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第3話 フィルムカメラ
(1)アサミちゃんとカメラ
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『おぉ~い! 助けてくれぇ』
お店の外から大きな声が聞こえて、ボクは振り返る。
この声は、人じゃない。
道具の声だ。
カラン! カラーン!
すぐあとに、ドアベルが鳴る。
『タカオ、なんだか大変なようだぞ』
ドアベルが、ボクにそう教えてくれる。
ボクは、スッと鼻から息を吸って、心を落ち着かせるんだ。
それから、いつもの言葉を言う。
「いらっしゃいませ」
ドアを開けて入ってきたのは、アサミちゃんだった。
ボクのお隣りの登校班のリーダー。
6年生の女の子。
そうそう!
コーヒー豆屋のシホちゃんを連れてきてくれた子だよ。
「タカオ、急に来てごめんね」
「ううん。大丈夫だよ? どうしたの?」
「シホちゃんに聞いたんだけど……」
「うん」
「このお店って、道具を直してくれるってホント?」
「そうだね。直してくれる人を知ってるよ」
「それじゃあ、このおかしなカメラを直して」
「え?」
「直せないなら、売っちゃって!」
「えぇ⁉︎」
そう言って、アサミちゃんは、紙袋をカウンターに置いた。
少し怒ってるようにも見える。
その紙袋を開けると、フィルムカメラが現れたんだ。
このカメラ、いったい、なにをしちゃったんだろう?
『ワシは、おかしくなぞ、ないわ!』
『ただ、ワシの片割れに会いたいだけじゃ!』
『ワシを家に戻さんかい! この子どもめ!』
『だれか~! ワシの声が、聞こえんのか~?』
フィルムカメラは、ずっと大きな声で文句を言い続けてる。
これには、店の道具たちもウンザリしたみたい。
『おい、そこのカメラ! 少し静かにしなって!』
『そうだ、そうだ』
『おまえの声がうるさくて、話が聞こえやしないよ』
スピーカーに、陶器の小皿、キセルが言う。
そしたらね、フィルムカメラは、もっと大きな声を出したんだ。
『おおおおお! おまえら、ワシの声が聞こえてるな!』
ボクは、耳をふさいだ。
そのくらい、おっきな声だった。
「タカオ? 大丈夫? どうしたの?」
聞こえない人には、静かなお店の中。
アサミちゃんは、ボクのおかしな動きにビックリしたみたい。
「あの、アサミちゃん、そのカメラ。
とりあえず、預かってもいいですか?」
「うん、もちろん」
「アサミちゃん、おやつはもう食べた?」
「ううん、まだ。学校から帰って、すぐに来たから」
「そっか。一緒に、おやつ、食べませんか?」
「え? いいの?」
「うん! それで、お話を聞かせてくれないかな?」
ボクは、うるさいカメラを預かって、棚の上に置いた。
その隣りに、懐中時計を一緒に。
小さな声で、懐中時計にお願いして。
「ねぇ、カメラのお話、聞いてくれる?」
『おぅ! まかせろ、タカオ』
「ありがとう、お願い」
それからボクは、いつものようにマグカップを用意した。
じーちゃん特製のホットミルクを作るためにね。
今日は、ふたつのマグカップ。
電子レンジであっためたら、メープルシロップをトポン!
いつものあんドーナツは、ずんだ味と白あん味。
半分こにしたら、中が緑色とクリーム色。
「アサミちゃん、お待たせ!」
「ありがと、タカオ」
「これ、どうぞ。ホットミルクも」
「うわっ! あんドーナツだ! これ、大好き!」
「ボクも」
「食べたことない味だ。色がキレイだね」
「うん、どっちもお豆から、できてるんだって」
「へぇ! あ、おいしい! 知らなかった!」
「アサミちゃんは、なに味が好き?」
「わたしは、パイナップル生クリームばっかり!」
「そっか。ボクは、食べたことない味だ」
「おいしいよ! あ、このミルクもおいしい!」
アサミちゃんとふたりでおやつを食べたらね。
だんだん、にっこりしてきてさ。
いつもの優しいアサミちゃんに戻ったんだ。
やっぱり、すごいね。
おやつパワー!
それにしても、アサミちゃんに、なにがあったのかな?
