?」
「いくいく! 今日はなんの味にしよっかなぁ?」
「悩みますねぇ」
「結局、3個くらいは食うんだろ?」
「小さいから。そして、美味いのが罪だ!」
「食べすぎが罪です」
「あははは!」
(終)
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「なんかぁ、さっきのカオリの態度、イラッとしない?」
「分かる~! 委員長だからって、友だち優先してよね」
「そうそう。マジメかよって感じ」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ハンディの音声が物理室に聞こえる。
その音声を聞くなり、走り出すミズキ。
それを追いかけるサラとルリ。
片山先生のお父さんの声が聞こえなくなっても。
ハンディは、危うい会話をキャッチするたび、三人に知らせる。
全部が全部上手くいく訳じゃないけれど。
三人で事が起こるのを防げたことは、今や両手の指の数より多い。
ものすごく変わったのは、片山先生だ。
あのやる気のないボサボサは、すっかり別人のようだ。
スッキリ髪にクリアな眼鏡、ピシッとしたシャツを着て。
時間を見つけては、校内を見回っている。
小さいトラブルでも相談にのってくれると評判だ。
「うちらにかこつけて、先生に言いたいことあったんじゃね?」
「あそこまで変わると、そんな気もしちゃうよね」
「でも、わたしたちもより仲良くなれましたし」
「いいってことだなっ!」
しーちゃんは、その後、当時のアマ無部員に連絡をしたそうだ。
きっと、もう一度、仲良くなれるんじゃないかな。
そう、三人は思っている。
もしダメでも、あたしたちがいるしね!
あれ以来、しーちゃんは先輩というより年上の友だちになった。
「しーちゃんが、うちらを勧誘した理由ってのも面白かったな!」
「ええ、まさか、そんな風に見えていたとは」
「でも、そのおかげで今があるからオッケーでしょ!」
しーちゃんは、あのあと、三人をアマ無に誘った訳を話してくれた。
「三人とも、友だちを失った私と同じような顔をしてたから」
新入生なのに、どこか影を背負ったような顔。
きっと、中学で何かあったんだろうなと感じたらしい。
ひとりで寂しかったしーちゃんだからこそ、気づけたのだろう。
「付喪神って知っていますか?」
「ああ、大事にされた道具が神様になるんだっけ?」
「ええ。勝手に動いたり、百鬼夜行の中に入っていたり」
「それが、どうかしたのかよ?」
「あれって、今回みたいなことだったのかなって」
「どういう意味?」
「物や道具自体に魂が宿ると考えるよりも」
「人の意識が物に宿るってことかっ?」
「ハンディに宿った先生のお父さんみたいに?」
「はい。この世での心残りが物に付くのでは、と」
「たしかに、『付喪神』って変な字だもんな」
「変じゃなくて、その通りってことかもね」
「『亡くなった人』が『付いた』神様ってことかぁ?」
「わたしは、そう思います」
ミズキは、人の名前を間違えて言うことがなくなった。
「なぜ、あんなに間違えていたんでしょう?」
「う~ん、うちも分からん!」
「たぶんさ。それも中学の訳ありのせいじゃない?」
「どういうことです?」
「ミズキは正しく人の名前を言いたくないみたいだった」
「そうかぁ?」
「きっと人と認めて、裏切られるのが嫌だったのかも」
「わたしたちの名前は、間違えたことがないですしね」
「そっかぁ~?」
ハンディは、その後もアマ無の備品として長く使われていた。
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それでも、三人は今でも思っている。
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「いくいく! 今日はなんの味にしよっかなぁ?」
「悩みますねぇ」
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「食べすぎが罪です」
「あははは!」
(終)
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