学校迷宮と若返りドーナツ

クリヤ

文字の大きさ
15 / 31

(15)缶切りクリア!

しおりを挟む
 「まずは、缶がすべんないように布を敷く」
 「うん」
 「左手で、しっかり缶を押さえて~」
 「うん、うん」
 「フックみたいなところを、缶のフチに引っかける」
 「おお!」
 「そしたら、このとがった刃を缶に当ててぇ~」
 「おおう!」
 「ブスッと刺す」
 「うわっ! シロップが出てきた」
 「だな。シロップをこぼさないようにしてぇ~」
 「おっと、あぶない」
 「右手を前後に動かしつつ、うしろに切ってく」
 「あ、切れてる」
 「ゆっくりでいいから、やってみな」

 じーちゃんにうしろから手を持ってもらって、教えてもらう。
 いつも、じーちゃんは初めて教えてくれる時にこうするんだ。
 鉛筆の持ちかたも、こうやって教えてもらったっけ。
 ホントのじーちゃんは、ボクより大きいからさ。
 すっぽりとじーちゃんに包まれて、いつも安心できた。

 だけど、今のじーちゃんはボクと同じくらい。
 大きな手じゃないし、包み込んでもくれない。
 だから、ボクだって、ひとりでがんばらなくちゃ!

 「あれ? こっから、どうするの?」

 左手で押さえて、右手だけをグイグイ前後に動かしてたら。
 途中で止まっちゃう。

 「缶を押さえてる左手をな、反時計回りに回すんだよ」
 「反時計回りって、どっちだっけ?」
 「左。左回りだな。茶碗を持つほうの手だぞ」
 「ちょっと、じーちゃん! ボクは5年生だよ、分かるよ!」
 「はははっ! ごめん、ごめん」

 じーちゃんのいう通りにしたら、うまく回りだした。
 左手をたまにクイッと動かして、右手は前後にグイグイグイ。
 やってみたら、簡単じゃん!

 さすが、じーちゃんだね!
 だけど。
 同じ年くらいに見えるじーちゃんに言われるとさ。
 なんだか、モヤモヤする気分になるのはどうして?
 負けたくないって気がしちゃう!
 じーちゃんの時のじーちゃんにはさ。
 そんなこと、全然思わないのに。
 なんか不思議。

 「じーちゃん、これ、全部切っちゃうの?」

 プルトップの時は、フタを取っちゃうけど。
 これは、どうするんだろう?

 「おお! よく気づいたな」
 「うん。ちょっと迷うよね」
 「それはな、1~2センチくらい残しといてくれ」
 「なんで?」
 「う~ん、そうするとフタが開けやすい」
 「へぇ」
 「取っちゃうと、フチのギザギザで怪我もしやすい」
 「うん、たしかに痛そう」
 「あとは……あのアニメみたいになるように」

 そう言って、ニヤリッと笑うじーちゃん。
 そうしたら、ボクはまた幼稚園の頃を思い出した。

 「あ、あれ! そっか。あれって、こういう缶なんだ!」
 「そうだよ。まあ、くっついてるほうが捨てやすいしな」

 じーちゃんちに遊びに行くと見せてくれたアニメ。
 ネコとネズミが、ずっと追いかけっこしているお話。
 ちっさくて、だけど、とっても賢いネズミ。
 ネコは、お家を守るためにネズミをつかまえようとする。
 でも、いっつもネズミにやられちゃう!
 箱に顔を突っ込まれて、顔が四角になっちゃうネコ。
 つかまって、ネコに助けてって泣いたふりをするネズミ。

 じーちゃんが子どもの頃に好きだったアニメなんだって!
 ママもこれは好きって言ってた。

 そのアニメにね。
 缶切りで開けた缶詰のゴミがよく出てくるんだよね。
 ボクは、あれがなんだか分からなくて。
 じーちゃんに聞いたけど。
 『ん? 缶詰の空き缶だろ?』
 そう言っただけだった。

 今、ようやくあのアニメの意味が分かったよ!
 あとになってから分かることって、ホントにあるんだね。

 「ユウスケ、うまく開けられたな!」
 「うん! おやつまで、もうすぐだね」
 「分担って言ったけど、りんごもやってみるか?」
 「え? ちょっと、怖いよ」
 「そっか? オレが初めて皮むきをしたのは小3だったけどなぁ」
 「そうなの⁉︎  ボクよりふたつも年下じゃん」
 「干し柿を作るのに、家族全員で皮むきをしたんだ」
 「干し柿って、お家で作るの?」
 「ん? そうだろ?」
 「え? ママはスーパーで買うよ?」
 「そっか。昔はなぁ、柿の木が近所にいっぱいあってさ」
 「ふうん」
 「それが、なぜだか、渋柿ばっかりなんだよ」
 「甘い柿なら、すぐ食べられるのにね」
 「な! オレは、生の柿が好きだからさ」
 「うん、ボクも」
 「干し柿は、正直、どうでも良かったんだけどな」
 「なのに、作ってたの?」
 「皮むきは、上手にできると楽しくなってきてな」
 「へぇ……」
 「生の柿も自分でむけたら、すぐ食べられるし」
 「そっか」

