学校迷宮と若返りドーナツ

クリヤ

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(7)本の星空

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 「じーちゃん、ボクにまかせてよ!」

 まだうなっているじーちゃんをそこに残して、ボクは書棚に向かう。
 だって、ここはボクの学校の図書室とまったく同じ。
 確かに『学校迷宮』っていう不思議な空間なんだけどさ。
 さっきの理科室も、この図書室だって。
 ボクの学校と同じ造りなんだ。

 だから、通ってるボクのほうが断然くわしい!
 さっきみたいに、じーちゃんに頼りっぱなしじゃない。
 カッコいいボクの姿だって、じーちゃんに見てもらわなくちゃ!

 「え~っと、絵本は確か、この奥の棚の……」

 勝手知ったる図書室の棚の間をボクは泳ぐように進む。
 ス~イ、スイ! スイスイスイ!
 腕こそ動かしてはいないけど、気持ちは本の海を泳ぐ魚さ。
 水泳じゃ敵わない人にだって、本の知識はクラスじゃ誰にも負けない。
 貸し出しカードに書かれた本の数は、学校で1番なんだ。
 6年生にだって、負けないよ!

 「お~い。ユウスケ。オレも探すよ」
 「じーちゃん、思い出の本が分かったの?」
 「少し自信はないんだが、あれかなってのはある」
 「ホントに?」
 「う~ん。たぶん。だけど、一応、ヒントをくれ」
 「あやしいなぁ! ふふふ。じゃあ、ヒントね」
 「うん。頼む」
 「じーちゃんが、ボクの希望で買ってくれた本!」
 「希望で? オレが選んだんじゃなくてか?」
 「そう。ボクのほしい本を買ってくれた最初の本だよ」
 「……ああ! あれだな、分かったよ」
 「じゃあ、せーの、で言おう!」
 「いいぞ」
 「せーの! 『うらしまたろう』!」
 「せーの! 『うらしまたろう』! だろ?」

 「あははは、正解! あれは捨てないで取ってあるんだ」
 「そうだったのか。ありがとな、大事にしてくれて」
 「え? 大事なのは紙じゃなくて、中身なんじゃないの?」
 「まぁ、そうだな。でも、ママの手前、そう言ったところもある」
 「どういう意味?」
 「オレはな、本なんて浴びるように読めばいいって思う」
 「ふうん」
 「意味が分かっても、分かんなくてもな?」
 「うん」
 「心のどっかには、きっと引っかかっていてさ」
 「魚の骨みたいだね」
 「ふっ。うまいこと、言うなぁ! すっかり大人だ」
 「ふふふ。それで?」
 「どっかで、なんかしらの糧になるって思うわけだ」
 「ふ~ん」
 「それに、くり返し読むと分かる本もあるからな」
 「うん! 上級生になって読んだら分かったお話もあるよ!」
 「だろ? だから、持って置くのも大事だと思うんだよ」

 「ただな~。置き場所は無限じゃないっていうママの言うことも正解」
 「そうだね」
 「だから、もう自分のものにできた本は捨ててもいいって言ったのさ」
 「そっか」
 「でも、自分が買ったもんが大事にされてるのは嬉しいもんだぜ?」

 じーちゃんは、そう言ってボクの頭を優しく撫でてくれた。

 ママはあまり本を読まない子どもだったらしい。
 じーちゃんは、大の本好きだから少しさみしかったみたい。
 『だから、ユウスケが本好きなのをすごく喜んでるのよ』
 そう、ママがボクに教えてくれたんだ。

 思い出の本は、分かった。
 あとは、どこにあるか探さなくちゃ!

 心当たりの場所を探そうとした、その時。
 図書室のあちらこちらから、ピカピカした光が見え始めたんだ。

 「なんだぁ? なんで、光ってる本があるんだぁ?」
 「うわぁ! キレイだねぇ!」

 よく見ると、さまざまな場所にある本の背表紙が光っている。
 光っている本からは、かすかに音がする。
 小さな鈴のような、ガラスのような。
 チリチリともキラキラとも聞こえるような音。

 光っている本を一冊、手に取ってみる。
 この本は、読んだことがある。
 子どもたちだけが乗った船が漂流しちゃう話。

 すぐ近くの光っている本も引っ張り出す。
 この本も知ってる。
 名探偵が変装が得意な怪人を追いかける話。

 その隣りの光っている本、その隣りの隣りも。
 光っている本はみんな、ボクが読んだことのある本だった。

 「じーちゃん、じーちゃん! これ、ボクが読んだ本ばっかだ」

 じーちゃんも光る本を手に取って、パラパラとめくっている。

 「そうだなぁ。オレが買った本もたくさんあるみたいだ」
 「これって、ヒントなのかもね」
 「『学校迷宮』とやらも、そこまで意地悪じゃないってわけか」
 「ふふふ。そうだといいけどね」
 「ユウスケは、たくさん本を読んだんだなぁ!」
 「じーちゃんがたくさん買ってくれたから」
 「そうか。キレイだなぁ。星空の中にいるみたいだ」
 「うん……」

 じーちゃんは、ほめてくれたけど、ボクはちょっと複雑だった。
 学校で1番、本を読んでるって思ってたけどさ。
 星空みたいってことは、暗い空の部分がたくさんある。
 まだまだ読んでない本が多いってこと。
 図書室の本なんて、読みつくしたんじゃない?
 なーんて思っちゃってた。
 1番だって自信満々だった自分が、少し恥ずかしくなった。
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