ボクとじーちゃんの古道具屋

クリヤ

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第2話 ガラスペン

(10)ガラスペンの片割れ

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 「さて、これが問題のガラスペンさ」

 マサさんが取り出したのは、透明な体に赤い模様が入ったもの。

 「あ、キレイ。わたしのと同じかたち」

 ルリちゃんは、すぐにそのガラスペンを気に入ったみたい。
 ボクには、その子の声が聞こえてた。

 『タカオくん、探してくれてありがとう。
  もうずっと、さみしかったの』
 「うん、分かってる」
 「タカオ、だれと話してるんだ?」
 「どうしたの? タカオくん」

 ユウトくんとルリちゃんは、不思議そうな顔をしてる。
 ボクは、思い切ってふたりにお話しすることにしたんだ。
 ボクのヒミツをね。

 「信じてもらえるか分からないけど……。
  ボクには、道具の声が聞こえるんです」
 「え? 本当に?」
 「まぢかよ?」
 「うん。大事にされてきた古道具の声だけ」
 「え! すごい! ステキじゃない」
 「うんうん。オレも、そんな力があったらいいな」
 「え? 信じてくれるんですか?」
 「もちろん! だって、懐中時計もガラスペンも!
  このお店で見た道具は、みんな不思議だったから」
 「オレは、単純に、不思議なもんに憧れがある」
 「ありがとう! 嬉しいです」
 「ほらほら、立ってないで、おやつにしよう」
 「あ、そうだね。マサさん」
 「オレ、腹減った」
 「ふふ。わたしも!」

 今日のあんドーナツは、ゴマ味とずんだ味。
 それに、マンゴー味とラズベリー味。
 みんなで分けて食べたから、今日も四つの味が食べられた!
 ホットミルクを飲むと、みんながふわっとした気分になる。
 きっと、お腹がポッとあったかくなったんだね。

 「あ、この人はマサさんです。修復屋さん。
  だけど、マサさんも道具の声が聞こえるんだ」
 「まぢで? うらやましいわ。
  オレにも不思議な力がないかな?」
 「ユウトだって、すごい力があるじゃない」
 「え? なになに?」
 「字がとっても上手だし、スポーツも得意」
 「なんだ、それ。オレがほしいのは、不思議な力!」
 「え? ユウトくん、その力、いらないんですか?」
 「いるとか、いらないとかじゃなくてさ~」
 「ボクは、字も上手じゃないし、スポーツも苦手。
  その力がもらえるなら、ほしいです!」
 「そうだよね、わたしも分かる」
 「まぢで?」
 「ユウトだって、ほかの人がうらやましいことない?」
 「そりゃ、あるよ。テストの時は、ルリの頭がほしい」
 「ふふ。ほらね」

 おやつを食べて、ホットミルクでお腹をポッとしたらね。
 いつのまにか、ルリちゃんとユウトくんはお話ししてた。
 すっごく、仲良さそうにね。

 「タカオに頼まれて、あたしはペンの片割れを探したんだ」
 「片割れって?」
 「このガラスペンはね、元々ふたつ作られたんだよ」
 「そうなの?」
 「そうらしい。ガラスペンに聞いたんだったか?」
 「そう。ルリちゃんのガラスペンに聞いたんだよ」
 「え? わたしの? わたしのペンもお話しするの?」
 「はい、しますよ」
 「じゃあ……。ごめんなさい! お店に置き去りにしちゃって」
 「うん。『大丈夫』って言ってます」
 「良かった!」
 「え? ルリ。ペンを店に置き去りにしたの?」
 「うん……。なんだか、ペンを見てるのがつらくて」
 「それって、オレのせいだよね。ごめん……」
 「ううん。ユウトのせいだけじゃない」
 「だけじゃないって、どういうこと?」
 「わたしのコンプレックスのせいもあるから」
 「コンプレックス? なにが?」
 「字が下手なこと」
 「は? ルリの字、オレは好きだけど?」
 「ウソ!」
 「ウソじゃない。なんで、ウソだって思うんだよ?」
 「だって、だって……」

 ルリちゃんは、そこまで話して黙ってしまった。
 マサさんのほうを見ると、ボクに向かってうなずいたんだ。

 「あの……、ガラスペンのお話をしてもいいですか?」
 「え? う、うん。片割れのお話ね?」
 「はい。ユウトくんも聞いてくれます?」
 「うん、当然」
 「ありがとう。
  このガラスペンの元の持ち主は恋人どうしでした。
  一本ずつ持って、交換日記を書いていました」
 「ステキ。物語みたい」
 「カッコいいな」
 「だけど、ふたりは一緒にいられなくなって。
  ペンもバラバラになりました」
 「え? どうして? かわいそう」
 「う~ん、つらそう」

 ガラスペンたちのお話をちゃんと聞いてくれるふたり。
 やっぱり、とっても仲良しに見える。
 これなら、このあとのお話を聞いても大丈夫だね。
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