学校迷宮と若返りドーナツ

クリヤ

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(9)ドーナツが効かない?

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 「ユウスケ、書き写せるか?」
 「う~ん……」

 簡単だって思ったんだけど、ちょっと待てよ?
 ボールペンっていうのが、難しい。
 ボクが普段、学校で使っているのは鉛筆だけ。
 そう、学校で決まってるからね。
 間違えた時は、ちょちょいと消しゴムでこするでしょ?
 間違えないように書こうなんて思ったことない!

 じーちゃんにいいとこ見せたかったけど、ムリかも。

 「そうかぁ。小学生だもんなぁ。ボールペンはなぁ」
 「うん……。間違えるのが、怖いよ」
 「そうだなぁ。じゃあ、オレが見て書き写すよ」
 「ありがとう! じーちゃん」

 じーちゃんにいいとこ見せるのはムリだったけど。
 きっと試練をクリアするほうが大事だよね?

 じーちゃんは、「よっこらしょっとぉ」って言いながら椅子に座った。

 「ノートってどこにあるんだろ?」

 あたりをキョロキョロ見回すと、あった!
 魔導書みたいな本の横にノートとボールペンが用意されてた。

 「いつのまに? ま、いっか」

 ここは、迷宮だもんね。
 なにが起きても不思議なんかじゃない。

 ノートとボールペンをじーちゃんに渡す。

 「どれどれ~っと。んん? なんだぁ、これぇ?」

 じーちゃんが急に変な声を出すから、ボクは少し驚いた。

 「どうしたの?」
 「ユウスケ、本をよく見てみろ!」
 「えっと、普通の本で……、なんだぁ?」

 ボクの口からも変な声が出ちゃった。
 だって、本の文字が大きくなったり、小さくなったり。
 ぐるぐる回ったり、消えたり、また出てきたり。
 ずっと動いていたんだ。
 時々、ピカッて光ったり、すごく文字が薄くなったり。
 お祭りの金魚すくいのプールにいる金魚みたいにも見える。

 「これじゃあ、オレは見るのがつらいなぁ」

 じーちゃんが珍しく、弱気なことを言う。

 「え? どうして? よく見れば、分かるよ!」
 「オレは、老眼だからさ。見づらいんだよ」
 「『ローガン』ってなに?」
 「年取るとな、近くの小さな字とかが見づらくなるんだ」
 「ふうん」
 「あと、あんまりキラキラしてたり動くものを見るとな」
 「うん、うん」
 「目がすっごく疲れる」
 「疲れるの? 目が?」
 「そう。ショボショボして開けてるのが、ツラい」
 「ボクが眠い時みたいに?」
 「そうかも知れないなあ」

 どうしよう! じーちゃんに頼れないなんて!
 まさか、第2の試練でストップ?
 迷宮をさまようの? それは、イヤだ~!

 あ! 
 そういえば、じーちゃんってさ。
 不思議なドーナツ、持ってたよね?
 あれを食べたら、ボクと同じくらいの年になれるって!
 今、食べたら字が見えるんじゃない?
 やっほう! ボクって天才!

 「じーちゃん、じーちゃん!」
 「どうした?」
 「あのドーナツ、まだあるよね?」
 「ああ。たっぷりあるぞ。あ! そういうことか?」
 「そうだよ! ドーナツで若返ったら」
 「字も見えるってことか!」
 「うん!」
 「よぉ~し」

 じーちゃんは、近くに置いてあった紙袋をガサゴソと開く。
 中からドーナツを取り出すと、パクリと食べた。
 ボクも少し食べたくなったけど、ガマンしたんだ。
 だって、ボクが若返っちゃったら、赤ちゃんになっちゃうから!

 「あれ? じーちゃん?」
 「ユウスケ、オレは、どう見える?」
 「ボクのじーちゃんに見えるよ」
 「おかしいな。若返らないぞ」
 「え? どうして?」
 「分からん。前の時は、すぐに変わったのになぁ」

 そのあと、じーちゃんはもうひとつだけ、ドーナツを食べてみた。
 それでも、やっぱり若返ったりしなかった。
 どうしてかは、分からない。
 それなら、とボクもひとつ食べてみた。
 パイナップル味のジャムが入っていて、さわやかおいしい!
 けど、普通のドーナツだ。
 これは、困ったことになったぞ……。
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