学校迷宮と若返りドーナツ

クリヤ

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(10)ローガンでじーちゃん戦力外

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 「ユウスケ、悪いんだけどな……」
 「どうしたの? じーちゃん」
 「さっき、キラキラしたものを見すぎてなぁ」
 「うん」
 「どうにも、目がショボショボしてツラい」
 「え? 大丈夫?」
 「うん……。少し目を閉じて休めば平気だと思うけど」
 「じゃあ、休んでよ!」
 「うん。だけど、この試練ってのをやらなくちゃあ……」
 「お願いだから、休んでって!」
 「うん……」

 目と目の間をつまんで、うなるじーちゃんはツラそうだ。
 だけど、どうしよう?
 このままじゃ、試練をクリアできない。
 もうこの迷宮に閉じ込められて、どのくらいだろう?
 ママが帰ってくる前に、ボクはおうちにいなくちゃいけないのに!

 「う~ん、老眼鏡を持ってくるんだったなぁ……」

 ひとりごとを言いながら、目をつむるじーちゃんは、まだツラそう。
 『ローガンキョウ』ってなんだろう?
 なんか、強そうな名前。なんかの武器?
 だけど、今はそれを聞いてる場合じゃない。

 よし! 決めた!
 ボクだって、もう5年生。
 ひとりでやれることのほうが多いんだから!

 「じーちゃん、ボクがこの試練をクリアするよ!」
 「うん? ユウスケ、ひとりで大丈夫か?」
 「たぶん……。ううん! 絶対、大丈夫だよ!」
 「そっか。オレは、ユウスケならできるって思うぞ」
 「ボクも5年生だしね!」
 「そうだ。頼りにしていいか?」
 「もっちろんだよ! まかせて!」

 じーちゃんは、いつも「ユウスケならできる」って言う。
 その言葉を聞くと、胸の中にいる弱気の虫が逃げ出すんだ。
 じーちゃんは、ボクを信じてくれる。
 だから、ボクもボクを信じてあげなくちゃ!

 「むかし、むかし、あるところに……」

 ボクは、間違えないように声に出して『うらしまたろう』を読む。
 頭の中で何回も練習してから、ノートに一文字ずつ書き写す。
 ゆっくり、ゆっくり。
 上手じゃなくてもいいんだから。
 丁寧に、丁寧に。

 文字たちは、ボクをからかうように動いたり、消えたりする。
 ちょっと頭にきて、文字をビシッと叩いてみた。
 あ、止まった!
 ビシビシ叩いて、文字を止める。
 よぉ~し。いいぞ。読める!
 

 どうして、乙姫さまは玉手箱をくれたのかな?
 どうして、うらしまたろうは玉手箱を開けちゃったんだろう?
 あ、あれも試練だったのかな?
 開けるのをガマンできたら、いいことがあったのかな?
 だけど、竜宮城はカメを助けたお礼だったはず……。
 じゃあ、どうして試練なんか?

 おっと、油断すると、物語の世界に引き込まれちゃいそう。
 字に集中しなくちゃ!

 手の汗でくっつくノートに苦しみながら、ボクはようやく書き終えた。
 ペンをぎゅっと握りすぎたせいで、指が固まったみたいに感じる。


 パンパカパーン! パンパンパン! パンパカパーン!

 魔導書みたいな本に文字が浮かんできた時と同じ音がした。
 魔導書みたいな本の文字は、またいつのまにか変わっていた。


 ☆ミッションクリア☆

 図書室の試練をクリアしました。
 次の試練に進むことができます。

 ⬅︎出口は、あちら


 理科室の時と同じように、きっと扉が開いたんだ。
 あれ? そういえば、今回は図書室の戸を開けてみるのを忘れてた!
 じーちゃんと一緒だから、ちょっと安心しちゃってるのかも。
 この迷宮がいつまで続くのか、分からないけど。
 ボクも気を引き締めて、いかなくちゃ!

 だって、全部じーちゃんにおまかせ! 
 ってわけにはいかないって分かったんだから。

 「じーちゃん、クリアだって!」
 「よくがんばった。ユウスケ。本当に助かった」
 「じーちゃん、目は大丈夫?」
 「うん。だいぶいい。休ませてくれて、ありがとな」
 「ううん! ボクだって、『挑戦者』のひとりだからね!」

 図書室の戸を勢いよく開けて、ボクたちは廊下に出た。
 次にどんな試練が待っていようとも、ボクは負けない!

 ボクは、ここにきて、やっとこの迷宮に挑む覚悟ができた。
 そう、思ったんだ。
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