学校迷宮と若返りドーナツ

クリヤ

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(15)缶切りクリア!

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 「まずは、缶がすべんないように布を敷く」
 「うん」
 「左手で、しっかり缶を押さえて~」
 「うん、うん」
 「フックみたいなところを、缶のフチに引っかける」
 「おお!」
 「そしたら、このとがった刃を缶に当ててぇ~」
 「おおう!」
 「ブスッと刺す」
 「うわっ! シロップが出てきた」
 「だな。シロップをこぼさないようにしてぇ~」
 「おっと、あぶない」
 「右手を前後に動かしつつ、うしろに切ってく」
 「あ、切れてる」
 「ゆっくりでいいから、やってみな」

 じーちゃんにうしろから手を持ってもらって、教えてもらう。
 いつも、じーちゃんは初めて教えてくれる時にこうするんだ。
 鉛筆の持ちかたも、こうやって教えてもらったっけ。
 ホントのじーちゃんは、ボクより大きいからさ。
 すっぽりとじーちゃんに包まれて、いつも安心できた。

 だけど、今のじーちゃんはボクと同じくらい。
 大きな手じゃないし、包み込んでもくれない。
 だから、ボクだって、ひとりでがんばらなくちゃ!

 「あれ? こっから、どうするの?」

 左手で押さえて、右手だけをグイグイ前後に動かしてたら。
 途中で止まっちゃう。

 「缶を押さえてる左手をな、反時計回りに回すんだよ」
 「反時計回りって、どっちだっけ?」
 「左。左回りだな。茶碗を持つほうの手だぞ」
 「ちょっと、じーちゃん! ボクは5年生だよ、分かるよ!」
 「はははっ! ごめん、ごめん」

 じーちゃんのいう通りにしたら、うまく回りだした。
 左手をたまにクイッと動かして、右手は前後にグイグイグイ。
 やってみたら、簡単じゃん!

 さすが、じーちゃんだね!
 だけど。
 同じ年くらいに見えるじーちゃんに言われるとさ。
 なんだか、モヤモヤする気分になるのはどうして?
 負けたくないって気がしちゃう!
 じーちゃんの時のじーちゃんにはさ。
 そんなこと、全然思わないのに。
 なんか不思議。

 「じーちゃん、これ、全部切っちゃうの?」

 プルトップの時は、フタを取っちゃうけど。
 これは、どうするんだろう?

 「おお! よく気づいたな」
 「うん。ちょっと迷うよね」
 「それはな、1~2センチくらい残しといてくれ」
 「なんで?」
 「う~ん、そうするとフタが開けやすい」
 「へぇ」
 「取っちゃうと、フチのギザギザで怪我もしやすい」
 「うん、たしかに痛そう」
 「あとは……あのアニメみたいになるように」

 そう言って、ニヤリッと笑うじーちゃん。
 そうしたら、ボクはまた幼稚園の頃を思い出した。

 「あ、あれ! そっか。あれって、こういう缶なんだ!」
 「そうだよ。まあ、くっついてるほうが捨てやすいしな」

 じーちゃんちに遊びに行くと見せてくれたアニメ。
 ネコとネズミが、ずっと追いかけっこしているお話。
 ちっさくて、だけど、とっても賢いネズミ。
 ネコは、お家を守るためにネズミをつかまえようとする。
 でも、いっつもネズミにやられちゃう!
 箱に顔を突っ込まれて、顔が四角になっちゃうネコ。
 つかまって、ネコに助けてって泣いたふりをするネズミ。

 じーちゃんが子どもの頃に好きだったアニメなんだって!
 ママもこれは好きって言ってた。

 そのアニメにね。
 缶切りで開けた缶詰のゴミがよく出てくるんだよね。
 ボクは、あれがなんだか分からなくて。
 じーちゃんに聞いたけど。
 『ん? 缶詰の空き缶だろ?』
 そう言っただけだった。

 今、ようやくあのアニメの意味が分かったよ!
 あとになってから分かることって、ホントにあるんだね。

 「ユウスケ、うまく開けられたな!」
 「うん! おやつまで、もうすぐだね」
 「分担って言ったけど、りんごもやってみるか?」
 「え? ちょっと、怖いよ」
 「そっか? オレが初めて皮むきをしたのは小3だったけどなぁ」
 「そうなの⁉︎  ボクよりふたつも年下じゃん」
 「干し柿を作るのに、家族全員で皮むきをしたんだ」
 「干し柿って、お家で作るの?」
 「ん? そうだろ?」
 「え? ママはスーパーで買うよ?」
 「そっか。昔はなぁ、柿の木が近所にいっぱいあってさ」
 「ふうん」
 「それが、なぜだか、渋柿ばっかりなんだよ」
 「甘い柿なら、すぐ食べられるのにね」
 「な! オレは、生の柿が好きだからさ」
 「うん、ボクも」
 「干し柿は、正直、どうでも良かったんだけどな」
 「なのに、作ってたの?」
 「皮むきは、上手にできると楽しくなってきてな」
 「へぇ……」
 「生の柿も自分でむけたら、すぐ食べられるし」
 「そっか」

 ママがむいてくれるまで、じっと待ってなくてもいいんだ。
 皮むき。
 今まで興味なんか全然なかったけどさ。
 ちょっとやってみても、いいんじゃない?
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