きっと、これからお話してくれるよね。
お店の外から大きな声が聞こえて、ボクは振り返る。
この声は、人じゃない。
道具の声だ。
カラン! カラーン!
すぐあとに、ドアベルが鳴る。
『タカオ、なんだか大変なようだぞ』
ドアベルが、ボクにそう教えてくれる。
ボクは、スッと鼻から息を吸って、心を落ち着かせるんだ。
それから、いつもの言葉を言う。
「いらっしゃいませ」
ドアを開けて入ってきたのは、アサミちゃんだった。
ボクのお隣りの登校班のリーダー。
6年生の女の子。
そうそう!
コーヒー豆屋のシホちゃんを連れてきてくれた子だよ。
「タカオ、急に来てごめんね」
「ううん。大丈夫だよ? どうしたの?」
「シホちゃんに聞いたんだけど……」
「うん」
「このお店って、道具を直してくれるってホント?」
「そうだね。直してくれる人を知ってるよ」
「それじゃあ、このおかしなカメラを直して」
「え?」
「直せないなら、売っちゃって!」
「えぇ⁉︎」
そう言って、アサミちゃんは、紙袋をカウンターに置いた。
少し怒ってるようにも見える。
その紙袋を開けると、フィルムカメラが現れたんだ。
このカメラ、いったい、なにをしちゃったんだろう?
『ワシは、おかしくなぞ、ないわ!』
『ただ、ワシの片割れに会いたいだけじゃ!』
『ワシを家に戻さんかい! この子どもめ!』
『だれか~! ワシの声が、聞こえんのか~?』
フィルムカメラは、ずっと大きな声で文句を言い続けてる。
これには、店の道具たちもウンザリしたみたい。
『おい、そこのカメラ! 少し静かにしなって!』
『そうだ、そうだ』
『おまえの声がうるさくて、話が聞こえやしないよ』
スピーカーに、陶器の小皿、キセルが言う。
そしたらね、フィルムカメラは、もっと大きな声を出したんだ。
『おおおおお! おまえら、ワシの声が聞こえてるな!』
ボクは、耳をふさいだ。
そのくらい、おっきな声だった。
「タカオ? 大丈夫? どうしたの?」
聞こえない人には、静かなお店の中。
アサミちゃんは、ボクのおかしな動きにビックリしたみたい。
「あの、アサミちゃん、そのカメラ。
とりあえず、預かってもいいですか?」
「うん、もちろん」
「アサミちゃん、おやつはもう食べた?」
「ううん、まだ。学校から帰って、すぐに来たから」
「そっか。一緒に、おやつ、食べませんか?」
「え? いいの?」
「うん! それで、お話を聞かせてくれないかな?」
ボクは、うるさいカメラを預かって、棚の上に置いた。
その隣りに、懐中時計を一緒に。
小さな声で、懐中時計にお願いして。
「ねぇ、カメラのお話、聞いてくれる?」
『おぅ! まかせろ、タカオ』
「ありがとう、お願い」
それからボクは、いつものようにマグカップを用意した。
じーちゃん特製のホットミルクを作るためにね。
今日は、ふたつのマグカップ。
電子レンジであっためたら、メープルシロップをトポン!
いつものあんドーナツは、ずんだ味と白あん味。
半分こにしたら、中が緑色とクリーム色。
「アサミちゃん、お待たせ!」
「ありがと、タカオ」
「これ、どうぞ。ホットミルクも」
「うわっ! あんドーナツだ! これ、大好き!」
「ボクも」
「食べたことない味だ。色がキレイだね」
「うん、どっちもお豆から、できてるんだって」
「へぇ! あ、おいしい! 知らなかった!」
「アサミちゃんは、なに味が好き?」
「わたしは、パイナップル生クリームばっかり!」
「そっか。ボクは、食べたことない味だ」
「おいしいよ! あ、このミルクもおいしい!」
アサミちゃんとふたりでおやつを食べたらね。
だんだん、にっこりしてきてさ。
いつもの優しいアサミちゃんに戻ったんだ。
やっぱり、すごいね。
おやつパワー!
それにしても、アサミちゃんに、なにがあったのかな?
きっと、これからお話してくれるよね。
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