 ママがむいてくれるまで、じっと待ってなくてもいいんだ。
 皮むき。
 今まで興味なんか全然なかったけどさ。
 ちょっとやってみても、いいんじゃない?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

児童絵本館のオオカミ

火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。

【もふもふ手芸部】あみぐるみ作ってみる、だけのはずが勇者ってなんなの!?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 網浜ナオは勉強もスポーツも中の下で無難にこなす平凡な少年だ。今年はいよいよ最高学年になったのだが過去5年間で100点を取ったことも運動会で1等を取ったこともない。もちろん習字や美術で賞をもらったこともなかった。  しかしそんなナオでも一つだけ特技を持っていた。それは編み物、それもあみぐるみを作らせたらおそらく学校で一番、もちろん家庭科の先生よりもうまく作れることだった。友達がいないわけではないが、人に合わせるのが苦手なナオにとっては一人でできる趣味としてもいい気晴らしになっていた。  そんなナオがあみぐるみのメイキング動画を動画サイトへ投稿したり動画配信を始めたりしているうちに奇妙な場所へ迷い込んだ夢を見る。それは現実とは思えないが夢と言うには不思議な感覚で、沢山のぬいぐるみが暮らす『もふもふの国』という場所だった。  そのもふもふの国で、元同級生の丸川亜矢と出会いもふもふの国が滅亡の危機にあると聞かされる。実はその国の王女だと言う亜美の願いにより、もふもふの国を救うべく、ナオは立ち上がった。

野良犬ぽちの冒険

KAORUwithAI
児童書・童話
――ぼくの名前、まだおぼえてる? ぽちは、むかし だれかに かわいがられていた犬。 だけど、ひっこしの日に うっかり わすれられてしまって、 気がついたら、ひとりぼっちの「のらいぬ」に なっていた。 やさしい人もいれば、こわい人もいる。 あめの日も、さむい夜も、ぽちは がんばって生きていく。 それでも、ぽちは 思っている。 ──また だれかが「ぽち」ってよんでくれる日が、くるんじゃないかって。 すこし さみしくて、すこし あたたかい、 のらいぬ・ぽちの ぼうけんが はじまります。

独占欲強めの最強な不良さん、溺愛は盲目なほど。

猫菜こん
児童書・童話
 小さな頃から、巻き込まれで絡まれ体質の私。  中学生になって、もう巻き込まれないようにひっそり暮らそう!  そう意気込んでいたのに……。 「可愛すぎる。もっと抱きしめさせてくれ。」  私、最強の不良さんに見初められちゃったみたいです。  巻き込まれ体質の不憫な中学生  ふわふわしているけど、しっかりした芯の持ち主  咲城和凜(さきしろかりん)  ×  圧倒的な力とセンスを持つ、負け知らずの最強不良  和凜以外に容赦がない  天狼絆那(てんろうきずな)  些細な事だったのに、どうしてか私にくっつくイケメンさん。  彼曰く、私に一目惚れしたらしく……? 「おい、俺の和凜に何しやがる。」 「お前が無事なら、もうそれでいい……っ。」 「この世に存在している言葉だけじゃ表せないくらい、愛している。」  王道で溺愛、甘すぎる恋物語。  最強不良さんの溺愛は、独占的で盲目的。

まぼろしのミッドナイトスクール

木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

アリアさんの幽閉教室

柚月しずく
児童書・童話
この学校には、ある噂が広まっていた。 「黒い手紙が届いたら、それはアリアさんからの招待状」 招かれた人は、夜の学校に閉じ込められて「恐怖の時間」を過ごすことになる……と。 招待状を受け取った人は、アリアさんから絶対に逃れられないらしい。 『恋の以心伝心ゲーム』 私たちならこんなの楽勝! 夜の学校に閉じ込められた杏樹と星七くん。 アリアさんによって開催されたのは以心伝心ゲーム。 心が通じ合っていれば簡単なはずなのに、なぜかうまくいかなくて……?? 『呪いの人形』 この人形、何度捨てても戻ってくる 体調が悪くなった陽菜は、原因が突然現れた人形のせいではないかと疑いはじめる。 人形の存在が恐ろしくなって捨てることにするが、ソレはまた家に現れた。 陽菜にずっと付き纏う理由とは――。 『恐怖の鬼ごっこ』 アリアさんに招待されたのは、美亜、梨々花、優斗。小さい頃から一緒にいる幼馴染の3人。 突如アリアさんに捕まってはいけない鬼ごっこがはじまるが、美亜が置いて行かれてしまう。 仲良し3人組の幼馴染に一体何があったのか。生き残るのは一体誰――? 『招かれざる人』 新聞部の七緒は、アリアさんの記事を書こうと自ら夜の学校に忍び込む。 アリアさんが見つからず意気消沈する中、代わりに現れたのは同じ新聞部の萌香だった。 強がっていたが、夜の学校に一人でいるのが怖かった七緒はホッと安心する。 しかしそこで待ち受けていたのは、予想しない出来事だった――。 ゾクッと怖くて、ハラハラドキドキ。 最後には、ゾッとするどんでん返しがあなたを待っている。

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

処理中です...